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モコモコおててで異世界を歩く。  作者: 壱菜
モコモコおててになりました。
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もこは介護士。


「では、佐藤さん頭の泡流しますよー。」


片手でシャワーを持ち、目の前にある泡だらけの頭にお湯をかける。

白い泡がお湯と一緒に流れ、泡のなくなった頭は真っ白。



「背中洗いますよー。」


泡の付いたタオルでゴシゴシと丸まった背中を擦ると、「きもちいいねー。」と優しい声に手元を見ていた顔を上げた。

鏡越しで満面の笑みを浮かべ、こちらを見つめるおばあさんと目が合うと「いつもありがとう、もこちゃん」と感謝され、自然と笑顔になる。


私の職場はご高齢の方を介護するデイサービスだ。

ご家族様が介助しにくいお風呂を目的でいらっしゃる方が多く、午前中に何十人も入れるお風呂場は熱気に包まれ戦場状態だった。


懐っこい性格の私は、利用者様から「もこちゃん」と呼ばれ、職員同士の争いが全くないこの職場は私の癒しの場であった。


デイサービスでも力仕事はある。

下半身麻痺の方を持ち上げたり、全麻痺の方のオムツを替えたりなど体や腰に負担がかかる仕事だ。

146.6cmの私には酷ではあったけれど、ここでは自分のコンプレックスなど気にならない。

優しい利用者様に職員、介助することで利用者様の役に立つこの仕事にやりがいを感じていた。


しかし、それは仕事をする8時から17時までのこと。


来週から来苑される新しい利用者様の名札や連絡帳を作成しながら溜息が漏れた。

死んだ魚のような目で見つめた先には19時を指す時計。

電波時計の針は1秒の間違いもない。それに合わせたように1秒の間違いもなく19時ぴったりに鳴り出したケータイ。



「あー、もう19時なんだ。もう上がってねー」


周りにバレないようにケータイの電源を落とした私は「ちっ」と胸の中で舌打ちをした。

バレないように瞬時に電源を落としたはずなのに、上司の相談員は地獄耳なのか、上がるよう促す。

バレなければ残業できるのに。毎週同じことを繰り返しているが、今まで一度もバレないことはなく、すごすご帰り支度をする。


はぁ、金曜は私にとって地獄が待っている--…


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