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第6話 常連という壁
次に来たとき、そいつは一人じゃなかった。
昼時。
三人組が連れ立って入ってくる。
「今日は食うぞ」
注文はした。
だが、態度は変わらない。
他の客に絡み、声を張り、店の静けさを笑う。
「飯屋ってのは、もっと騒がしくていいんだよ」
俺が何か言う前に、グロムが立ち上がった。
「悪いが」
「何だ?」
「この店では、そういう喋り方はしねえ」
空気が止まる。
リリアも、静かに言った。
「ここは、そういう人が来る場所じゃない」
「店の回し者か?」
商人の常連がため息をつく。
「違う。
俺たちは、客だ」
それで十分だった。
三人組は居心地の悪さに耐えきれず、ラーメンを残して出ていった。
暖簾が揺れる。
「……ありがとう」
俺が言うと、グロムは肩をすくめる。
「気に入った場所は、守るもんだ」
片付けをしながら、思う。
この店には、壁がある。
規則でも、看板でもない。
――常連だ。
伽藍堂は、今日も空っぽだ。
だが、その空間を好む連中が、自然と店を形作っている。
それでいい。
それが、この店の在り方だ。
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