もこは舞い上がる。
そんなこんなと半日が過ぎ辺りは真っ暗。今夜到着とは言えこんな遅い時間になるとは思わずあくびを噛み締めた。
物を浮かすイメージはお尻がなくてもできるようになった。けれどやっぱり交差するにはまだまだのようで、何度か桃ができてしまった。頭では分かっている。手を叩く時にお尻を叩くのではなく、右尻と左尻を左右逆にするイメージが必要だということを。
けれど皆さん。皆さんのお尻が左右逆になるのを想像できますか?私の頭が単細胞なわけではなく、想像ができないだけなんですっ!握り拳を作り心の中で沢山の観客を想像し力説する。
くすくすと笑い声が聞こえ笑いの主を見ると口元を押さえた白蓮と目があった。
ーーもこさん、テレパシーで筒抜けですよ?
あー、穴があったら今すぐ生き埋めにしてもらいたい。今なら魔法で土を浮かせて中に入って土を上から落とすくらい簡単にできる気がする。是非そうしたい。それくらい恥ずかしい。りんごのように真っ赤に染まった両頬を押さえ頭をぶんぶん振る。
魔法は本当に難しい。できるようになった魔法は無意識にできてしまうからテレパシーはほんっと危ない。私の馬鹿な考えが全て白蓮に筒抜けなんだもの。でもまだよかった、相手が白蓮だから。ちらりとある人物を見てすぐ視線を逸らす。変な行動を見られていなかったようでホッと息を吐く。
ロアンはゴミ箱の縁に立ちウルール島を探しているのかはるか下の海面をジッと見つめている。
魔法攻略も必要だが、イケメン攻略も大切。と背を向けている今がチャンスとじっくり観察をする。やんちゃなイケメンは弟で見慣れているが、大人の色気を醸し出すイケメンは全く慣れていない。ロアンの日本人とはまた別の美しさと逞しさに、初恋の高橋さんなんて思い出すのも困難なくらい掠れてしまっている。
「ーー見つけた。」
ロアンの低くい呟きにハッと我に帰り駆け寄る。
縁に体をくっ付けて下を覗くが見えるのはただの暗闇のみ。海面も暗過ぎて見えず、ましてや島なんて全く見えない。目を凝らしロアンの視線の先を凝視するが見つけることができずにいると、ゴミ箱は真下に急降下を始めた。
「精霊の島は結界で守られているので精霊同士や一度訪れた人物にしか見ることができないのです。」
「そうなんだぁ…ってことは、ロアンさんは来たことがあるってことですか?」
「あぁ、俺は主に付き添い何度か訪れたことがあるが見えるだけであって、精霊と契約を交わしている主か精霊にしか島へ辿り付くことはできない。どこの島の結界も同じだと聞いたことがある。」
私だけが見つけられなくて当たり前だったのだ。二人との会話で納得する。
「ではもこさん、結界の中に入りますよ。」
白蓮の声と同時に目の前にあるゴミ箱を包んだ金色の球体がパンっと弾けた。その衝撃で後ろに倒れそうになるが、いつの間にか後ろにいたロアンに腰を支えられ転倒を免れる。腰に感じるロアンの温もりに一瞬胸が跳ねるが、目の前に現れた光景に温もりなどどこかへ飛んでいってしまった。
「うぇぇぇー!うっそぉぉーーんっ!!」
双子の森と似たような島を想像していた私は素っ頓狂な声を上げる。隣からフッと笑われた気がしたが今はそれどころではない。目を輝かせて目の前の景色に釘付けだ。
「ロアンさんっ、白蓮っ、すごいっ、すごいっ」
ぴょんっぴょんっと子供のように跳ねる。
「7色の湖ー!!」
「あれは湖に見えるが歴とした海だ。」
「えっ、そうなんですか!?じゃぁどこかに海と繋がる川が…」
縁の上に身を乗り出し、キョロキョロと川を探すが見つからない。
「気を付けないと落ちるぞ。」
フワッと浮遊感の後に床へ下ろされる。
ぽんっと頭を軽く叩かれ、興奮していた気持ちが最高潮まで上りつめ私は腰を抜かす。ベルガモットの香りと共に再び支えられるが、自分がロアンの彼女だと錯覚してしまいそうなほどの甘さを含んだ笑顔を向けられ、膝まで笑ってしまった。その全てを見学していた白蓮は「仲がよろしいですね。」と満面な笑みを向けた。
イケメン恐るべし…。
ゴミ箱が島に上陸していても足腰が戻るまで私自身島への上陸は叶わなかった。




