もこは後先考えない。
落下の衝撃に備え、体をギュッと抱きしめる。
ザッパーンっと水飛沫が舞い、想像していたよりも体への衝撃が強く息が詰まる。
霧の下に見えたエメラルドグリーンに輝く大きな湖。
水圧での衝撃は強かったが、雀もどきが水面近くまで下降していたおかげか、尻尾を持たれ空中散歩する痛みより優しかった。
「ぎゃぴー、ぎゃぴー」と鳴きながら湖の上を旋回する雀もどきに残念でしたー。と心の中で嘲笑う。
目を開けると透き通った水。
海藻がそよそよと揺れ、苔の生えた岩が所狭しと転がっている。
浮いてくる私を捕まえるために待ち構えているだろう雀もどきを避けるように、水の中を泳いでいこうとして、大切なことを思い出した。
--私、かなづちだ…。
しかも今の私は"猫"だ。これは致命的だ。
人間は火事場の馬鹿力という言葉がある。
かなづちでも切羽詰まった今だと、犬かきでもなんでも潜在能力を発揮できた気がする。
しかし、猫はどうなのたろうか?
犬は泳げるが、猫は泳げるのか?
口を固く閉じ、空気が少しでも漏れないようにするが、小さな鼻から気泡が漏れる。
その鼻を掴もうとしたが、猫の手ではうまく掴めない。
透き通る水に気泡が上へ上へと登って行く。
口の中の空気が少なくなり、残りの空気が鼻から一気に溢れた。
大量の気泡が登って行くところを虚ろな目で見送る。
もう無理だ…
クロールも平泳ぎも、バタフライもやり方を知らなければやってみても水を切るだけで意味がない。
身体中の酸素が足りず、心臓の鼓動が早くなり悲鳴を上げている。
猫で死にたくなかったな…
苦しくて喉を掻き毟る。
足をバタつかせても足は地につくことはない。
--下へ、下へ…
抵抗虚しく深い湖の底へと沈んで行く。
透き通っていた水は深くなるにつれ暗く何も見えない。
このまま寒い底で一人寂しく死ぬんだなと。諦め、暗くなる意識に身を委ねた…
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