もこはダシになる。
私はこの世界に来て楽観的な考えしかなく、白蓮が求める"覚悟"がどういったものなのかまだよくわからない。
でも、覚悟はあるつもりだ。私の覚悟と白蓮が求める覚悟の重さは全く異なるものだろうと思う。返答に困る私に、それを感じ取った白蓮は真剣な顔からふわりっと小さく笑った。
--ざっとお話をしてしまいましたが、何かご質問はありませんか??
「にゃにぃ…」
--では、お店を出て買い物でもしましょう。
こくんっと頷く。
いつの間にか戻ってきた独りでに走る木の皮には、読めない字で書かれた紙が挟まっており、白蓮は迷いなくその木の皮の上へ銅貨を三枚置いた。
銅貨を包むように上半分を折り曲げた木の皮は、再び走り出し厨房へ向かう。それを見送り、椅子の上で四つ足になって伸びをしていつでも動ける準備をする。
お客を掻き分け2度目の登場をした店員は、白蓮が出した銅貨より一回り小さい銅貨を二枚、白蓮の手の平に落とした。
「驚かせた詫びにこれサービス。猫ちゃんこれ好きか?」
にかっと白い歯で笑い、手に持っていた干し肉らしき物をテーブルに置く。
両手をテーブルに付き、その匂いを嗅ぐと馴染みのある匂い。
「まぁ、干し肉なんて…そんな貴重な物をいただいてよろしいのですか?」
白蓮が干し肉と店員を交互に見る。
そんなに贅沢な物なのか…?
住んでいた世界でよく見かける酒のつまみ。
白蓮に問われ、顔を赤くして頬を掻く店員をみて冷めた目をしてしまうのも無理はない。
この店員、白蓮に惚れたな。
じとーっと二人のやりとりを見つめながら、ジャーキーを口にくわえ椅子から飛び降りる。
そんな猫一匹の行動に気付いた白蓮は、店員に頭を下げて猫に続き店を出た。
ざまーみろ。ふんっと鼻息を吐く。
猫をダシに使って白蓮を釣ろうなんざ100万年早いんだよーっだ!!と鼻息あらく、町の中心に向かって歩き始める。
--もこさんっ
むむ、このジャーキー美味しいなぁ。
少し離れた場所から駆けてくる白蓮を待つ間に、ジャーキーを口の中で噛んで柔らかくして飲み込んだ。




