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モコモコおててで異世界を歩く。  作者: 壱菜
モコモコおてては旅に出る。
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もこ日記。-2-


15日目。

できない。


16日目。

できない。


17日目。

でーきーなーいー!!


18日目。

ロアンとウルール島へ遊びに行く。

彦次郎さんお手製の昆布茶をお土産でもらう。沢山お話できて楽しかった。


19日目。

昆布茶を飲みながら修行開始。

一巻きはできた。


20日目。

一巻き以上はできない。

双子の髪の毛はだいぶ巻けるようになった。けどアクアに怒られる。


21日目。

むーりー。


できないループにハマり、集中力がかけてしまう。できない焦りとアクアからの嫌味にイライラが募り、何度もアクアの喧嘩を買うようになった。その都度、色んな風魔法が使いこなせるようになるけれど、全く嬉しくない。あれだけ苦戦した物を左右に入れ替える魔法も今では指を二振りするだけでできてしまう。

アクアに嫌味を言われ、喧嘩を買うようになってから成長したなんて絶対に認めたくない。


それでも先に進めない焦りは収まらず、ロアンの提案に乗り二人だけでウルール島へ遊びに行った。その移動魔法もロアンに大丈夫だと説得され、おっかなびっくりな状態で初めての魔法を発動する。

肉球に感じるさらさらとした砂の感触。無事に到着したことに安堵し、ロアンと自分の体が真っ二つになっていなかったことで更に安堵した。アクアとの喧嘩も無駄じゃなかったと少しだけ見直す。魔力の制御はもう完璧のようだ。


突然の来訪者に彦次郎さんは驚くことなく、そつなく椅子に誘導し、お手製の昆布茶とおかきがテーブルに置かれお茶会が始まった。

アクアが座っていた席には彦次郎さんが座り、この世界に来た時の話や日本の話で盛り上がる。


こちらの世界では電子レンジがなくて不便だ。とか、火魔法がからっきりダメで釜の火を付けるのに魔法道具を使用する。とか、今、電子レンジを制作しているとか。けれど、何度も挑戦したが火魔法を得意とする魔術師が電子レンジを知らないために失敗続きだ。とか。日本で育った私達からしたらこの世界は魔法があったとしても使えなければ不便なところだ。


私自身も火魔法が少し使えると話したところ、彦次郎が興奮し、身を乗り出して「アクア様が時間を守らないからご飯が冷える。」「好きなものを用意しても冷たいと召し上がらない。」と日頃の鬱憤が口から飛び「是非電子レンジの制作を手伝ってください。」と言われ、快く承諾した。


そして、何杯も何杯も昆布茶を飲み溜める私を見兼ね、お土産を持たせてくれた彦次郎さんと別れガサール島に戻る。ストレスも発散し、有意義な一日だった。アクアの愚痴も沢山言えたしね。


次の日に彦次郎さんから貰った昆布茶を飲み気持ちを落ち着かせるとあら不思議、あれだけ苦戦したのに一巻きだけ絡ませられたのだ。

恐るべし昆布茶パワー。


その日に何杯も飲んでしまったのがいけなかったのか、次の日からの昆布茶パワーは機能せず絡ませられるのは一巻きのまま。けれど、双子の髪の毛はなかなか上手くいった。肉球で握られるだけの髪の束をぐるぐると巻いていくが、二人のサラサラの細い髪は手から漏れていく。それを放置して巻くと大変なことになる。それを何度か経験し、覚束ない肉球で持ち直しどうにかできるようになった。と思ったのは私だけだったようで、木蓮大好き過ぎるアクアに「下手っ!」と言われ蹴られた。

蹴りは優しかったけれど、コロリと転がった私が立ち上がる時にはアクアの手によって木蓮の髪は編み込みされ、綺麗に盛られていた。


ちっ。と舌打ちする。


可愛い、可愛いと褒めちぎるアクアは、チラリとこちらを見てドヤ顔をする。

きぃぃぃー!悔しいーっ!!


このことがあったからか、次の日の修行には集中できず、午前中で諦めて自分の家へ引きこもる。

帰るときにロアンが抱えようとしたが、伸びてきた手を避けた時のロアンの顔が脳裏を占領し、気が落ち着かない。傷付いた顔をしていた。

最近では表情がよく変わるようになったなと感じていたが、傷付いた顔を見ることになるとは思わなかった。

小さなベッドで枕に顔を埋めて「うにゃー!!」と叫ぶ。女は度胸だっ!


ベッドから飛び降り、ドアをバンっと開ける。

小さなドアから出た私の横には、家の木に寄り掛かったロアンが驚いた顔でこちらを見ていた。

家に帰ったのは昼前で、外はもう真っ暗だ。ロアンの真面目な性格からして外でコチラの様子を伺っているだろうと思ってはいたが、まさか本当に何時間もいたのかと呆れてしまう。

ワザと足音をたててロアンの横に立ち、目の前の脹脛(ふくらはぎ)をぐいぐいと押す。ロアンは抵抗することなく小さな猫に押され、人間専用の扉の前に立つ。


うにぃ(ここ)みゃうにぃ(あけるぅ)


ドアの前で首を傾げたロアンに、私は開けられないから開けてと肉球でドアノブを指す。

ロアンは理解してドアを開けるが、中に入ろうとせず結局私がまたロアンの脹脛(ふくらはぎ)を押すことになった。


木蓮がこの家を貸してくれたときに「この世界と私の存在を学べばいずれ必要になる。」と言っていた意味が漸く分かった。木蓮は最初から誰かと契約をして欲しいと思ってこの家を貸してくれたんだと。

でも彼氏ができるより先にまさか異性と同居することになるとは…。両親が知ったらどう思うか。いや、あの両親なら30過ぎの娘が同居すると知ったら嬉しくて踊り出すだろう。怖いのはシスコンの響だけ。まぁ、束縛する響もいないから自分のしたいことするもんね。


こうして猫一匹と人間一人は同じ家で一緒に過ごすことになったのだ。


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