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姫は勇者で魔法使い。  作者: 不忍唐傘
第二章 【姫も歩けば危険にあたる】
19/26

#4

「もしもし、クロヌですか?」

『そうだが』


キョウコとかいうミコガミの妹に「誰かに連絡をいれてみろ」と言われたから、言われるがままアドレス帳の一番最初に出てきたクロヌに電話をかけてみる。

一番最初が「ク」と言うのも少し寂しい気もするが、僕は兄さんがいれば大丈夫だし問題ない。


「そちらにリヤン兄さんはいますか?」


悪い返答が返ってきやしないか怯えながら、恐る恐る問いかけてみる。


『何を言っている。 いるわけないだろう』


クロヌが不思議そうに言った。

その瞬間、ガシャンという固い地面に金属の塊が落ちたような音が静かな辺りに響き渡った。


「え……あ……じゃあ、兄さんはどこに?」


取り落とした携帯を拾って、再びそれを耳に当てる。

向こう側からクロヌの声が聞こえてくるのだが、内容が全く頭に入らない。


『おい、大丈夫か?』


携帯からクロヌの声が流れ続けてくる。

何も言わない僕を見かねてかキョウコが僕の携帯を引ったくり、応答を始めた。


「全然大丈夫じゃないッス。 リヤンにぃがいなくなったとかで、さっきからずっと我が家の前で泣いてるんッスよ」


十四歳の女の子が二十一歳の僕よりもしっかりとした対応をしてみせる。

姫様にこの体たらくがバレたら、クビにされる確率だってゼロではないだろう。


「いないッス。 というか、リヤンにぃは私たちの家によく来るからよくフラフラ出歩いてる、って勘違いされんスけど、我が家とリヤンにぃの家を行き来する以外の外出なんて滅多にしないんッス」


キョウコがクロヌにそう告げる。

このガキ、兄さんの何を知った上でそんなことを言っているのだろうか。


既に調べたが、兄さんはそれ以外にも綺麗なコスモス園とバラ園がある公園にもフラフラとよく出歩いて行ってしまう。

特に十月辺りはバラとコスモス両方が見頃になるということもあって、毎日のように出かけていって、ゆっくり休んでくれない。

兄さんはゆっくり休むのが仕事なのに。


―*―*―*―*―*―


「こら、入っちゃダメって言ってるじゃないか」


くまのぬいぐるみを抱えたまま、どうやってドアノブを開けるかを試行錯誤している枢に声をかける。

そのドアの先の部屋には会う度に枢に餌付けするモアクと彼が拾ってきた突然倒れたという病人がいるから、枢が騒いだら身体に毒だろうということで、中に入れないようにと彼の父親である翔に言われている。


せっかく、久しぶりに他の二人の子供に会えたというのに、二人して翔のことを拒絶するわ罵倒するわで、翔の方は今、泣き寝入りしている。

枢はその布団に入りこんで一緒に寝ようとしていたのだが、泣いているのを見られたくなかったようで、翔は彼を僕たちに預けた。


『だって、ボクも一緒に遊びたいんだもん』


枢がホワイトボードにそう書いて、訴えかけてきた。

枢も翔も寂しがり屋さんだから定期的に構ってあげないと爆発してしまうのだが、困ったことにこの家族はだいたいみんな同じような状態であるために、毎日誰かしらが爆発している。

逆に構ってあげなくても特に何も起こらないのはモアクくらいなものだ。


『リヤンお兄ちゃんは遊んでくれる、って言ってたよ』


枢が今にも泣き出しそうな表情でプルプルと震えながら、ホワイトボードに必死に文字を刻む。

この子はリップサービスという言葉を知らないらしい。

見た目こそ育っていないものの、実年齢は既に人間の寿命を飛び越えているというのに、幼い子供のように純粋なままだし。


「でも、具合が悪い人に無理させちゃダメだし……」


子供の夢をぶち壊しにかかるのはさすがにはばかられるので、遠まわしに「やめろ」と伝える。


『嫌だ、遊ぶんだもん!』


泣いている顔文字付きでそう書き残して、ホワイトボードがついたくまのぬいぐるみを左手で抱えたまま、右手でドアノブを回し、パタパタという床と素足がぶつかり合う音をたてて、枢がリヤンという名の病人と翔や忍さんの異母兄弟であるモアクがいる部屋へ突入していった。


さすがに放置しておくにはいかないから、枢に続いて部屋に入る。

「何故、この部屋に枢が?」と刺すような尖った声色でモアクが問いかけてきたが、スルーしてベッドの上によじ登ってリヤンに頬ずりしている枢を引き剥がす。

しかし、枢はリヤンにひしとしがみつき、頑なに離れない。


リヤンという男が病人のフリをしてこの家に忍び込み、「××」を持つ枢をさらいにきたどこかの国の特殊部隊の人間だったらどうしよう、という発想はないらしい。

枢は「××」を持っている関係で、桁違いの「魔力」を持つ僕や翔よりも遥かに狙われやすいのだ。


僕達であればある程度加減が出来るが、枢はとっさに加減が出来るような生半可な力ではない。

枢をさらいに来た奴を消してしまうともみ消すのはちょっと面倒だし、出来れば、口を効けない状態にして送り返すという手段を取りたい。


まぁ、そのために、わざわざリヤンの監視にモアクを置いているのだが。

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