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恋を感じるとき  作者: 柏木杏花
柚希
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第四話    廊下 違うと思うけど、そうかもしれない。


 部員に挨拶をして、部室を後にした。亜衣と一緒に廊下を歩く。校舎は静かだった。窓の外から歓声がかすかに届く。運動部がまだ残っているようだった。

「なんか、挙動不審だね」

 亜衣の指摘に、柚希は俯いた。

「碧先輩が来てから」

「うん……、そうかも。わかりやすかった?」

「他の人は、気づいてないよ、きっと。碧先輩と暗室に入るの、躊躇ったでしょ」

「同性で入る決まりだっていわれたから」

「柚希は女だよ」

「そうだけど……」

 相手が自分の状況を知っていて平気だといってくれれば、問題はない。けれど、女だと思われているのに、騙しているみたいで心苦しかった。

「写真部の人たち、いい人ばっかりじゃない。みんなが嫌なら、松浦さんと碧先輩だけにでも、本当のこと、告白しといたら? なんかあったときフォローしてもらえて、楽になるよ」

「うん、そうだよね。でも…」

 カミングアウトが怖いと思ったことは、今までなかった。気持ち悪いと思われても、軽蔑されてもしかたないと思っていたし、相手が自分をどう思おうと、気にしたこともなかった。軽蔑される自分のことも、どうでもよかった。

 けれど、碧に本当のことを告げたら、どう思われるのか、怖くてしかたがない。

 いまは、顔の綺麗な後輩と認識されている。『瀬戸さんはちょっと、そそられる』程度には、興味を持ってもらえている。

 柚希が女装をしていると知ったら、あの穏やかで優しい笑顔はどう変わってしまうのだろう。

「ねえ、柚希……」

「なに?」

「薬、ちゃんと飲んでる?」

 薬とは、女性ホルモン剤のことだ。

「飲んでるよ」

「いままで一度も、男に恋愛感情、持ったことない?」

「ないよ、知ってるでしょ」

「『あの後』も?」

「…ないよ」

「碧先輩のこと、意識してる?」

「………うん、たぶん」

 亜衣には、取り繕ったりごまかしたりできなかった。亜衣は特別な友人だった。亜衣に言葉を返していくうちに、自分の気持ちを整理する道筋を作れるような気がした。

「恋愛感情?」

「どうかな。違うと思うけど、そうかもしれない。よくわからない」

 正直な気持ちだった。

「ごめん」

 突然亜衣に謝られて、柚希は顔をあげた。

「なにが?」

「『あの後』とかいって、嫌なこと思い出させて」

 深刻な言葉のわりに、口調は穏やかだった。亜衣は、あの出来事を風化させることもなく、後悔することもなかったのだろう。女の子は強い生き物だ。

 けれど、話を蒸し返した行為を詫びた亜衣に、柚希は不満だった。

 この親友は、どうしてそんなふうにいうのだろう。嫌な思いをしたのは、柚希より亜衣のはずなのに。いまからでも、恨み言のひとつくらい、いえばいいのに。

 柚希は高校二年の夏、この親友と肌を重ねたことを思い出した。






ようやく、投稿の仕方がわかってきました。今頃?(笑)

以前、小説を書いていたときは、一太郎でした。wordはまだ慣れません。投稿した後で、ちょっとしたミスが見つかってしまいます。できるだけ、(改)をつけたくないんですが。



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