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第9話 空席の意味
その日は、驚くほど客が少なかった。
昼を過ぎても、空席が目立つ。
カウンターの端が、ぽっかりと空いている。
「今日は、静かだな」
商人が言う。
「こういう日もある」
「不安にならないのか?」
少し考えてから答える。
「ならない」
空席は、悪い兆候じゃない。
店が呼吸できている証拠だ。
満席が続けば、無理が出る。
味が崩れ、人が疲れる。
リリアがラーメンを食べ終え、静かに言った。
「空いていると、考え事ができる」
「店で?」
「ここは、静かだから」
空席は、余白だ。
誰かが座るための、準備された場所。
それを、無理に埋める必要はない。
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