もこは四つ足慣れない。
さてさて、テレパシーも使えるようになり白蓮とも仲直りした私に待っていたのは…
--あそこに見えるのは町だぁぁぁっ!!
うにゃぁー!と舗装されていない土の道の真ん中で興奮をのせた声をあげる。
そんな私に、もこさんもこさん。とテレパシーが届く。
--二本足で立ってはいけませんよ?
スタンディングスタートを決めようと、右足と左手を前にした状態の私に白蓮から待ったがかかる。今にでも走り出しそうな体をグッと我慢し振り返ると、町娘に扮した白蓮の茶色の瞳と視線が合う。
薄水色の瞳は茶色に、白髪は瞳と同じ茶色へ。
町へ降りるために変装した白蓮は色が変わってもとても綺麗だ。
服装は町娘が着ている麻の袖が広がっているワンピースに腰には革のサッシュベルトを付けている。魔法一つで着替えや変装ができるの羨ましい…と思ったが、今の私には着替えも変装も必要ないから楽チン楽チン。
町の門から500メートルほど離れた林の中にゴミ箱で着陸し、2日ぶりに降りた地上の土は固かった。
浮遊感が残りふわふわするなぁっと思った瞬間、平衡感覚がなくなりバタンッと大の字で倒れた。「大丈夫ですか!?」と駆け寄ってくる白蓮に、テレパシーで大丈夫と答える。
大丈夫、テレパシーを使う集中力が残ってるから体に異常はない。ただ、長く空にいたから気付かぬうちに酔っただけだ。
すぅ、はぁっと深呼吸 をすれば口元で乾いた土が舞う。口と髭を汚す土を少し吸い込み噎せる。
そんなこんなで無事にたどり着いた町は、まさにファンタジーな世界。
町の入り口には、警備隊が。
日本の警察とは全く異なり、麻のシャツにパンツを着た上に革でできているであろう胸当てと腰巻、ブーツを履いている。よくよく観察をすると左腰に下げている剣の柄頭に右手が添えられていた。
そんな警備隊にビクビクしながら横を通り過ぎる。しかし、警備隊は真っ直ぐ村の外を見ていて入り口を通る人物の確認はしていない。何故かと白蓮に聞くと、人間に化ける魔物はいませんので。と聞きなれない単語に毛が逆立った。
--ま、まま、もの…
--えぇ、魔物をご存知ですか?
--知らないです…
魔物は知っているがそれは本の世界に登場するもの。平和な世界で育った私にとっての魔物はゴキブリやイモムシくらいなもので、スリッパじゃ倒せないの?丸めた新聞紙は?思い出す日本での最強の武器。この世界の魔物は剣で倒さなきゃいけない程恐ろしいものかと体がすくみ上った。
--カラスズも魔物の一種です。
カラスズ。懐かしい名前だ。
一瞬なんだ?と頭の中は疑問符でいっぱいになったが、憎きあの鳥がそんな名前だったなと思い出す。
--入り口で立ち止まるのは通行のお邪魔になるので…そうですね、あの店でご飯でも食べながらお話ししましょう。
白蓮が指した先には、お店らしき建物。
初めて見たこちらの世界の家は、土の壁に丸太を並べた屋根。入り口の日除けは細い丸太を二本地面に刺し、布を広げて屋根と4点止めしただけのもの。手作り感満載だった。
私は自信満々に言える。
何不自由なく暮らしていた私は一週間も住めない環境だ、と。




