表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姫は勇者で魔法使い。  作者: 不忍唐傘
第二章 【姫も歩けば危険にあたる】
17/26

#2

「ここら辺で合ってるはずだぜ」


地図と周りの景色を照合しつつ、ミコガミが言った。


「うむ、案外近かったのぅ」


あの屋台があった商店街から目的地まで徒歩40分強でついてしまった。

商店街までが遠かったため、まだ距離があるのか、と弱気になっていたのだが拍子抜けしてしまった。

それでも、普段歩かないような距離を歩かされたが。


「地図を見る限り、森の中にあるのだが」


地図をチラッと覗いたクロヌが、目の前にそびえ立っているうっそうとした森を見やる。

今は本当に目の前にあるから、森にしか見えないが、商店街の方からこちらを見た時にはこの辺りに大量の木々がわさわさと生えている比較的低めの山が見えた。

――――つまり、これは森ではなく山なのだ。


「……登るのか?」

「……登らざるを得ない」


茫然としている妾の問いかけに、珍しく少しショックを受けているクロヌが答えた。

こういう険しい道無き道を通るとなれば、十中八九クロヌは妾をおぶって歩くことになる。

例え、猛獣やら山賊に襲われ戦闘になったとしても、妾を守りながら戦わなければならない、という大きなハンデを背負うことになる。


―*―*―*―*―*―


しばらく軍服姿の人と話していると、扉の隙間から十歳程度の小さな男の子がもじもじしながらこちらを見ていた。

どうやら、知らない人である僕が気になるけれど、部屋に入って良いのか、ということを判断しあぐねているらしい。


おいで、と手招きをしてみると、パアッと表情(かお)を輝かせてパタパタと駆け寄ってきた。

青色の髪をしている僕が言うのもなんだが、このちびっ子の紫色の髪というのは特殊で特徴的だ。


まわりに特殊な髪色の人が多いため、感覚が麻痺し気味だが、クロヌくんの銀髪も特殊であり、僕の青色の髪も特殊だったりする。

ヒジリくんもそうなのかと思っていたのだが、彼は単純に色素が薄いだけらしい。

目の色は小さい頃に魔術で変えたと言っていたし、多分、特殊ではあるが、僕やクロヌくんとは違うものなのだろう。


『お兄ちゃん、誰?』


その男の子が両手に抱えている大きなくまのぬいぐるみのホワイトボードにそう書いた。

どうやら、この子は口が利けないらしい。

風邪でもひいたのだろうか。


「僕はリヤン・ヴェリテ言うんや」


小さな男の子に向かって答えると、男の子が再びホワイトボードに字を書き始める。

書き慣れているからなのか、書くスピードが非常に早い。


『リヤンお兄ちゃんはどこから来たの?』

「訛りが気になるのか?」


ちびっ子の質問を見たベッドの横で足を組んで座っている軍服姿の彼が問うた。


それにしても、こんな弟がいる生活もいいかもしれない。

オルドルみたいに出来た弟もいいけれど、こんなに小さな子だったらもっと愛情を注いで育てられる気がする。


小さな男の子がくまのぬいぐるみを抱きしめたまま、頷いた。


「僕はね、エキャルラット王国から来たんやけど、エキャルラット王国でも公用語を使う地域の生まれやないから、どうしても訛ってしもうて」


小さな男の子と軍服姿の人に答える。

一時期、オルドルの真似をして訛りを直そうとしたことがあり、その時に中途半端にしゃべることが出来るようになってしまったがために、エセ関西弁が通常のしゃべり方になってしまった。

それでも、クロヌくん達が言うには訛りが強い方だ、と言われたが。


「今時訛りがある地域なんてあるのか……。 レアだから、下手に直さない方がいいぞ」


軍服姿の人がそう言った。

そして、指先が出た半手袋をつけた右手で隣の小さな男の子にポケットから取り出したお菓子を与える。

すると、男の子はとても嬉しそうにそれを受け取り、くまのぬいぐるみとお菓子を持ってどこかに走り去っていった。

お菓子で買収されてしまうくらい純粋で幼い子のようだ。


「うるさくて悪いな。 基本的にここの家族はみんなうるさいから気をつけろよ」


軍服姿の人がさっき小さな男の子にあげていたのと同じお菓子を僕にもくれた。

袋を開けずに中身を覗いてみると小袋の中にはピンク、黄色、黄緑、白のカラフルで半透明な金平糖が入っていた。


「枢用だが、一個やる」


軍服姿の人がそう言うので、お礼を言ってありがたく受け取っておく。

金平糖って、砂糖や塩、それからスパイスの類が少ないエキャルラット王国ではとんでもない高級品なのだが、日本ではそうでもないのだろうか。

ヒジリくんの家もなんでかやたらと香辛料類がたくさんあったし。


「ありがとうございます」


姫様たちと合流すりにしても僕が国に帰るにしてもオルドルがうるさいから、いない内に食べてしまおう。

砂糖の塊なのだから当たり前だが甘くて美味しい。

見た目は刺々しくてすごく固そうだが、噛んでみると存外サクッとしていた。


「エキャルラット王国は外交面に問題があるから、今、砂糖とか高いのだろう?」


軍服姿の人が金平糖を頬張っている僕にそう尋ねてきた。

確かにエキャルラット王国は先々代辺りから外交で失敗し続け、他国から冷遇を受けているために段々と経済的に苦しくなってきている。

次に何かやらかした時には一番良くても経済制裁という措置が取られるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ