堕落
『俺は悔しかった。他の奴との差が大きすぎた。努力すればなんとかなるという話ではない。一度最下層へと堕ちたのだ。もちろんなんとかなる奴もいる。だが、それは極めて一部の人間だ。才能ある奴は堕ちない。もちろん堕ちてから這い上がって活躍しているやつもいる。しかし、基本は堕ちたらそのまま。這い上がったとしても這い上がって終わりだ。つまり何が言いたいかと言うと、ここで堕ちると人生終わりだと言うことだ。お前には俺とは同じ人生を辿って欲しいとは思わない。頼む、堕ちないでくれ。』
これらは私宛の叔父の遺書であった。これを残して行方不明になってしまった。叔父はウラの世界で生きていた。もちろん自ら進んで闇の世界へ行ったわけではない。叔父は高校を中退した。父親が失踪し、母親が働けない環境であるが故、そうする他なかった。しかし、社会は叔父を受け入れなかった。オモテの世界では雇ってくれる場所など無かったのだ。ウラでの仕事は厳しいものであった。叔父はとても心が綺麗であり、悪いことはできない性格であった。彼にはウラの仕事が耐えられないものであったのだろう。それ以来音信不通となり、叔父は行方不明になってしまった。オモテの社会が受け入れてくれたら叔父は今でも元気に働いていただろう。悔しい。そして、この社会が憎い。
こんな社会、無くなってしまえばいいのに。