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山道を延々とひたすら車で走っている。
道に迷ったのだ。
「もう、ここどこなの?」
助手席で加代子が豊を攻め立てる。
これで何度目だろうか。
豊かは数える気にもなれなかった。
「じきに広い道に出るよ」
これも何度目かの返答だが、もちろん根拠はなかった。
その時である。
急なカーブを曲がると突然目の前がひらけた。
豊は思わずブレーキを踏んだ。
そこには人工的な土地があった。
よく見ると道はその手前で緩やかに左にカーブしていた。
そこはコンクリートで固めてあり、基礎のような枠組みも見える。
昔、なんだかの建物が建っていたのだろう。
そんな風に豊には見えた。
「何だろうね、ここ」
豊がそう言ったが、返事はなかった。
見れば加代子が胸を押さえて、うめいている。




