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第8話 噂の広がり方
伽藍堂の噂は、派手に広がることはない。
「すごい店がある」ではなく、
「変な店がある」程度だ。
昼時、初めて見る二人連れが入ってきた。
周囲を気にするように、小声で話している。
「ここ、静かにしないとダメらしい」
「ラーメン屋なのに?」
聞こえているが、何も言わない。
ラーメンを出すと、二人は少し戸惑った顔をした。
「……普通だな」
「普通だ」
だが、食べ終わる頃には、声がなくなっていた。
無言で丼を置き、顔を見合わせる。
「……また来る?」
「来るな」
それでいい。
帰り際、片方が小さく言った。
「落ち着くな、ここ」
噂は、そうやって広がる。
大声ではなく、
誰かの記憶の片隅に残る形で。
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