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母が死んで初太郎の瞳からは光が消えた。


食が細り、顔色も悪くなった。何を話しかけてもろくろく返事もせずに下を向いている。


男は、そんな跡継ぎを心配しては、高価なギヤマンの細工物や珍しい姿をした金魚等、様々な品を与えてみた。それでも跡継ぎは暗い顔をしたまま。男は苛立ちを覚えた。




表からどたどたと足音が近づいてくる。番頭がすさまじい速さで走ってきた。


「旦那様、旦那様! 大変でございます。船が、舶来の荷をつんだ船が全て嵐で沈んだとの報せがただいま!」


舶来の荷が、大量の玳瑁や象牙や珊瑚や香木・・・・・・あれが全て海の底に沈んだだと?


男は目の前が真っ暗になった気がした。


それからは目の回る忙しさだった。一気に店の雲行きが怪しくなり、使用人も辞めていく。その中でなんとか体面を保つのは大変なことだった。










初太郎は一人、中庭を歩いていた。中央には大きな池がある。


初太郎は昔母と鯉に餌をやった池の縁にしゃがみこみ、呟いた。


「おっかさん・・・・・・なんでいなくなっちゃったの?会いたいよ・・・・・・」


初太郎の目からしずくがこぼれ落ち、水鏡を揺らした。


揺らめきがおさまったそこには、母の面が映った。初太郎は息をのんだ。


「あっ、おっかさんだ!ねぇ、おっかさん・・・・・・どこ行ってたの?初は寂しかったよ。

おとっつぁんもお店の人も初が話しかけると『静かにして奥に行ってなさい』って言うの・・・・・・。

おとっつぁんは『これは珍しいものなんだ。高かったんだぞ』っていろいろくれたんだよ。でも遊んでくれないし、お話もしてくれないの。

おっかさんがいたらこんな寂しいことなかったのにな」


ぽとりと涙がこぼれ落ち、瞬く間に母の姿は掻き消えた。


「おっかさん、初を置いてどこ行っちゃったの?初もおっかさんの所へ行きたいよう」



水鏡には一人涙をぬぐう初太郎と、松の幹で足をぶらつかせながら笑みを浮かべる土人形が映りこんでいた。

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