もこは魔力の差を知る。
「魔法をかけるまえに着替えてもよろしいですか?」
斜め後ろから遠慮がちな声が聞こえ、振り向くと白蓮はジッとこちらを見ている。
私に聞いたんだなと理解し「みゃお」と返事をすると、白蓮は頬を緩めふわりと笑う。
身を屈め、膝下から頭のてっぺんまで手の甲で払うと金混じりの風が白蓮を包み込む。
その風は見た目は竜巻だが綿菓子のように柔らかく、中心にいる白蓮の姿をしっかりと隠す。
1分ほどが経ち、再び顔の前から膝あたりまで手の甲で払うと風の渦は霧散し白蓮が姿をあらわす。
着替える前はくるぶしまで隠れる白のワンピースドレスの上に簡素な膝下まであるベージュのローブを着ていたが、渦から姿を現した白蓮はベトナムの民族衣装アオザイによく似た服を着ていた。
チャイナ服の丈を長くした服は白。腰まで入ったスリットから覗くパンツは薄水色だ。
その装いがとても似合っていて、真っ白な美しい精霊に見とれてしまう。
次に白蓮は手を口元に持って行き、手のひらにふぅ、と優しく息を吹きかける。
キラキラと金色に光る風は手のひらで渦を巻き、白蓮の手のひらに簪を置き空高く飛んでいく。
次々と出てくる魔法のオンパレードにただ口がポカンと開いて見ていることしかできない。
ファンタジー映画でよく魔法を演唱する姿をみかけるが、この世界は演唱なしで願ったことが魔法化される。けれど、魔力を持っていないと願ったとしても魔法化はできない。
魔力にも差があり、魔法をかけている物を包む魔力の色でわかる。上級魔力保持者が使う魔法は金混じりの白に、下級魔力保持者はくすんだ白となる。
木蓮の魔法も見たことはあるが、白蓮ほど金混じりの魔力ではなかった。微かにキラキラ光って見えただけだ。
双子でも魔力の差が出るんだと納得した瞬間だった。
魔力があれば簡単に魔法が使えるわけではない。
木蓮いわく「学べばもこだって上級魔力を保持できる」とのこと。そして、人間が通う魔術学校を勧められたが断ったのだ。契約云々言っていたから最後まで話を聞くことなく「いや」とバッサリ切った。
この世界に来て2、3日ほど毛繕いで苦労していた私に白蓮は風魔法を使い清潔を保つ方法を教えてくれた。
体を乾かす魔法も最初は爪の先が乾く程度だったのが、今では全身乾かせる。2日ほどで体を包む風を習得した私は、自画自賛ではないが自分に魔法のセンスがあるんではないかと思っていたが、あのキラキラ光る白蓮の魔力を見て自信がなくなるのを感じた。
白蓮は手のひらにある簪を口にくわえ、お尻のところまである白髪を無造作に掴み、後頭部でお団子にまとめ口にくわえていた金の簪で止める。
シャラリと簪から垂れる薄水色の藤の花。その先には小さな鈴が付いている。
動くたびに鳴る鈴の音。
その音を聴くと心が洗い流されるような清々しい気持ちになった--




