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姫は勇者で魔法使い。  作者: 不忍唐傘
第二章 【姫も歩けば危険にあたる】
23/26

#8

「しょうがないのぅ……。 今日はクロヌと寝るのじゃ」


妾がそう宣言すると、ミコガミが飲んでいたコーンポタージュを思い切り吹き出した。

それを見ていたクロヌが汚い、と一蹴し、短い文言を唱えて魔術を発動する。

それと同時にミコガミが吹き出したコンポタージュは最初から無かったかのように跡形もなく蒸発しきっていた。


「早まっちゃダメだぜ、まだ青春は長いぜ!」


ミコガミが妾の手を握って、熱弁する。

大きな声に反射的にビクッと飛び跳ねてしまった。


「クロヌはもう二十四歳とかいういい歳のおっさんだし、婚約者だっているんだぜ!?」

「ど、どうしたのじゃ?」


敵に出会ったわけでもないのに、何故かパニックを起こしているらしいミコガミが今度は妾の肩を掴み、思い切り前後に揺らす。

本人は手加減しているつもりなのだろうが、パニックに陥り、まともに思考が働いてないからかあまり加減できていない。


「落ち着け」


見かねたクロヌがミコガミの腕を掴んで、妾から引き剥がす。

引き剥がされた際に、ミコガミが「ぐふっ」と言う声を上げたのが少しばかり心配だ。


「離せ、このロリコン!」


腕では掴みづらいと思ったのか、クロヌは襟首に持ち替えて、右の手だけで軽々とミコガミを持ち上げた。

そして、地面から足が離れてもジタバタと暴れているミコガミだが、腹に一発、クロヌの膝蹴りをくらった瞬間に大人しくなった。

クロヌも加減しているのか怪しいところだが、本気で蹴ったら、ミコガミの内臓が破裂しかねない威力があるはず故、恐らく大丈夫なのだろう。

…………恐らくだが。


「……ニナルヴァにチクってもいいのか?」


涙目のミコガミが最後にして最強の札を切る。

ニナルヴァ殿は健康的な褐色の肌と薄い緑色の髪の毛が特徴的な豪胆な女性で、クロヌの許嫁にして最大の天敵である。

今は引退して、フリーで何でも屋のようなことをしているのだが、元々は騎士団の隊員だったのだ。

小さい頃から遭遇する度に追いかけ回された記憶が印象に強すぎて、それ以外の記憶があまり残っていないが、恐らくなんだかんだで優しい人なのだとは思う。


「言っても構わないが、言ったらお前の飯は無くなるぞ」


そうは言っているものの、実質的には言うな、と同じだ。

最初から選択肢は一つしか用意されていないらしい。


しかし、ミコガミは虚空に人差し指で十字を描いて、携帯通信機を開き、電話帳を開いて通信を始める。


「……もしもし、ニナルヴァか?」


どうやらご飯なしを覚悟でニナルヴァ殿に連絡を入れることに決めたようだ。

通信機の先にいるニナルヴァ殿の声もうっすらと聞こえてくる。


「あのな、クロヌがッ」


そこまで言ったところで、クロヌがミコガミの腰の辺りを狙い、回し蹴りをいれる。

あまり警戒していなかったこともあって、受け身さえまともにとれなかったミコガミはあっさりと前のめりに倒れた。


通信機の先からはニナルヴァ殿の「大丈夫!?」などという声が聞こえてくる。

放っておくとニナルヴァ殿が【転移(テレポート)】を使って様子を見に来てくれてしまうことを考慮して、クロヌは即座にその通信口に向かって、「大丈夫だ、じゃあ」と言って、電源自体を切る。

妾の目から見ても、生きてはいるものの大丈夫じゃないとは思う。


一応、うつ伏せに転がっているミコガミの肩を軽く叩きながら、彼の名前を呼んでみる。

いつもなら、手を上げたり、なにかしらの手段を使って無事を伝えてくれるのだが、今回は微動だにしない。


「クロヌ、ミコガミが起きないのじゃー!」


妾がミコガミをこんな風にした犯人であるクロヌに泣きつくと、彼は一瞬逡巡してから、うつ伏せのミコガミの身体に足を乗せる。

まさか、と思った時には既に遅く、ミコガミの背中からミシミシと骨が軋む音が響いた。


同時に、ミコガミの口から悲鳴と嗚咽が漏れ、目からは涙が溢れ出る。

必死に助けを求める手が空をきる。


「何をしておるのじゃ、クロヌ!」


変なスイッチが入ってしまっていた場合、声だけではまともに届かないかもしれないかもしれないため、そう言い終えてから、すぐにクロヌに妾の今出せる最大限の力がこもったタックルをくらわせる。


「少し黙っていてくれ」


そう言って、クロヌが妾を制す。

しかし、足の力は少しも抜いていないようで、足の下でミコガミがもがき苦しむ。


「遠征に行かずに済んだ上に、サフィールとしばらく一緒にいられるからといって浮かれるな。 殺すぞ」


冷たく光る銀色の瞳がミコガミを射抜く。


妾は何の気なしに言ったつもりだったのに、ミコガミの勘違いから大変な騒ぎにまで発展してしまった。


「ミ、ミコガミ……」


今の今まで死の危険にさらされていたミコガミに抱きつく。

近くに寄って、彼の身体に耳をあてると浅い呼吸と鼓動が確かに聞こえる。


妾がミコガミの無事を確認してから、気付けの意味も込めて、ギュッと抱きしめると、彼がこちらに顔を向けて静かに笑った。


「……クロヌが本気出してたら、最低でも失神してると思うんだけど。 もしかして、手加減した?」


さっきまで死にかけていたミコガミが冷静な自己分析をしてみせる。

魔術を使って、治癒能力強化はしているのだろうが、それにしてもかなり早い復活だ。

もしかすると、本当に彼が言っていた通り、クロヌは失神するか否かのギリギリのラインを見極めてやったのかもしれない。

何にしろ、やりすぎだったことには変わりないが。


「そんなはずはない。 ちゃんと失神させるつもりでいた。 俺はミコガミの鍛練の結果だと考えていたのだが」


クロヌが答える。

さらっと味方を失神させようとしていた点にも疑問を感じずにはいられないが、クロヌが意図していないのに、威力が落ちた、というのも不思議に思う。


本日二度目のまじめな推測のせいで、思考回路がショートしそうな脳が珍しく早く回転する。

そのせいか、感覚も研ぎ澄まされてきた……気がする。



そんな真面目なようでふざけたことを考えつつ、さっきミコガミに対してあまりにやりすぎだった罰という名目で彼を困らせる――もといいたずらを仕掛けてみる。

クロヌにしゃがめ、という意志を込めて、手を下に振る。

それに気づいたクロヌがバカ正直にしゃがんで、敵がいないか真剣に周りを見渡す。


まだ地面に寝転がっているミコガミは妾の意図に気づいているようだから、口元で人差し指を立てて、黙っていてくれ、とジェスチャーをして伝える。

ミコガミはそれに口パクで「分かった」と答えてくれた。

更新が物凄い留まってしまってしまっていて申し訳ない限りです・・・(´・ω・`)

更新がのっそりしている理由は活動記録の方に改めて書かせていただきます

とりあえず、3話だけは何とか書けたので、この一週間でそれは放出する予定です(´・ω・`)

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