もこは蹴る。
「--バカもこ、おせーよ。」
職員専用の出入り口を開けると冷たい風と共に慣れ親しんだ声が届く。
その声に「はぁ。」と険悪感を隠すことなく大きなため息を吐く。
「……響、うるさい。」
出入り口の真横にある自動販売機の光で、響の艶のある金髪が更に輝く。
私と響の距離は私の歩幅では三歩ほどの距離だが、響は一歩で近付き、肩にかけていた制服の入ったカバンを奪いその肩に腕を回して耳元に顔を寄せる。
「ケータイ、電源きりやがって。罰として飯おごれよ。」
「……疲れてるから無理。」
「へぇ、ならベッドの下に隠してあるセノビッ○、全部捨てる。」
「……っ!!」
「因みに、バカもこは気づいていないと思ってるけど、母さんたちチビもこが夜な夜なセノビッ○を何杯も飲んでいるの気付いてるから。」
あまりの衝撃に後ずさりをする。
響は後ずさりをした私の肩に置く腕を強く引き寄せ、自分の胸へとおさめる。
身長差約40cm。小さい私はすっぽりとおさまってしまう。
響の抱擁が大っ嫌いだ。特に頭をぐちゃぐちゃに撫でまわすところが気に入らない。
睨みつけるように下から見上げれば、綺麗に弧を描いてニヤリと笑う口元。その顔が憎くて憎くて、響の頭より一回り大きい自分の頭で目の前にある鳩尾に頭突きを食らわした。
ぐっ、と声を詰まらせる響。しかし、相手もなかなか手強く、頭突きだけでは肩に回された腕は解かれない。
良心が痛むけれど仕方がない。
せーのっ!!と心の中での掛け声に合わせ、振り上げた膝は読者様ご想像通り一番無防備な股間に躊躇することなく食い込ませた。
「ーーも、こ…ふ、ざけ--」
女には想像できない痛みに股間を抑えながら蹲る響を背にし、履き潰したスニーカーで駆け出す。
ふわりっ、と舞う腰までのふわふわした癖っ毛の髪。その髪に手を伸ばした響の手は宙を切った--。




