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掲載日:2025/10/16

あるいは、中編へのエスキース(素描)として


追記:(改)とある場合、ほとんどは、誤字脱字、読み難さ部分の修正です。内容に影響のある変更が行われた場合は、ここに加えて、活動記録などでも報告します。

 それは、突然訪れた。

「その日は近い」

 その声は、老若男女問わず、世界の全ての人間に、全く同時に届いた…聞こえたのではなく、脳に直接届いた。いかなる状態であっても、完全に意味を理解できる形で。

 世界は混乱に陥った。

 裁きの日だ、宇宙人のしわざだ、神の悪戯いたずらだ。

 様々な憶測と推測、根拠のない妄言もうげん…思いつく限りの全ての議論、討論が尽くされたが、結局、何一つ分からないままだった。

 そして、世界は再び、日常を取り戻した。

 数年後…再び声がした。

「その日は近い」

 二回目の声の後、世界全体で、無差別殺人や暴動を画策する者もあらわれた。

 その一握りは実行されたものの、規模は小さく、被害もそう大きくはなかった。。

 富裕層に自殺する者が増えた、というニュースも流れた。

 そうした、一部の混乱はあったものの、世界は全体として平穏であった。

 地域紛争などは、少なくとも「声」の後は、特にヨーロッパ圏で大きく減った。

 それが、もし「裁きの日」であるなら、今争うのは、好ましいものではない。

 そうした打算も、あったのかも知れない。

 二回目の声から半年、三回目の声がした。

「…愛…」

 この声の後、多くの者が様々な信仰に走った。

 争うことをひとまず止めて、平穏な日々を望んだ。

 そして数カ月後、四回目の声。

「…石…」

 この言葉の意味を巡って、世界は再び混乱した。

 なぜ「石」なのか?、何かの暗喩なのか、それとも石そのものなのか…

 石を集めるもの、避けるもの…再び議論が湧き上がり「石」の意味を探し求めたが、やはり分からないままに終わった。

「その日は近い」

 五回目の声は、「石」という言葉の数週間後に訪れた。

 それまでよりも、大きく、ハッキリと聞こえた。

 この声の後、富裕層の一部が、すべて貧しい人たちに分け与えるとして、自分の財産を整理、あるいは放棄して、宗教に帰依したり、あるいは享楽的な行動に走る人たちも居た。

 しかし、そうした人たちは、全体としては、ごく一部に限られた。

 ほとんどの人々は、仕事の手を止めることはなかったものの、それまでよりも余暇よかを重視し、家族や親しい人たちと遊び、語らう時間を多く取り始めた…「その日」の過ぎれば、二度と会うことの出来ないかもしれない…

 その、何より貴重な時間を、大事にした。

 そして、数日後。

「その日」が来た。

 世界中の誰もが、その訪れを理解した。

 天が、地が、光一つない闇に包まれ、何もかも消え…


 ほんの一瞬…刹那の後、世界は正気を取り戻した。

 何一つ変わらず。

 人々は、何が起きたのかわからないまま、自らの身体を確かめ、周囲を見回し、親しい人たちの無事を確認した。

 何一つ変わっていなかった。

 良くも、悪くも。

 人々は、何も変わっていない事を、納得の行くまで確かめた後、お互いの無事を喜び、「その日」を乗り越えたことを、感謝した。

 …だが、不可思議なことは起こっていた。

 一瞬で通り過ぎたはずの「その日」の間に、人々の全ての時計は、一週間だけ余計よけいに時を刻んでいた。

 何もかも。身につけた腕時計、スマートフォン、人工衛星、世界共通時を刻む原子時計、あらゆるすべての時計が…天空の星の運行に至るまで、全てがちょうど7日…168時間0分0秒だけ…

 そして、翌日からもう一つ、不思議な…不可思議な事が報告され始めた。

「その日」の「その瞬間の後」から生まれた子どもたち。その誰もが、生まれた時に手に美しく輝く輝石きせきを握りしめていたのだ。

 赤子の拳に収まる程度の小さな小さな、しかし、見たことのない光彩で、虹色に輝く不思議な石。

 世界中の、あらゆる新生児たちが、その輝石きせきを握りしめていた…

 科学者たちは、その輝石きせきを徹底的に調査した。

 水に晒し、光にかざし、加熱し、極低温にし、砕き、あるいは削ろうと試み、あらゆる光線を投射して、組成を、構造を、思いつく、可能な方法全てで。

 …しかし、その輝石きせきは、あらゆる調査を受け付けず、何一つ分からないままだった。

 赤子の親の中には、その輝石きせきを売ろうと試みる者も居たが、本当にごく一部の人間を除けば、ほとんどは、その輝石きせきを神の恩寵として理解し、受け取らず、買わなかった。

 世界は、「その日」のもたらした、おそらくは永劫に解き明かせぬ、幾つかの謎をはらみつつ、やがて日常を取り戻した…

 そして、しばらくが過ぎた『ある時』、世界の人々の脳の中で、鮮やかな言葉が響き渡った。


 弊社の仮想人生体験(ヴァーチャルライフ)MMO『地球人アーシアン』をお楽しみ頂いているプレイヤーの皆様へ

 本ゲーム『地球人アーシアン』において、プレイヤーステータスのうち『愛』に関して、その挙動、影響範囲等に於けるバランス調整のミスが判明しておりました。

 また、ゲーム内へのメッセージ発信機能の不備不調により、プレイヤーの皆様への告知が正常に伝わらない、などの問題も確認しておりました。

 これらの調整及び、これまでに判明しているマイナーバグの除去などを行うため、かねて(ゲーム内時間2000サイクル前)から告知させて戴いていた通り、全プレイヤーの強制ログオフを伴う、全システムのメンテナンスを行いました。

 皆様のご協力により、メンテナンスは無事終了し、『愛』に関するバランス調整及び、皆様へのメッセージ発信機能を正常化させることができました。

 これまで、不都合と不具合によって、プレイヤーの皆様にご迷惑をお掛けしていた事を、深くお詫び申し上げます。

 併せて皆様の、ログオフを伴う大規模メンテナンスへのご協力に、心より感謝申し上げます。

 このメンテナンスに伴い、内部処理の関係上、ゲーム内時間が一週間経過しておりますが、これによるプレイヤーの皆様への不利益等はありませんので、ご安心ください。

 また、本メンテナンスに於いて、もっとも不利益を得た、登録後ゲーム開始前のプレイヤーの皆様へは、お詫びの印として、ゲーム内アイテム『キーストーン』を、一つづつ配布させて頂きました。

 『キーストーン』は今後のゲーム進行において、各種スキルやアイテムと交換可能になる予定ですが、これらに関しては、追って告知申し上げますので、今暫くお待ち頂ければ幸いです。


 今後とも、弊社及び弊社仮想人生体験(ヴァーチャルライフ)MMO『地球人アーシアン』を、ご愛顧賜りますよう、心よりお願い申し上げます。


(了)

詫び石

でした

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