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悪辣聖女見習いと行く、リリンサの冒険  作者: 青色の鮫
第1章 聖女見習いと盗賊
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第3話「盗賊の悪行」

 

副頭ふくかしらぁ、たまにはボスに差し出す前に、味見しましょうぜぇ!」

「あー。だめだ。ボスの命令でここに来ている以上、適当な事はやれん。重要なヤマだっつてんだろ」


「でもさぁ。俺らに回ってくんのは、壊れかけばかりなんですぜ?副頭はあっちに混ざれるからいいですけどぉ。汚ったねえたら、ありゃしませんぜ!」

「ち。盗賊のくせに綺麗好きか。腕を上げて、金を稼いで、町に行って女でも買うんだな!」



 下卑た格好で、下劣な話に花を咲かせているのは、小汚い盗賊の群れ。

 話題はもっぱら捕らえた令嬢が辿る運命の事、すなわち、これから行われるであろう凌辱についてだ。

 このやり取りは、ある意味で既定路線であり、盗賊達もあえて盛り上げるように話を転がしている。



「お前の粗末な物じゃダメだってよ!」

「うっせえ!俺のはまだ太いだろうが!」


「茹でたソ―セージそっくりだもんな。お・ま・え・の」

「やめろ!ソーセージが食えなくなるだろ!!」


「「ぎゃはははは!」」



 何でこんな馬鹿騒ぎをしているのか。

 盗賊達は、楽しんでいるのだ。


 下劣な話を聞かされ、自分の運命を想像して震え上がっている令嬢の悲壮にくれた表情。

 それは盗賊達にとって、極上の思考品だった。


 壊れる前と後、両方を見比べる事が出来るのは、実働部隊である盗賊達に与えられた数少ないメリットの一つだ。

 だからこそ、盗賊達の下品な笑いは止まらない。

 これから起こるであろうことを、懇切丁寧に令嬢に説明し、逃げようとした所を何度も捕らえる。

 そしてじわじわと心を折られ、やがては、青白くなった顔をうつ向かせながら縄で引かれる家畜へと変わってゆく。


 令嬢は、涙を流しながら、自分の未来から目を背ける。

 この小汚い集団に汚されつくし、最も汚い”モノ”となり果てた自分。

 何度も使われ続け壊された後は、娼館か、谷底か。


 どちらにせよもう二度と、令嬢に戻る事はない。

 夢も希望も無くなったのだと、涙を流すことしか令嬢には出来ない。



「ほぉら、もうすぐアジトにつくぜ。そしたらよ、腹いっぱいご馳走してやるからな。俺達のミ・ル・ク!」

「取れたて新鮮、産地直送だからよ、すぐにお腹がパンパンに膨れちゃうぜ。ぎゃはは!」


「……そうなの?それは楽しみ。牛乳は新鮮な方が美味しい。甘味が違うと思う!」

「甘くはねえだろうなぁ。どっちかって言うと、にが……誰だお前!」



 青い髪のその魔導師は、ごく自然に盗賊達の会話の中に入り込んだ。

 するりと何の違和感を抱かせないまま、突然、湧いて出てきたかのように。



「いやーすまないねぇ。僕のリリンが失礼をしたみたいだ。先に謝っとくよ」

「なに?二人目だと?お前らどこから出てきたんだ?」



 突然現れた二人の少女へ意識を向けながら、盗賊の副頭は声を発した。

 その瞳には、なんだコイツ?という、不思議なものを見るような好奇心を宿している。



「いやいや、僕らは迷子みたいなものさ。放浪の旅を続けているんだけどね、どっちに行ったらいいか分からなくなってしまったんだよ。そんな時に大人の声が聞こえたもんだから、助けて貰いに来たのさ」

「そう。私達は困っている。助けて」



 精錬無垢な幼い顔を二人は副頭に向け、おねだりの眼差しを送る。

 それは、小さな子供がおもちゃを強請ねだる時の仕草にそっくり、いや、リリンサとワルトナの13歳という年齢を考えれば、まさにその物といった感じだ。

 しかし、その内に込められた感情は、盗賊の思っているものと少しだけ違う。

 おもちゃを強請ねだる子供なのではなく、美味しいご飯(オイシイ獲物)強請ゆする子供。


 盗賊は気が付かなかったのだ。

 リリンサが言った『困っている』という言葉の前に、『お金がなくて』という言葉が付くと言う事に。



「あん?面倒だ。何処へでも行きやが……ん?」



 盗賊の副頭がそう言いかけた所で、その目に、とある物が映り込む。

 それは、リリンサとワルトナが持っている、煌びやかな魔法の杖だ。


 物の価値が分からない盗賊などいない。

 一目で二人が持つ杖が凄まじい高級品だという事に気が付いた盗賊の副頭は、そのまま二人の衣服や靴や帽子、僅かについたアクセサリーへと視線を巡らせて、驚く。

 それは全てが、副頭の知る限りの最高品質であり、極上の一品ばかりだったからだ。



「へぇ。嬢ちゃんら、その服や杖はどうしたんだ?」

「これかい?ほとんど、譲って貰った(・・・・・・)品ばかりだねぇ。僕らみたいな、か弱い女の子の二人組だよ?心配してくれる人も多くてさ」


「貰った?そうかい。買ったんじゃねえんだな?」



 頷く二人を見て満足げに笑った盗賊は、これはラッキーだと思った。

 こんな幼い少女が買ったというのであれば、それは何の価値もない模造品か、嘘ということになる。

 前者は強奪しても利益が上がらないし、後者は嘘、つまり盗んだ品だという事で、こんな少女に盗まれるなんて警備も碌にしてない安物となる。


 しかし、それが贈り物となれば話が変わってくる。

 これだけ可愛らしい少女だ。

 親馬鹿が馬鹿高い装備を贈っている可能性は十分にあり、僅かにあった精巧に作られた安物という可能性は潰えた。


 予定外の収入と、子供とはいえ、女が二人。

 ちょっと若いが、入らなかったら捨てちまえばいいと下卑た笑いを副頭は浮かべ、その笑いを見た他の盗賊達の意見は二つに割れた。


 ・ぐへへ、予定外の女だ!味見出来るぜぇ!!

 ・ちょっと待て!副頭ロリコンだったのかよ!!こんな奴に従って大丈夫なのかッ!?


 前者が3人、後者も3人。

 前者は愚者ぐしゃ。後者は、思考の足りない愚か者おろかもの


 どちらにせよ、この瞬間、盗賊達の運命は決まったのだ。

 そして、白い髪の少女ワルトナも、盗賊の意図を理解し幼い笑みを浮かべる。



「ほんとにさー、困ってるんだよ。なにせ、僕の相方は食べキャラなんだ。この細い体のドコに入るのかと不思議になるくらいでね。だから僕らは困ってるんだ。……お金にねぇ」



 そして、精錬無垢を装っていた白い方の少女は豹変した。

 盗賊ですら浮かべない様な、悪辣あくらつな笑みを浮かべて、尊大に笑う。



「利害が一致したみたいだね……盗賊さん。安心して良いよ、僕らはキミ等の汚い体なんかに興味はない。必要なのは、お金になりそうな物だけさ。リリン、蹂躙するよ」

「ほいきた。ブチ転がす!」



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