もこは自分の身は自分で守る。
体力精神共に限界だった体で叫んだことにより、はぁ、はぁ、はぁっと呼吸が浅くなる。
胸が苦しい。ギュッと拳を作り胸に当てる。
スローモーションで鏡が粉々になって降り注ぐ。それがとても綺麗でつい見とれてしまっていた。
やることはやった。と満足し、ゆっくりと目を閉じた。苦しかった胸は次第にポカポカと暖かくなり、
「……あつっ!」
胸が焼けるように熱くなった。
拳を解き、痛みから逃れようと胸を掻き毟る。
毛がぼろぼろと剥がれ落ち、胸からは金色の光が漏れ出し、その光によって体が包まれた。
その光が発すると同時に胸の熱さが治り、傷だらけの体は綺麗に治っていた。しかし、痛みや傷なんて見落とすほど今の状況に頭が混乱していた。
光に共鳴し、首につけた鈴がチリーン、チリーンっと何度も何度も鳴り続けている。そして、光は体を纏い全ての毛を剥がす。剥がれ落ちた箇所から出てきたのは見覚えのある薄橙色の肌だ。
いつのまにか木っ端微塵の鏡は跡形もなく消え去ったが、問題は人間に戻ろうとしているこの体。コンプレックスしかない体になんか戻りたくないと色が変わりつつある腕で体を抱きしめた。
完全に人間に変わるまで時間はかからなかった。忌々しく手のひらを見る。鈴の音も収まり、ガラスが全て消えてから残ったのは人間に戻った自分と、広く真っ白な空間だけ。
あの金色の光は私の魔力だったのだろうか。あんなに純金な魔力は見たことがない。
魔力だったとしても、閉じ込められたままだったら意味がない。正座したままどこまで続くかわからない天井を眺めた。
「あれ?」
目を凝らす。
天井のある一点に黒く亀裂が入っている。それが少しずつ広がっているように見えるのだ。そして、白の空間に目立つ亀裂は一気に全体に広がった。
またか…。とため息を吐いた。
一度あることは二度ある。結局は死ぬタイミングが遅れて人間に戻っただけだと諦めた瞬間、ガシャーンっと空間が割れた。
光が一気に差し込み、その一部から塊がこちらに向かって落ちてきた。
「……あれ?」
一直線に落下する物体に頭を抱えたが、予想していた衝撃はなかった。その代わりに、魔力とは違う包み込む温もりとふわりっとベルガモットの香りが鼻をかすめた。ゆっくりと顔をあげると、漆黒の瞳と目があった。
その吸い込まれそうな瞳は、じっとこちらを見てからゆっくりと下に視線を落とし目を細めた。つられるように視線を落とした私は、自分の状況に頭が真っ白になり咄嗟に自分の身を守ろうと行動に出た。
「こんの変態っ!!」
人間になった手で目の前にいる人物の頬に平手打ちを綺麗に決めたのだ。




