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モコモコおててで異世界を歩く。  作者: 壱菜
モコモコおてては旅に出る。
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もこは自己紹介をする。


その後、白蓮が到着したのはすぐだった。

半日は待つ覚悟だった私は知らない人と何をして待っていればいいのか考えていたから拍子抜けした。

土も枝もあるからマルバツゲームしようか、棒倒しするかなんて考えたが無駄になってしまった。安心と残念な気持ちが半々だ。


「もこさんっ!」


木々をなぎ倒し現れた自称力作ゴミ箱。

そのゴミ箱からヒラリと飛び降りた白蓮は、金色の魔力を纏い転ぶこともなく綺麗に着地をした。そして、男の隣にいる私を視界に入れると首を傾げた。


「……もこさんですか?」


ごもっともです。

あんな小さかった猫が突然人型になったら誰だって驚くはずだ。元人間だと知っていたとしても、見たコトがない人間がそこにいれば驚くだろう。


「そうだよー。ご心配おかけしまし…ったぁ!」


軽く手を振る。首についていたはずのリボンは右腕に付いていて、鈴がチリンッと一度鳴る。

笑顔を向けてくれるだろうと思っていたが、予想とは違い白蓮は悲痛な表情のまま勢いよく飛び込んできた。咄嗟のことで白蓮の体重を支えることができず、後ろにひっくり返った私は地面に頭を強打する。頭は痛いわ、白蓮にひっくり返った体をぎゅーぎゅー締め付けられるわで体全体はもう大変な苦痛を味わっている。けれど、それは体だけの問題で、心はとても穏やか。すぐに引き離さないのは白蓮からぐすっと鼻をすする音がしたからだ。泣いている。白色に戻った白蓮の髪を優しく撫でた。


「白蓮、心配かけてごめんね…」


うんうんと顔を首筋に埋めたまま頷く。


「来てくれるって信じてたよ。」


再び頷く。


「白蓮、顔見て話がしたいなぁ…」


首筋に埋めた顔がガバッと勢いよく離れた。

目の前の白蓮はやっぱり泣いていた。普段白い頬は血色がよくなりピンク色に、水色の瞳は潤んで妖艶だ。不謹慎にも可愛いと思ってしまった。


「助けるのが遅くなり申し訳ありませんでした。」


白蓮の温もりが遠ざかる。


「怖い思いさせて申し訳ありませんでした。」


正座して頭を下げた。

慌てて白蓮を止める。今回の件は白蓮のせいではない。土下座をする白蓮の後ろでは綺麗に頭を下げる男の姿を確認して、更に慌てた。


えっ、えっ、ええっ!何故!?


「ま、まって!私大丈夫だから!ほら、怪我一つしてないしっ」


あれ?怪我してない…。あれだけ真っ赤に染まっていたのにいつの間にか綺麗に治っていた。首を傾げつつも今は白蓮たちを止める方が大切だ。


「ねっ、ねっ?早く着替えたいし町に戻ろう?その時に私に何があったのか教えて?」


漸く白蓮の頭が上がる。

冷静な白蓮があそこまで取り乱すのが珍しく、動揺して私の状況に気が付かないことに驚いた。再び頭を下げようとするのを制止しする。


「服をどうにかしましょう」とパチンっと白蓮が指を鳴らすと、白蓮の魔力が体を覆い風が過ぎるのをただジッと待つ。そして、空に散る風を見送ると白蓮と同じアオザイに似た服を着ていた。茶色の糸で細かい刺繍を施された真っ白な服にボサボサの髪が合わない。 人間に戻るならもっと美人にしてくれてもいいのにと唇を噛んだ。

自分の外見は変わることがないと諦め、肩にかけたままのマントを片手に持ち、草履に似たサンダルで白蓮の後ろに控える彼の元に向かう。


「上着ありがとうございます。あと、助けてくださりありがとうございました。」


頭を深々と下げる。頭上から「数々の無礼な働き失礼した。」とぶっきらぼうな低い声が聞こえた。無礼な事をしたのは私の方だ。見苦しい裸体を見せたのも、助けてくれたのに拒絶したのも全て私が悪い。


この人はいい人みたいだ。


今まで知る男性はイケメン=気が強い。それは弟の響が主にだけれど…。響はプライドが高かった。自分のものは自分のという言葉通り、姉は自分のものだという考えしか無かった。姉離れが全くできていない子供だった。


しかし、この大人の彼は違う。

ここには響がいない。だから私は前を向いて歩いてもいいんじゃないか。先ずは目先の問題を片付けなくては。


「あの…。も、も、もこと言いますっ。よろ、宜しくお願いしまっす。」


自己紹介ってこんなにも緊張するものなのだろうか。先程まで普通に話せていたのに今になって緊張が押し寄せていた。


「ロアンだ。よろしく頼む、ももこ。」


「……」


クスッと忍び笑いが耳に届く。

声の主は白蓮だ。こんなにも頑張って自己紹介したのに名前を間違えられるなんて。でも、私の紹介が明らかに悪かったんだと肩を落とした。


「さぁ、もこさん。次の町に向かいながら話をしましょう。」


ロアンがこちらをジッと見ている。白蓮のいじわる…。恨めがましく白蓮を見る。


「もこと呼んでください…。」


とても弱々しい声だったが、目の前のロアンには聞こえたようで彼は分かったと頷いた。


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