もこは折れるはず。
「準備出来次第出発よ。」と意気揚々と白蓮の腕を引き、森に入っていった二人を目線だけで見送り、その場に残った私は足をぶらぶらさせながら目の前にある地図に目を走らす。
見たことのない世界地図。
日本もアメリカもヨーロッパもない。
本当に異世界へ来てしまったんだと漸く実感が湧く。
知らない世界、知らない国、知らない言葉。
全てが知らないことだらけ。
不安かと聞かれたら不安だと答える。
だけど、不安より期待の方が大きい。
私は新しい人生を手に入れたんだ。
ここには地味な私を知っている人はいない。
今までは我慢、我慢、我慢と自分に言い聞かせてきたから白蓮に暴力を振るってしまった自分に驚いている。
この旅で白蓮にしっかり謝って許してもらおう。
そして、ここで三人仲良く暮らしたい。
そのためには、この世界を学ぼう。
両手の肉球を握りしめて固く決意をする。
「もこ!お待たせっ」
森の中から薄くて大きな紙のようなものを双子が引きずりながら持ってくる。
一辺の長さが5mはありそうな正方形の紙はよく見ると木目があり、触って見ると木の材質だ。
「これを折って、白蓮の風魔法でウルール島まで飛んでいくよ。」
この世界は私に沢山の楽しみをくれる。
憧れていた自由な世界、自分の意思で動ける世界、俯くことなく前を見て歩ける世界。
夢のような世界にワクワクが止まらない。
「うにゃん!!」
何を折ろう?
飛んでいくなら飛行機?鳥?
乗れればいいなら花?虫?
頭の中に小さい頃折った折り紙が次々と浮かんでくる。
よし、落ちないように安全性を考慮したアレにしよう!と折るものを決め、目の前の紙に飛び付いた。が、
ーー数分後、膝を付きうな垂れる猫一匹。
猫の手じゃ紙を掴めない!!
くぅ!と歯をくいしばる。
この可愛い肉球めっ!と地面を肉球で叩く。
「もこ、手伝おうか?」
そんな私を見かねて木蓮が手を差し伸べた。
うにゃ!うにゃ!と湖のほとりで声を張る猫。
仁王立ちになり、短い腕を左右上下に動かし指揮をとる。
木蓮と白蓮は息ぴったりに谷折り山折りと折っていく。
記憶を手繰り寄せ、出来上がった作品に満足し、それを広げる。
「これは何を折ったの?」
木蓮はできた作品が鳥でもなく、植物でもなく、ただシンプルな形をしたものが何に見えるか必死に考え答えが出ずにいた。
「うにゃにゃんみゃおみゃん」
そう、これはあの有名な紙のゴミ箱。
よくおばあちゃんがチラシを集めて作っていたゴミ箱だ。
長い距離を座り続けるなら、箱型で安定した形の方がいいだろうと考えた。
いざ作るとなると正方形を長方形にするところで猫の手は不便なことに気付き、全て双子姉妹に作ってもらった。
出来栄えに満足し、ゴミ箱の中に飛び込んだ。
さぁ、準備はできた。
冒険の始まりだ!!
「もこ、今からそのゴミ箱に魔法かけるから降りないと、もこも空高くまで飛んで行っちゃうよ?」
……すみません、興奮して先走りました。




