もこは痛いの我慢。
--何分空中にいるのか分からない。
わかることは何回か持ち直されたこと。
寒さで体は冷え切りそのおかげで尻尾の激痛は軽減された。
意識朦朧とした中で、何度か上へ投げられ尻尾をキャッチするのを繰り返され、されるがまま身を任せるようになった。
猫で死ぬことを諦めた。
小学生の時から髪の毛をからかわれ、クラスの子に無視され、内気な性格のせいかいじめの対象となっていた私は何度か自殺を考えた。
けれど小心者の私にそんな勇気はなかった。
そして、12歳の時に響が生まれた。
血の繋がった弟は本当に可愛かった。
全く似ていない弟だったけれど、血の繋がりがあるだけで安心できた。
両親は響が生まれた後でも姉弟平等に愛してくれた。
私はこんなところで愛された人に看取られることなく死ぬのは嫌だ。しかも猫のままで。
意識が薄れる中、両手の鋭く尖った爪を体を抱きしめるように両肩に食い込ませ、タイミングを狙っている。
この憎き嘴から逃れるタイミングを。
もう何度目かわからない程雀もどきに持ち直された後、チャンスがやってきた。
少しずつ下降する体。
旋回しながら周りの様子を伺う雀もどき。
巣穴を探しているのか、又は誰かを探しているのかキョロキョロと顔を振るたびに左右に振られる。
地上が近付くにつれ見えてくる霧。
薄い霧は下がるにつれて濃くなっていく。
その霧の先に見えたものに私はチャンスとばかりに両肩に刺していた爪を抜き、その爪を雀もどきに振り上げた。
残った力を振り絞り、体をひねり雀もどきの足の付け根に爪を突き刺さしたのだ。
今まで死んだようにおとなしくしていた獲物が息を吹き返し反撃してきたことで、雀もどきは驚き嘴を離す。
「--にゃーにゃっ」
急降下する猫。
それに追いつこうと急降下する雀もどき。
嘴が何度か体を掠めたが、再び囚われないようにフサフサの尻尾を足の間に挟み、体を丸め耳を後ろに尖らせて伏せた。
そのおかげか、雀もどきの嘴に再び囚われることなく地上に降りることができた。
もちろん、空から落ちたら無傷で済むはずはない。
だからここがチャンスだと思い、実行に移した。




