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モコモコおててで異世界を歩く。  作者: 壱菜
モコモコおてては旅に出る。
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もこは思いを込める。


白蓮からロアンは無事だと聞いていたから心配はしていない。けれど、二人で過ごした数日は充実していて、ロアンがいないことに寂しさを感じる。暇だから寂しく感じるんだと気付き、思い立ったら即行動「彦次郎さんとこいってくる!」とガサール島を飛び出した。


またまた突然現れた私に対し、彦次郎は快く迎え入れてくれた。


「電子レンジ作りましょう!」


母国語はやっぱりしっくりくる。

お茶を準備する彦次郎に「約束を守りに来ました。」と言葉を続けると、彦次郎は手を止めて力強く頷く。

そして指をパチンとならすと7色の海から水の玉が現れた。

その玉は呼び出した主の手の中で弾け、その中から現れたものを彦次郎はテーブルに広げた。魔法は便利だ。手も玉の中に入っていたものも全く濡れていない。


テーブルに広げられたのは薄い紙のようなものが数十枚。

よくよく見ると白砂が薄く固められたもので、端から端までびっしりと日本語と数字が書かれていた。専門的な事ばかりが書かれていてじっくり見ても意味が分からない。


「日本語は誰かにアイディアを盗まれることもないので、安心なんです。この世界だと特許制度なんてないですから。」


「……えっ?特許ですか?」


「えぇ、アクア様に電子レンジについて話をしましたら「いい金儲けになるね」と仰られたので。」


なんか話がややこしく。

ただ純粋にレンジが必要なだけじゃないの?と首を傾げる。


「この島を維持するにもお金がかかりますから。」


んんんっ!?


「あそこの花畑は花を買ってきて私が管理しています。あそこの客室の掃除は魔法道具で掃除をしていますし、魚以外の料理をする際は他の精霊からお肉を買います。あとそれから…「ちょっ、ちょっと待ってください!」」


まだまだ色々と出てきそうで、慌てて彦次郎の話を遮る。

突然のことで混乱した頭はパンク寸前だ。


「えっ、うぇっ?あの、その…。この国は魔法があるんですよね?」

「えぇ、ありますね。」

「精霊は魔法が得意なんですよね?」

「えぇ、そうですね。」

「なら、お金必要ないですよね?」


日本人としての知識は、魔法でちょちょいのちょいっと生活するファンタジー。


「いいえ、精霊でもお金は必要です。先程話をした通り、掃除は魔法道具が必要になります。わたくしとアクア様は水魔法しか使用できないので、洗濯や水拭きはできますが、水浸しの床を乾燥させるには風魔法が原動力の道具が必要です。魚料理に飽きたアクア様に、火の精霊から買うお肉料理も出しますし、わたくしも召し上がります。海の中に住む従者たちも海藻だけだと飽きてしまいますので、城下町で売っている甘い菓子も食べますし、木蓮様から買うフルーツも食べます。」


うそっ、あの亀さん甘いお菓子食べるの!?

お金以外にも驚愕な事実を知り、口がポカンっと開く。


「港町に寄ったと聞きましたが、一人でに歩く注文用紙を見ましたか?」


思い出すのは木の皮が一人でに厨房へ駆けていく姿。


「あれも木蓮さまに収入が入っているのですよ。」


……すっごく現実的。

ファンタジーな世界の精霊でも働かなきゃ生活ができないんだと親近感がわく。

でも言われてみれば一つの魔力しか持っていないから出来る事と出来ないことの差が激しいんだ。漸く納得した。


「そこで、電子レンジが売れるとアクア様は目をつけたのです。私はただアクア様のわがま…ごほんっ。アクア様のご希望通り、温かいご飯がいつでも食べられるように電子レンジが必要だと思ったのですが…。もこさん、ここを見てください。」


とんっとテーブルに広げた紙もどきの一部を指差す。


「この部分に適度な火の固定魔法をかけた魔法石を取り付けたいと思っているのですが…。設定温度や時間をイメージできる魔術師がいなく。力も強すぎてしまい、電子レンジが何度爆発したことか…。」


電子レンジが爆発するのを想像して体が震えた。電子レンジに間違えて茹で玉子を入れて破裂したのを思い出す。玉子の破裂は衝撃的だったがアレはまだ可愛いもんだ。外が爆発するなんて怖すぎる。


「わたくしには鉄を作ることができないので、ここの白砂を使います。白砂を水魔法で固めると鉄のような強度を持ちつつ耐熱にも優れているのでこれでレンジに似た形のものを作ります。」


目の前にはあっという間に電子レンジが出来上がる。しかし、見た目は電子レンジだが、砂で作ったレンジは鋭角な岩に見えなくもない。

開閉もでき、重く見える扉は見た目と違いとても軽かった。

何度も作り、爆発し、また作り、爆発し。を繰り返すことで電子レンジの外見は簡単に作れるようになったとのこと。


「もこさんにお願いしたいのは、この魔法石にもこさんが日本で使用していた電子レンジをイメージして火の魔力を込めて欲しいのです。」


彦次郎の両手には大小様々な透明の石。

見た目はプラスチックでできたオモチャのダイヤに見える。これが魔法石?と首を傾げると、彦次郎は一つだけ手に握り目を閉じた。


「えっ、色が…。」


彦次郎の手の中から出てきたのは透明な石ではなく、水色と青が混ざった綺麗な石。


「これには私の魔力がこもっています。これをレンジに設置しますと…。あ、アイディアが浮かびました。これ、洗浄機になりますねっ。」


まさか手本を見せるように行ったことが吉と出るとは。彦次郎は今のアイディアを忘れないように、物凄い速さでメモにとる。


「洗浄機なら私一人でも作れそうです!」


意気揚々とペンを持った手を走らせる。


「洗浄機も捨てがたいですが、今は電子レンジが先ですね。では、もこさんお願いします。」


次の制作ネタが見つかり、生き生きとした表情で残りの石を渡される。腕いっぱいの石を見て彦次郎が興奮のあまり周りが見えていないことに気付く。

腕に抱えたままどうするかと考える私に、彦次郎はハッと表情を変え、慌てて木のツルでできた籠を差し出した。

それに石を入れ、さてどうするかと考える。


風魔法なら大量の石に魔力を込めるのは簡単だと今なら言える。けれど、火魔法は小さな火を出せる程度の魔力だ。これは根気がいるなと、今更ながらちょぴっとだけ後悔したが、電子レンジが欲しいと物欲が勝り、気合を入れ直した。


電子レンジができたらまず初めに温かいホットミルクを飲むんだい。

日本で毎日二本以上飲んでいた牛乳を思い浮かべ、手に持った石に魔力を込める。

ホットミルクができる適度な温度と時間をイメージし、頭の中で繰り返す。


手の中の石がほんのりと熱を帯び、手を開くとそこには赤く少し金混じりの石が。

で、できたっ!ホットミルクが作れる魔法石が。

単純な自分は、魔法石が出来たことで舞い上がり次々と魔力を込める。


肉料理を温める温度。

魚料理を温める温度。

茹で玉子に穴を開けて破裂しない温度。

ケーキを焼く温度。

解凍する温度。

クッキーを焼く温度。

野菜を蒸せる温度。

ピザが焼ける温度。などなど。


こうして沢山の魔法石を埋め込んだ電子レンジは、私の食べたい物が多々あったことで温められるだけではなく、お菓子が焼けるオーブンレンジとなった。



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