表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

5

 

 世界樹の周りは木々が生い茂り薄暗く、日光が当たってはいないが、地面には様々な植物が葉を茂らせ生えていた。ここの植物には光合成は必要ないようだ。


 初めて見るものがほとんどなのだが、植物に関してはなんの花だろうと思うだけで、名前と説明が頭に浮かんでくる。これは樹の魔法のおかげだ。

 どれだけ植物鑑定しても魔力が使われている感じが無い。魔法は魔力を使い実行されるはずなのだが。

 魔力自体がどのくらいあって、どうやって使っているのかもよく分からないーー。


「マール、君が魔法を使うとき、魔力は何処から出てくるの?今、樹の魔法で植物を鑑定して歩いてたんだけど、一向に魔力が減った感覚がしないんだよね」


 少し先を行くマールに声をかけ、尋ねると振り返って


『どこから?ーーーーーーーーーどこ?』


 振り向いたまま首を傾げて見上げるマール。尻尾が段々下がっていき、地面に着いた。


『分からない』


「ーーーそっか、鑑定って眼から魔力が出ているのかなって思ったんだけど、どうなんだろうね」


『眼?』


 マールにはなかった発想だったのか、驚いてまた固まっていた。

 眼から見てその情報を知るのだから、眼から魔力を出して、情報とともに戻ってくるのかなと考えたのだが………。ん?情報を得ているのは頭の中なのか?だったら、頭には何処から情報が来ているんだろう?




 しばらく考えた後、こういう時こそ世界樹の記憶から探せばよかったんだと気がついた。





「ーーーなるほど。マール、わかったよ。体の中心から魔力が出てるんだって」


 生き物によって中心は違うのだが、私の場合はヘソの下あたりに、今までに無い何かが留まっている。

 その何かがイコール魔力のようだ。

 その魔力を使って鑑定の魔法を植物自体にかけて、植物の情報を開示させる。開示されたものが頭に浮かぶのだ。


『人間種、何故、知った?』


 片言しか話せないなりになんとか意思を伝えようとするマール。私と話しているうちにしっかりと話せるようになるだろうから、こまめに話し掛けよう。


「マール、私のことは華と呼んで。世界樹の欠片から知識を引き出したの。まだ、少ししか見ていないから、どんな知識があるのか全然分かっていないんだけどね」


『ーーーー華、凄い』


 眼をまん丸にして見上げるマールを思わず撫でようと手を動かしたら、ピクリとマールが動いた。起きている時に撫でるのはまだ早いようだ。諦めてしゃがみ込み、マールに視線を合わせる。


「ありがとう。でも、凄いのは世界樹だから、私は知識を借りただけだよ」


『世界樹、凄い。悪い(しゅ)は欠片、貰わない」


 ーー世界樹は、悪い種族、個人も含むのかな、それらには欠片を渡さないってことかな。



 その後マールとポツポツ話しながら歩き、しばらくして大きな泉についた。


 とても澄んだ泉で、砂の溜まった水底がときおり隆起し、水が滲み出でいる。

 対岸は遠く、四つ足の角がある生き物が水を飲んでいるのが小さく見える。

 ギリギリ世界樹の結界に囲まれているので、他の生き物を害することは出来ない。

 肉食獣も草食獣も、種族を超えて集まる水場だった。


 水を飲みに淵まで行くと、水面が鏡のように私を映し出した。


 うん、あまり変わりはないようだ。

 この世界では、魔力の種類によって見た目が違う。雷のマールは金色が濃い茶色の毛。火なら赤みが強い瞳だったりする。

 数種類持っていると、一番適性のある魔法の色を持つ。


 私の今の見た目はほぼ黒い。

 変わったのは、

 日光が当たると金粉をまいたように、一本ずつがキラキラ光る黒髪。

 こちらも、光が当たると深い緑色に輝く黒い瞳。

 思っていたよりは変化がなくて安心する。

 他の世界樹の欠片をもらった種族は、貰った瞬間に鮮やかな翡翠色の髪に変わったそうだ。

 鮮やかな色の髪や瞳になっていたら、慣れるのが大変そうだと思っていたから。




 背負ったリュックを下ろして、水筒とペットボトルに水を汲んで、お弁当箱も洗っておく。

 マールも隣で水を飲んで、満足したのか毛繕いを始めた。

 私も隣に座り、マールを見つめる。


 熱心にしていた毛繕いが終わると、マールは遠くを見つめながら動かなくなった。


「マール」


 小さな声で名を呼ぶと、ゆっくりこちらを向き、視線を合わせた。


「これから、君は何をしたい?」


 復讐か。

 贖罪か。

 どちらにせよ、マールが納得出来るまで付き合おう。

 もちろん、無謀なことをしようとしたなら止める。

 私の中でマールは、すでに大きな存在になっている。

大事な契約者であり、大事なもふもふであり、大事な、大事な子だ。この世界では唯一の繋がりでもある。ーー失いたくない。


『強く、なる』




「…………強く」




 予想を裏切られた。


 凄い。

私の想像の斜め上を行ったマール。


『世界樹、我に見せる。憎い、人間種死んだ。父さま母さま殺した王も、死ぬ』


 世界樹がマールにもあの後の映像を見せたのか。


『強くなる。………もう、負けない』


 無理しても前を向き始めたマール。


 全力で応援しよう。

 そして、一緒に私も強く、マールを守れるくらい強くなる。

 

そのためには、





「まずはーーーーご飯、食べようか」






読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ