もこは料理される。
パチパチと火が弾ける音がする。
身体中が痛い。特に喉とお尻が。
--何でこんなに全身が痛いんだっけ…思い出せない。
まどろみの中、暖かく馴染み深い感触に頬が自然と緩む。
あー、お風呂気持ちいい…
冷え切っていた体を暖かいお湯が包み込む。
疲れ切った手足を伸ばし再び眠りにつく瞬間…
「--うにゃぁ!!」
どんどん熱くなるお湯にまどろみの中にいた意識が一気に覚醒する。
お湯の中で飛び跳ね、またお湯の中に着地し、再び飛び跳ねる。
熱い、熱い、熱いっ!!
思い出した。
この小さい体にフサフサの毛。
今は濡れて長い毛がべったり体にくっついていて気持ちが悪い。
それよりもこの熱湯風呂から抜け出す方が先だ。
鉄製の丸いボウルのような形の入れ物に入ったお湯からは薬品の匂いがする。
何度目かのジャンプで、ボウルがひっくり返り外に投げ出された。
体に感じる芝生の触感に心から安堵のため息が漏れた。
茹で死ぬかと思った…
ぐわん、ぐわんと回転するボウルを憎々しげに見るとそれはまさかの鍋だった。
鍋の横には火のついたままの焚き火。
鍋に焚き火、熱いお湯に入った猫。
薬品の匂いは香辛料だったのだろうか…
まさか食べられる…?
芝生の上で頭を抱える。
早く逃げなくちゃ、ここは危険だ。
雀に襲われて、湖で溺れて、まさかの食料になる。
この世界は私が住んでいた世界とは比べものにならない程危険だ。
震える足で立ち上がる。
早くこの場から離れないと。
一歩、二歩、三歩。
膝が笑いガクッと片膝をつく。
足がうまく動かない…
今までの疲労が溜まりに溜まり、もう体が動かない。
芝生の上へ再び倒れ込んだ私の耳にクスクスと忍笑いが聞こえ、自分以外の存在に危険を察知した体は毛が逆立った。
首をつねられ、地面から離れる体。
首の圧迫と浮遊感に猫掴みをされていることに気付き、足と手をバタつかせ抵抗する。
「まぁまぁ、あなたただの猫ちゃんじゃないのね。」
人間の時より高い視線の先には綺麗なお姉さまがいらっしゃいました。




