もこは緒が切れる。
彦次郎さんと離れるのは名残惜しいが「また近いうちに来ます」と約束してウルール島から離れた。
まさかこんな簡単に島同士に行き来できるとは思わなく、足の肉球の感触が砂から湿った土に変わった瞬間が衝撃的だった。
魔法って便利!!って白連に興奮したまま伝えると「1度ご本人が移動して行きたい所への道筋を体や脳へ覚えさせないといけないのが難点でして…。知らない場所へ魔法で飛んでしまうと体が半分に切れてしまうので気を付けてくださいね?」と恐ろしことを言われ、興奮が恐怖へと変わるのは早かった。
「アクアの一言が決め手となりウルール島に向かうことになりましたが、この先の事を考えて同じ転移人のいるウルール島への道を開いた方が良いかと思ったのです。」
と森の中を歩きながら話を続けた。
立ち寄った港町も魔法で行けるらしいが、あの町にはいい思い出がないから今のところ行く気はない。
森を抜け、日中に過ごしたあの湖のほとりには、光を反射してキラキラ輝く緑の髪が風に舞っておりとても綺麗だ。横に倒れた立派な丸太に座り、湖に視線を向ける木蓮は後ろから現れた私たちに気付くことなく、膝にある藍色の髪の毛を撫でる。丸太には木蓮以外にも横たわったアクアの姿もあり私の堪忍袋の緒がブチと切れる音がした。
二足でスタートダッシュを決めた猫は、人が歩くスピードと変わらぬ速さで走り、草に何度も躓きながらそのまま運動神経の悪さを見せつけ丸太に飛び乗り可憐に飛び蹴りをかましたーー…筈もなく、見えない壁に守られたアクアによって小さな体は弾かれ、ほとりをコロコロと転がりそのまま湖に落ちた。
湖に落ちた瞬間、木蓮の魔法によって湖の周りに咲いた草花が伸びて体に巻きつき引き上げる。一命を取り留めた私は、木蓮の膝であくびをするアクアを睨み付ける。
ーーこやつ、やるなぁ。
「……もこ大丈夫!?」
突然の乱入者に驚く木蓮。
しかし未だに膝から頭を上げないアクア。
ふたりのいちゃつく現場を見て現実を突きつけられる。
あぁ、まさか、本当に…。
嘘であって欲しかった…
勿論アクアに惚れたからではない、アクアに木蓮がもったいないからだ!!
もう一度あくびをしたアクアは顔を動かし湖の方を向いて「あれ?」と首を傾げた。
「きみ、来てたの?来るの遅いよ。待ちくたびれたぁ。」
……ぶん殴る!!
「まぁ、のんびり木蓮と日向ぼっこもできたし許すとするかぁ。」
「もう、アクアったらっ」
肉球で目を隠す。
……あぁぁぁぁ、ぁぁぁぁぁ。
いやだぁ、いやだぁ。どの世界も周りを気にせずイチャイチャするのはやーめーてー。
イチャイチャする二人をほとりに放置し一時間程、漸く私や白蓮、ロアンの元へ来た二人の肌はツヤツヤなのは気のせいだろうか。気のせいであって欲しい。いーなー。私もイチャイチャしたい。
「もこっ、お待たせっ!」
ほとりから駆けてくる木蓮は、変わらず綺麗で幸せそうで今までの事は水に流して……
「みゅにゅうみゃうぅ!!」
流せるわけないでしょー!!
木のテーブルを両肉球でバンっと叩き、椅子の上に立ち上がる。短い腕を伸ばし、肉球で指差すが一本指が出ずグーのままアクアへ向ける。
ーー明日の朝、朝食を取りながらって約束しましたよね!!
「うん、約束したね。」
ーー彦次郎さんが用意した料理を放って木蓮とイチャイチャ、イチャイチャしてっ!
「何?羨ましいの?」
ーーきぃぃ!羨ましいぃ!!じゃなくって、約束は守りましょうってことです!
こら、そこの双子とロアンよ。笑うな。
「もこ、そんなに怒らないであげて?」
ーー木蓮も木蓮でっ
「うん、怒りたい気持ちも分かるけど話はちゃんと最後まで聞いて?」
そこまで言われると大人なのだから我慢するよ。体は正直だから尻尾がバタバタと苛立ったままだけどね。
「アクアの言葉が足りなかったみたいでごめんなさい。あれを見てもらえるかな?」
綺麗な指先で指した先には山盛りの果物と野菜達が。
「私達はここで朝食をとるもんだと思っていたから…すれ違っちゃったみたい。」
あははと笑う木蓮。
ーーあっちに居たんだからあっちで朝食をとるのは当たり前じゃない。
「そうだよねぇ、私もなんかおかしいなぁって思ったんだけど…アクアが言うから信じちゃって。」
ーー恋は盲目ってやつだね!
「そうそう、新婚だから許してー!」
嫌味を惚気+笑顔で返された。
ふんっ、私も寝ぼけた状態で口約束したから仕方がない。許してーー…
「ねー、話終わったー?本題に入ってもいー?早く話して木蓮とまた日向ぼっこしたいー。」
あげないけどなっ!
最近、もこさん。性格が悪く…笑




