もこはトラウマ。
白蓮が何かをしているようで部屋の中はガタガタと騒がしい。魔法を信じていないわけではないが、魔法にまだ慣れきっていない異世界人が「はい、分かりました。」と納得できるはずもなく、タイミングを逃したこともあり小心者の自分には体を起こすことができない。でも、いい加減起きたい。
「もこさん、もこさん」
そんな私に天使の声が。
「にぁうっ」
さすが気遣いの天才、白蓮ありがとー!っとガバッと起き上がった私が目にしたものに愕然した。
「どうでしょうか?もこさんが不安そうでしたのでドアや窓の前に置いてみました。」
ーーうわぁ、すてきー、あ、ありがとぉ…
すっかり忘れていたよ、天然だということを。
口元が引きつり、髭がピクピク動く。
「よかったです。姉が以前、これも必要になるかもしれないからと言っていたものがまさかこんな時に役立つとは。姉に感謝をしなければ。」
引いている私に気付かない白蓮は、意気揚々とドアの前に置かれた木蓮の作品らしき物を撫でる。
白蓮、それきっと押し付けられただけだと思う。
ため息を一つ吐き、ドアの前に置かれた木の置物を見る。なんだろうかこの変な生き物は…クマ?サイ?トラ?そもそもこんな生き物いるのか?なんて考えながら窓の方も確認する。
……もうね、ツッコミどころ満載だから。
窓の前にある鳥なのか鹿なのかよくわからない生き物を横目に、いつの間にか不安がなくなっていたことに気付く。
ーー白蓮、ありがと。
今度は本気の感謝の気持ち。
人間ってなんでこんな不思議なものでも落ち着くのだろうか。ドアの前に棚を置くことで安心するのと一緒なんだろうけど、映画ではその棚も押されたり銃で撃たれたりしてて意味なかったんだけどね。っとつい笑ってしまった。
「では、安心したところでご飯にしましょう。」
そう言ってパチンっと指を鳴らすと宿の質素なテーブルいっぱいに果物が並ぶ。馴染みのある果物を見てお腹がキュルッと鳴る。
ベッドから飛び降り、行儀が悪いがテーブルの縁に飛び乗る。こうしないとチビな体ではテーブルが高くて果物全体を見渡せない。自分の好きな果物をー。っと探す私はふと、気になるものを見つけてしまった。
「あっ、これは自作のミックスフルーツジュースです。」
「……」
ビンに入ったオレンジより茶色に近い色の物体。
白蓮はそれを手に持ちゆらゆらとビンを揺らすが、液体らしきものはビンにつられて揺れることがない。液体というより固体に近いようだ。
「飲みますか?」
ーー大丈夫ー。果物で水分とれるー。
目が泳ぐ。目が泳ぐ。
間延びした言葉と目が泳ぐー。
絶対無理ー!!だって、あのお茶事件から白蓮の自作トラウマあるもの。だって、あれジュースって言ったよね?揺れもしないジュースってなに!?あれ、なにー!!
恐怖な物は視界に入れないよう目の前にある果物に勢いよく噛り付いた。
そんな私を白蓮は残念そうな表情で見ていたなんて知らない。そんな白蓮を見てしまったら気の弱い私はきっと味見をしてしまっていただろう。
「そういえば、先程のリボンですが…」
お腹いっぱいのお腹を摩りながら白蓮を見る。
すでにジュースらしき物を飲み終えたらしく、空の瓶がテーブルに置かれている。
「あのリボンは魔導具として使用できますので、もこさんに是非付けていただきたいのですが…いかがでしょうか?」
「にゃっ?」
私はてっきり白蓮が気に入って買ったのだろうと思っていた。
紙袋から出したリボンは、いつの間にか片付けられたテーブルの上にある。三本のうち一本は他の二本と比べて明らかに質が違う。
「さて、もこさん。どういった魔法をかけますか?私のおすすめは結界か翻訳です。」
結界は今回のこの騒動で必要だと感じたのだろう。そして、翻訳と聞いてこの町に入る前に白蓮と話をしたことを思い出した。
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