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雪道を楽しむ

  玄想旅団の現地隊6人が徒歩で移動する

 とき、たいてい皆無口だ。道幅にもよるが、

 先頭はいつもジャイアント族のアントン・

 カントール、

 

 その後ろにドワーフ族のスヴェン・

 スペイデル、そして、おれ、ベルンハード・

 ハネル、エルフ族の魔法士兼治癒士の

 シャマーラ・トルベツコイ、

 

 そのあとにアンデッド族の銃士、イスハーク・

 サレハ、そしていつもしんがりはサムライの

 セイジェン・ガンホンだ。

 

 無口な時は本当に、一日二日の行程でも、

 寡黙に歩き続ける6人であるが、本当に

 厳しくなった時、誰かが話し始める。

  

 雪国出身のスヴェンは、意外と雪道が

 嫌いらしい。

 

「アントン、知ってるか? 太陽系じゃあ、

 みんな空飛ぶ家に乗って移動するらしいぞ」

 

 アントンは何か答えたようであるが、よく

 聞こえない。

 

  惑星セトにも、そして半獣半人座星系にも、

 反重力エンジンの技術はあるが、その恩恵を

 受けることができるのは、ヤースケライネン

 教国もイゾルデ王国も、一部の要人だけで

 あった。

 

 イゾルデ王国は、進んで一般人の使用を禁止

 しているわけではないが、ヤースケライネン

 教国を刺激しないように、要人のみの

 使用としている。

 

 それも、宇宙へ昇る際に反重力エンジンの

 宇宙船を使うだけで、惑星上での移動に

 浮遊する乗り物は使われていない。

 

 かつては海上に宇宙エレベーターも存在した

 ようだが、それも撤去されている。今後

 どのようなスケジュールでどのような

 技術が禁じられていくか、惑星の住民は

 みな固唾を飲んでいる。

 

「何でも空飛ぶ家に馬を乗っけて一緒に

 目的地まで飛んでいくそうじゃないか。

 わしもそんな家持ちたいのう」

 

「あんたは馬乗れないじゃないか」

 おれが横から口を出す。この6人で馬を器用

 に操れるのは、セイジェンだけだ。ミッション

 によっては実家から馬を持ってくる。

 

  そこからまたしばらく沈黙して歩く。

 が、30分もすると今度はスヴェンが歌い

 出す。雪国のドワーフ族の民謡で、雪道を歩く

 際によく歌われるものだ。

 

 これは、アントンも歌ってくれる。歌詞を

 知っているからだ。しょうがないのでおれも

 歌う。スヴェンが雪道に関係なく辛い時に

 どこでも歌うので、憶えてしまった。

 

 シャマーラは、たいてい中々歌ってくれない。

 しかし、彼女はかなりの歌い手だ。色々な

 地方の民謡を歌える。彼女が乗ってきた時は、

 そういった民謡を続けて歌ってくれる。

 

 彼女は戦闘中でもたまに歌ってくれる。

 かなりプレッシャーのかかるミッション、

 特に前衛陣が緊張しているような時だ。

 だが、今回はまだその時間ではないようだ。

 

 イスハークもその後ろで歌い出すが、

 セイジェンは少し離れて歩いているので

 歌っているのかどうかわからない。

 

  現地隊はだいたいそうやって、沈黙が

 破れるとくだらない内容を話したり、歌を

 歌ったり、という感じなのだが、

 

 本部隊のほうはあまり沈黙になることはない

 らしく、しかも何やらいつも高尚な話を

 しているらしい。

 

 団長のオリガ・ダンやエンジニアのヨミー・

 セカンド、そして霊能士のパリザダ・

 ルルーシュはまあいいとして、ホビット族の

 三人もその会話に加わるらしい。三人とも

 そこそこの学があるとかで。

 

 クノイチの双子は移動中に周囲を警戒する

 ために散開している場合が多いし、補給士の

 ガンソク・ソンウは補給でいない場合も

 多いのだが、今回は本部組も6人で歩いて

 いる。

 

 話をする分にはいいと思うのだが、高尚な

 話などしていると余計に疲れないのか

 少し心配になる。

 

 たまに玄想旅団がまとまって歩いて移動する

 時もあるのだが、ヨミー・セカンドなどは

 ずっと喋っていた。

 

 エンジニアであるが、色々なことに詳しくて、

 やれそこに飛んでいる昆虫は何だとか、

 この植物この花はなんだ、この木はああだ、

 あの雲はどうやってできるだ、宇宙の始まり

 を知っているか、ずっと永遠に喋り続ける。

 

 うまく黙らせる方法も実はあって、何か難しい

 テーマを与えるのだ。それは別に数学や

 物理の方程式の話でなくてもよくて、人生に

 おけるテーマや葛藤などでもよい。

 

 そうすると、2、30分は黙って歩く。

 しかし、何らかの着想を得ると、その沈黙を

 全て取り返しに行くがごとくまた喋り続ける

 ことになるが。

 

  団長のオリガ・ダンは、団の気分転換も

 考慮しているのか、徒歩移動の際の組を

 入れ替えたりもする。全員男性の組、女性の

 組で移動する場合もある。

 

 そういう時は、男性組はふだんできないような

 会話をする。その時に聞いた話だ。オリガ・

 ダンは、結婚歴があり、夫も冒険者だったが、

 同じ旅団で冒険していたときに夫が不慮の

 事故でなくなったらしい。

 

 同じような話がシャマーラにもあって、

 シャマーラは結婚歴は無いが、結婚も考えて

 いた恋人がいて、同じように冒険者で、

 しかも冒険中に不慮の事故で亡くしたとか。

 

 どちらも、玄想旅団が結成される前の話

 らしい。今の旅団で、冒険中の緊迫した場面で

 見せる落ち着きの裏には、そういった経験が

 あったのだ。

 

 まあ、それ以外にも色々な噂のオンパレード

 になるわけだが、パリザダのシキガミが

 近くを飛んでいないかだけは、どれだけ話が

 盛り上がっても、男たちは皆気にする。

 

 他にも食事の時間などもそれぞれのメンバー

 から色々な話を聞くことができるのだが、

 この旅団のメンバーの若いころの話はどれも

 面白い。

 

 なかなか普段聞けない話が出てくる。

 

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