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姫は勇者で魔法使い。  作者: 不忍唐傘
第二章 【姫も歩けば危険にあたる】
22/26

#7

「兄様、マズいことに感づかれました」

「何かあったの?」


十分間探し続けて、やっと見つけた兄様は返事こそ返してくれたものの、後ろにいるリヤンに気がつき、今まで目を落としていた本から目を離した。

大事なことだというのは分かっただろうに、俺の話を聞いてくれる気はないらしい。


「身体は?」


リヤンの方は何故かチラチラと俺の方を見て、兄様へ返答する。


「えっと、だいぶ落ち着きました。 あの、あと、僕、お金持ってない……です」


最終的に面と向かって堂々と向き合う勇気は湧かなかったようで、俺の後ろから身体半分だけを覗かせた。

枢も俺に怒られそうな時は兄様や相斗の後ろに隠れて、今のリヤンのようにしているのだが、向こうはまだ多少なりとも可愛らしさがあるからかろうじて許せる。

しかし、リヤンは可愛くない。


本心では今すぐに振り払って兄様との会話を元の話題に戻したい、という気持ちでいっぱいだが、暴力沙汰を枢が見ると泣き出す恐れがあるため、その気持ちを押さえ込み我慢する。

今この場にはいないものの枢はかなりをつけて神出鬼没故に、リヤンを殴った後、後ろを見たら大泣きしている要がいた、なんていう事態になりかねない。

別に枢が泣き出すこと自体に問題はないが、そうなるとチビの涙を止めるべく兄様や翔が付きっきりで慰めなくてはいけなくなる。

つまり、事後処理が非常に大変なのだ。


「ふーん。 晩ご飯は食べられる?」


兄様がリヤンの目を見て問いかける。

正直言うと、兄様が身内でもないのに、こんなに話しかけてくれるだなんて羨ましくて仕方がない。


「食べられる……と思います」


おどおどとした態度でリヤンが兄様に返事をする。

聞いた話によると、もともと身体が弱かったリヤンを溺愛している弟がかなり過保護にしてしまっているらしく、常におかゆ、ご飯のおかずも魚や味付けの薄い野菜ばかりという偏った食生活だったらしい。

弟の言いたいことは分かるが、それでもただの偏食になっている以上、褒められたことではない。


「そう。 時間が時間だし、晩ご飯食べてくでしょ? 家はどこ? 場所次第では送るけど」

「……兄様、ご病気ですか?」


いつも身内以外には非常に厳しい態度を取る兄様のリヤンに対しての対応を見て、思わず口から本音が漏れた。

兄様はあからさまに嫌そうな表情で俺を一別した後に、すぐリヤンに視線を戻す。

相変わらず俺の陰に隠れたままではあるが、兄様の対応を見て安心したのか少しばかり俺のワイシャツを掴んでいる手の力が緩む。

そもそも、この家の中にこんなひ弱な人間が一人でいる時点で危険極まりない行為なわけだが。


「住んでるのはエキャルラット王国なん……ですけど」

「え、国外なのか?」


リヤンが話し始めると、最初からいたのか途中から入ってきたのかいつの間にやら翔がいた。

兄様がノーリアクションだということを考えると恐らく最初からいたのだろう。


「はい。 現住所もエキャルラット王国内……ですよ」


俺と枢は彼がエキャルラット王国に住んでいることを知っているが、他の人は知らなかったらしい。

リヤンはずっと俺といたわけだから、当たり前のことになるが。


「エキャルラット王国かぁ……」


兄様が苦い表情を浮かべる。

自分で見ると分からないが、恐らく俺も兄様と同じような表情をしているに違いない。

なんと言っても今、エキャルラット王国には俺や兄様、いや、この家にいる人間が一番憎むべき奴がいるのだから。


―*―*―*―*―*―


『シャルロット様? いらっしゃいますか?』


夜中だというのに、扉の外から彼女を呼ぶ声が聞こえた。

彼女は僕の頭を軽く撫でて、僕が布団の中に頭からつま先まで隠れたのを確認してから、ゆっくりと立ち上がり、扉を開けた。


「何よ、ちゃんと部屋にいるわ」


彼女が開けた扉の外にいたのは燕尾服を着た薄い水色の髪の執事だった。

この執事は国外から『買ってきた』人間で、シャルロットと関係を持っていない数少ない男なのだが、男の僕が言うのもなんだがなかなかカッコいい。

普通の男が言うのと、バイセクシャルの僕が言うのとでは言葉の取られかたはだいぶ異なりそうなものではあるが。


「それならば結構です。 また駆け落ちなんていう真似をされたら困りますから」


執事が平坦な口調でシャルロットに告げる。

前にシャルロットが執事――正しくはシャルロットのための逆ハーレム集団なのだが、その内の一人と駆け落ちをしようとしたとかでそれ以来、常に一時間に一回は循環するようになったらしい。

もちろん、見回りをしていた執事と一緒に駆け落ちやら職務を放棄してベッドへ行ってしまう可能性も考慮し、さっきの執事のように(なび)きづらそうな人を多く採用している。

ただし、さっきの奴はシャルロットの子供ではない数少ない二人のうちの一人、サフィールに妙なまでに肩入れしている。

僕の目から見ても彼はロリコンなのではないかと思うくらいだ。

確かにサフィールは天真爛漫で可愛いと思うが、僕はあの子を夜伽の相手に出来る気はしない。

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