第5話 狐の町
ナディアは、一人地球本星に呼ばれて、リニアモーターカーから私鉄に乗り換えた。
「辺鄙なところね・・・」
市営稲荷電鉄。
その車窓からの光景は、数百年経って発展したというが、それでも辺鄙だった。
『次は・・・
稲荷町・・・
稲荷町です・・・!』
社内アナウンスに、ナディアは、電車を降りる。
「うおッ!」
目的地・稲荷神社は、眼前にででんと見えた。
駅から、参道大道りで直通・・・
「なんで、神社なのよ・・・
相手は、「神様」だっての!?」
「その通りでございます。」
気が付くと、スーツでサングラスの男と女性が。
しかしながら、特筆すべきはその「狐の耳」と尻尾である。
「地球連合軍少尉ナディア・ハーク様でいらっしゃいますか?
お社様がお待ちです。」
「お・・・お社様ぁッ!?」
「はい。
太陽系戦争で、荒廃した太陽系を経済の力で立て直し、ご先祖様から受け継いだ科学技術を世に広めたお方です。」
「ま・・・
まさか・・・
モノホンの「神様」!?」
「はい。」
黒塗りの豪華な反重力車に乗せられ、通りを走破する。
心なしか、「狐耳」の人々が多いようだ。
「狐に包まれているようだ・・・」
「僭越ながら、「摘ままれる」でございます。」
そうして、長い石段の前に車が停まる。
「この最初の段に立ってください。」
ナディアは、「女性」に言われるままに、石段に乗る。
パコンッ!
男性が、石段の石材を踏んだ。
すると、石段全体がエスカレーターのごとく動き出したではないか!
「なッ!」
「このように、最新技術と昔ながらの情景が調和しております。」
「・・・まさか・・・
神様って・・・」
「はい。
太陽系屈指の大富豪で、科学者でもございます。」