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モコモコおててで異世界を歩く。  作者: 壱菜
モコモコおててになりました。
7/83

もこは元OLさん。


私の初恋は29の時だ。


遅いかもしれないけれど、大学卒業後に一般企業に就職し、慣れない仕事に慣れない人間関係。そして、まだ未成年である響の相手をするのに忙しく、恋なんて考えたこともなかった。

やっと高校に上がり、響自身が少しずつ姉離れをしてバイトや友達と夜まで遊びに行くようになって自分自身に余裕が生まれた。


そこで出会ったのが同じ職場の高橋さんだ。


私は総務課にいたが、彼は営業課だった。

響の帰りが遅くなる日に会社全体の飲み会があり、6年間一度も参加していなかった私は勇気をだして出席してみた。


初めて好きになった人は"真面目な人"という印象だ。


銀縁眼鏡に無造作ヘアー。

笑うと目元にシワが浮かび、とても優しい人だ。


イジメられていた幼少期から人見知りが激しく、総務課でも浮いていた私には同期で何人か仲良くなった人もいるが、残念なことにプライベートまで深く関わる相手はいない。


腰まである髪は無造作に一つに結わき、スーツは安物で体にフィットしてなく着られてる感がある。

そんな女子力が全くない私を男だろうと女だろうと一緒に連れ歩くはずもない。



居酒屋を貸し切って行われた飲み会。

一階二階と同じ会社のメンバーが所狭しと座り、仕事の話やプライベートの話で盛り上がっている。



ちびちびと初めて飲むカクテル。

ちびちびと初めて食べる居酒屋料理。


もくもく、もくもくと周りに迷惑をかけないように空気となって箸をすすめる。


そんな私の隣に座っていたのが高橋さんだ。



「その軟骨美味しいですか?」


思考回路がショートした。

男性と仕事で会話をすることはあるが、プライベートでの会話は大学の時以来で、まさか声をかけて頂けるとは思わなかった私は、口に入っていた軟骨を噛むことなく飲み込んでしまった。


ぐふっ!!っと喉を圧迫する異物。

むせ返りながらどうにか喉を通過した軟骨。

焦りすぎて目の前にあるお酒に手を伸ばし、水分を欲していた体に流し込んだ。


アルコールに慣れていない体は、足のつま先から頭のてっぺんまで真っ赤に染まり、頭の中は真っ白になった。

そこからの記憶は全くなく、後から知ったのは高橋さんが私をタクシーに押し込み、一緒に乗り込み家まで送り届けてくれたことだ。


朝、母からその事実を聞いてどれだけ焦ったか。

何故母がこの件に対して「響には内緒にしておく」と言ったのか。二日酔いの頭では理解することができなかった。

ただ、高橋さんにご迷惑をおかけしてしまったことで頭がいっぱいで、母の気遣いに気付けていれば響と私の関係は少し違うものになっていたのかもしれない。


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