プロローグ 幕開け
『ウィアノウァ』
これは、自らを英雄だと名乗り続けた男の話。
大それた望みを持ち、幾度となく苦境に立たされ、それでも俺はと叫び続けた大馬鹿者の物語。
さぁ、語りましょう。 と呼ばれた男の始まりの物語を。
暁の空。天を貫かんとする峻厳な山脈、山々を吹き抜ける風の音は竜の咆哮にも似た神秘的な雰囲気を漂わせる、まるで暗澹としたこの世界を否定するかのように。
この世界は滅びの一途を辿っていた。
現状を嘆く者、憤る者、乱心する者、誰もが迫る滅びに不安を感じていた。
もしあの竜の咆哮が大地を踏みしめる怒号に変わる時このような小さな村など、容易く魔物によって更地と化すだろう。
だからこそ彼は武器を手に取り、その暴虐を許さぬと立ち塞がるのだ。
―強風が吹き荒ぶ―
そこには青年が一人立っていた。
その風貌はどこか少年時代の幼さを残しつつ、勇壮果敢な佇まいを感じる。どこかの国の貴族と見紛うほどだ。
魔物の咆吼で揺れる銀の髪はどこか気品を感じさせ、
眼前の敵へ注がれる視線の元は暗澹とした世界を全て飲み干してしまいそうな程に碧かった。
「ハハッ、なんていう巨きさ、なんという恐ろしい咆哮か!」
青年の眼に映るは四つ腕の巨人。
一度動き出せば青年を容易く踏み潰せる程巨大だ。
「行くぞ!四つ腕の巨人よ、この村に立ち入った事、この英雄ウィアノウァが後悔させてくれる!」
男が持つ武器はあまりにも貧相だった。
それは武器とは言えずその辺に落ちている木の棒。こんな物で巨人を相手取るなど到底不可能だ。
だが青年、ウィアノウァの自信と覚悟に満ちた表情がそれは杞憂だと告げていた。
『オオオオオッ!!』
男は雄叫びをあげる
巨人もまたそれに呼応するよに剛腕を振り回し迎え打つ。
ウィアノゥアは一歩、二歩、三歩と瞬く間に膝下まで距離を詰めた。その身のこなしはさながら風のようだ。
「このウィアノウァが、その剛腕に名誉の傷をくれてやろう!!」
男は地面を蹴り上げ飛び上がり、その貧相な武器から繰り出される一撃は確かにその剛腕を捉えていた。
刹那、、
その剛腕に触れた武器は砕け散り男の身体は宙を舞い、砂埃を巻き上げながら空を見上げる形で地面に転がっていた。
「くっ―イテテテ」
目を開くと見えるはずの空は無く、1人の女性が満面の笑みを浮かべてウィアノウァを見下ろしていた。
「ウィア、これはいったい何をなさっていたのですか?」
この世界では珍しい長い黒髪で、全体的に整った容姿をしている、顔は笑っているが、その目はまるで笑っておらず、燃えるように赤い瞳は彼女の怒りを代弁しているようだった。
「ティアか、いいところに来た!俺が巨人を倒す様を詩にするといい!」
「はぁ…ウィア、貴方にはあれが巨人に見えているのですか?」
巨人の一撃を受けいまだ地面を転がるウィアを見下ろしながら巨人の方に指を向ける。
「あれは巨人ではなく、『風車』です!」
そうこの男ウィアノウァが巨人だと思い対峙していたのは風車であった。四つの腕は羽根車。そこから発せられる風切り音を恐ろしい咆哮だと。とどのつまり巨人の正体とは男の作り出した痛々しい妄想の産物で、村は今日も平和なのである。
「な、に、あれは巨人ではなく風車であったか!
ではティアよ、なぜ俺はあれを巨人だと見紛ったのだ!?」
「わかりませんよ!なぜ当の本人が私に聞くのですか…ウィアが村長さんに頼まれたのは古くなってきた羽根車の修理です。それがどうして巨人などと」
「まぁアレだな、英雄魂に火がついたというやつだな!」
「はぁ〜 フン!!何が英雄ですか、少しは反省してください!」ぷぃ
「うぎゃっ」
ティアの渾身の拳がウィアの頭頂部に叩き込まれた。
「なんて一撃、ティア…君のそれは巨人の一撃を上回っているぞ」
「はぁ〜」再び拳に息を吹きかける。
「ひっ…すまなかった!これ以上はやめてくれ俺の頭がバカになってしまう。。。」
「大丈夫です!これ以上バカになる頭などウィアにはありません!」
拳を構えるティアに、頭を守りながら逃げ出す情けない英雄の姿そこにはあった。
「なんだ、なんだまた喧嘩か?相変わらず仲のいい二人だな!」
「ウィアの奴、まーたなんかやらかしたなありゃ」
「いやあれは喧嘩というより狩りだな」
「「ちげぇねぇ!」」
「「「だっははははっ!」」」
騒ぎを聞きつけた村人達は二人を酒の肴に今日も笑う。
明日どうなるか、未来はどうなっているのかわからない。
だがこの村は暗澹としたこの世界には似つかわしくない程笑顔で溢れた村だった。
同時期、一つの国が滅びの運命を迎えようとしていた。充満する血の匂い、押し寄せる魔に屍の山積み上がり、至る所から国民の悲痛な叫び声が聞こえてくる。
「王よ、魔の物がもう眼前まで迫ってきています。どうかお逃げください!ここは我々が抑えます」
「ならぬ!私は一国の王だ。散って行った兵士、守れなかった民、私は王として最後まで戦わねばならぬ」
ですがそれでは本当に王国の血が絶えてしまいます!」
「そうだ、だからお前たちは息子を連れ魔物の手が届かぬ所まで逃げおおせるのだ、私が死んでも、息子がいる、王家の血は絶えぬ」
「何故ですか、父上!私も…私も一緒に戦いますっ」
「ならん!」王の言葉は息子の言葉を遮った。
「これは王命だ!なんとしても我が息子の命を守り生き延びるのだ!行け!(すまないな息子よ、だがお前は若く才がある、今は力をつけ、いずれこの国を…)」
兵に半ば無理やり非常脱出経路に連れられる息子を王は見届けたのち、轟雷のような雄叫びを上げ魔物に向かっていた。
なんか創作したくて、とりあえず書ききり目標でがんばります!(不定期投稿)




