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姫は勇者で魔法使い。  作者: 不忍唐傘
第一章 【姫と愉快な仲間たち】
10/26

#10

「ありがとう! いつもは君の妹が届けてくれてたから、会うのは久しぶりやね。 これからもオルドルと仲良くしてやってね」


ヒジリくんから大量の梅干しがつまった瓶を受け取る。

僕はしょっぱいもの――特に梅干しが大好きなのだが、普通に食べようとすると「身体に悪いから」と言って、オルドルに没収されるから、こうしてミコガミ家から秘密裏にもらっているのだ。

前にヒジリくんの妹であるモモちゃんとキョウコちゃんにこっそり家を見せてもらった時に、彼らのお母さんとおばあちゃんが楽しそうに漬け物をつけている姿を見せてもらったりもしたのだが、その時にモモちゃんが、「需要と供給がずれてるから、もらって帰ってくれると嬉しい」と言われたから、それ以来ちょくちょく色々なものをもらっている。


漬けている本人達も作りすぎているコトを分かっているようで、オルドルにバレないように遊びに行くと、必ずキュウリとかナスとか大根とかバラエティー豊かな漬け物を分けてくれる。

「挑戦してみたから味見してみて」と言って渡された、キムチという辛い漬け物も美味しかった。

アレもまた食べたいなぁ。


「いや、むしろいつもモモ達と遊んでくれてることに感謝してるぜ。 あと、ウチの強制お土産は嫌だったら断ってもいいんだぜ? 甘納豆とか日本人以外にはあんまり美味しくないんじゃないか?」


ヒジリくんは僕が甘納豆を普通に食べてることを不思議そうに思っているらしい。

少し癖があるから、嫌いな人は嫌いかもしれないが、普通に美味しいものだと思う。


そうだ、日本といえば――


「ヒジリくん、姫様と知り合いなんだよね?」


甘納豆や漬け物累々の話は一旦おいておき、さっきのメモの話に戻す。

どう考えたって漬け物より姫様からのメッセージの方が大事だ。

漬け物も美味しいけどね。


「姫とは友達なんだぜ」


ミコガミが胸を張って誇らしげにそう言った。

さっき始めて本物を見た――いや、姿を見たばかりだから的確かどうか分からないけれど、姫様とヒジリくんは動作が少し似ている。

なんというか……子供が背伸びした感じが。


「あの……今から書く手紙を渡すのを頼んでもいい?」


―*―*―*―*―*―


「姫様、なんで兄に接触しようとしたんですか?」

「いや、汝の兄上も連れて行けば、万事解決かなぁ、と思って」


オルドルからサフィールが見つかった、という知らせがあったから戻ってきてみたら、案の定、サフィールが説教をくらっていた。

予想していた通りすぎて、逆にどうしたらいいか分からない。


とりあえず、ちょっと遠くの椅子に座って、サフィールが説教されている姿を見守ることに決めた。

助け舟を出したら、サフィールは反省しないだろうしな。


-*-*-*-*-*-


「姫ー、リヤンからだぜ」


夜、寝ようと思い、ベッドに入ろうとしたトコロ、天井から吊り下がっているミコガミが一通の手紙をこちらに寄越してきた。

ミコガミは当たり前のように妾の寝室に入ってきた挙げ句、最初からここにいました、と言わんばかりの表情で天井からぶら下がった状態になっている。


ビックリするくらいに常識的なところが窺えない。


「う、うむ。 確かに手紙は受け取ったのじゃ」

「まぁ、すぐに没収しますけどね」


ミコガミから手紙を受け取った次の瞬間、横からオルドルがそれを掠めとった。


「律儀な兄が手紙類を返さない訳がありませんからね。 やはり、見張っていて正解でした。 ミコガミは今晩、私と一緒に寝ましょうか」

「ッ!?」

「はいはい、可愛がってあげますからねー」


必死に抵抗しているミコガミを引きずりながら歩き去っていくオルドルを黙って見送り、しばらく経ってから布団から出る。

妾がそんな簡単に引き下がるわけがないのだ。


「姫様も私と寝たいのですか?」


扉を開けると、満面の笑みをたたえたオルドルが待ちかまえていた。

ダメだ、妾の行動は読まれている……!


―*―*―*―*―*―


「おかえり、オルド……なんでヒジリくんを連れてきちゃったん?」


日にちが変わったばかりの時間になってようやくオルドルが帰ってきた。

いつもよりも1時間以上も早く帰ってきてきてくれたのは嬉しいのだが、何故かヒジリくんと手を繋いで来た。

仲が良いようで嬉しいのだが、こんな遅くまで連れまわした挙げ句、泊めるというのは如何なものだろうか。


「今日はミコガミと一緒に一夜を過ごすんです」


オルドルがこれ以上ないくらいに輝かんばかりの笑みを浮かべて、爆弾発言をかました。

良くない、これは倫理的に良くない……!!


「ダメ! ヒジリくんをお家に帰してきなさい!」


オルドルのことは割と甘やかしてきてしまったつもりだが、ここぞという時には叱らないといけないと思う。

今回のこれは、ヒジリくんにも迷惑がかかってるし、尚更叱ってあげなくちゃいけない。


「リヤンもそう言ってるし、オレは帰……」

「そうはさせませんよ」


踵を返そうとしたヒジリくんの腕をオルドルが掴み、引き戻す。


「危なっ……!」


引き戻された際にバランスを崩したヒジリくんをオルドルが受け止める。

まぁ、オルドルが彼の腕を引かなければ、そもそも転ぶことは無かったわけだし、功績とは言い難いが、とにかくヒジリくんが無傷で良かった。


「兄さんが一緒に寝てくれるなら、ミコガミを帰してあげても……」


腕の中にあからさまに嫌そうな表情で暴れているヒジリくんを抱えているオルドルが何故か顔を赤らめてそう言った。

きっと、ヒジリくんが見ているこっちが想像しているよりも激しく抵抗しているから、押さえつけるために結構強い力を有しているのだろう。


「お風呂出るまで待ってるよ」

「ミコガミ、今日は特別に見逃してあげます」


そう言って、オルドルがヒジリくんを解放する。

あの言葉だけでも、オルドルは僕が言いたいことを分かってくれたようだ。

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