3話。
木蓮の髪の毛はとても綺麗だ。
幼かった時は肩までの長さしかなかった緑の髪は今ではお尻まで伸びている。普段はその髪を結くことなく流したままだが、最近はぐちゃぐちゃに乱れていることが多い。
島から木蓮へ逢いに飛んできた時、愛しい木蓮の乱れた髪を見て悲鳴を飲み込んだ。精霊の島は結界で守られているから悪意のある人物も魔物も侵入できないはずだ。
自分がいない時にこの島で何か事件でもあったのかと驚愕し絶望する。しかし、それは勘違いだったようで、木蓮を乱した犯人はモコらしい。
お互いの魔力を絡ませる修行でそのイメージがわきやすくなるようにと木蓮の髪を使って二つ編みの練習をしたとのこと。
(ムカつく。まだ木蓮の髪を弄ったことないのに。僕より先に弄るなんて…。)
木蓮の初めては全て僕のもの。
ただの我が儘で束縛で自己満足なのはわかっている。けど、やっぱり悔しい。
だからモコに張り合うように必死に練習をした。二つ編み、三つ編み、編み込み。編み込みにも裏編みと表編みがあるようで、綺麗に編めた時は本当に嬉しかった。
自分の手で綺麗な髪をアレンジできる。そしてそれを見て喜ぶ木蓮に自分が歓喜する。この気持ちは周りから見たら異常なのかもしれない。
なかなかできないモコに対し、ライバル視してしまう自分。モコが編んだ後に乱れた髪をささっと編み込むと、モコは悔しがり白蓮の元に行き白蓮の髪の毛で練習をする。
白蓮も同様、乱れた髪を木蓮と同じく編むとまた悔しそうに顔を歪めた。
お互いがお互いを意識すればその分、負けん気で自然と努力する。
モコは小さな肉球で一生懸命編み込む。しかし、まだ修行が足りないと僕は思う。スルスルと編めるようになり、イメージが頭に焼き付いて漸く魔力もスムーズに絡ませることができるはずだ。
だからもう少し、この争いはそのままでいいかな。また木蓮に不器用だと言われそうだ。
精霊は命の源がある。
それはその精霊によって異なり、物だったり生物だったりとそれぞれだ。
僕は七色の海の底にある石っころが命の源だ。
見た目も感触も隣に落ちている石と変わらない。本人にしか分からない石。
その石は肉体よりも大切な物。
精霊は回復が早いが、怪我をしたら痛みは微かに感じる。それは痛みを感じる前に治ってしまう方が多いから微かな痛みだけで済む。
しかし、その怪我具合で強烈な痛みを感じることもある。その例えが白蓮の見た目も不味い料理だ。体の中を痛めつけられるのが一番酷く、治りが遅い。不老不死みたいなものでも、完全なんて言葉はない。だから自分を守る結界は必要となる。白蓮の料理には全く効かないが。
命の源は破壊されるとその持ち主も死ぬ。だから再生する体より、命の源の方が大切なのだ。そして、それ以外に大切な役目がある。
精霊同士が番になる場合、命の源の在り処へ行きお互いに教え合う。それは"あなたに私の命を預けます。"と誓い合うもの。隠し事なく、お互いの秘密を共有することで更にお互いを思いやる気持ちが強くなる。
そしてもう一つの役割は、ある時期になると命の源は淡く光りだす。二人の気持ちが高まり、ある基準を満たすとこの現象が起こる。
二つの命の源を接触することで、新しい生命が誕生するのだ。
・お互いを思いやる心。
・新しい生命を強く願う心。が必要なのだ。
しかし、一方的の場合はお互いの石が光ることは無い。
「アクアは子供が欲しい?」
「うーん。まだいいかなぁ。」
「それは何故?」
「僕は白蓮を任せられるパートナーができてからでいいと思うよ。」
「白蓮は契約者が契約者だけに、難しいかも…。」
「そうだよね。じゃぁ、まだいいやー。」
「そっか…。」
「木蓮は欲しいの?」
「……うん。」
「ごめんね…。でも今僕達に子供ができたら白蓮は一人になってしまうよ?木蓮との子供は僕も一緒に育てたい。けど、今は別々に住んでいるでしょ?僕は僕の島で家族と暮らしたいもん。でも木蓮は優しいから白蓮が一人になるのが心配でしょ?だからまだなのかなって思うよ。」
「そっか、そう…だよね。」
この二人に子供はまだまだの様子。
「欲しくないわけじゃないからね?」
「うん、それは分かってるよ。」
「あっ、いいこと考えた!!耳貸してっ。」
木蓮の耳に口を寄せ、2人にしか聞こえない会話をする。
木蓮は目を見開きそしてアクアとふたりで意地悪い笑みを浮かべる。
「いい考えだね。」
「でしょー!よし、白連に恋人作っちゃおう大作戦だー!」
アクアもアクアなら木蓮も木蓮だ。
夫婦はよく似ると言うけれど、お節介される側としたら大きなお世話だ。
けれど木蓮を姉に持ち、アクアを義兄にもつ白連の運命なのだから仕方の無いこと。
一一白連の恋の話はまた別のお話…。




