表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

side 理奈子

「それで、今年の自治会の役員は香月(かづき)さんでしょ?」

「ええ」

「皆さんに聞いてもらえないかしら?市に渡すか修理するか……」

「はあ……」


 先月、斜め向かいの山内さんが、車のタイヤが半分落ちる程の穴ぼこを見つけた。

 その穴ぼこを修理する為に市に連絡をした結果。

 その道路が、近隣に住む松野さんのものだという事がわかった。

 松野さんに修理を依頼したところ。

 私達、10軒の戸建てが使用しているのだから皆さんで直してくれと言われたらしい。


 そして、色々考えた山内さんは今年の自治会役員に選ばれた私に話をしてきたのだ。


「じゃあ、よろしくね」


 山内さんから、残りを託された私は仕方なく一軒、一軒を回る事になってしまった。


 一軒目の沢田さん。


「きつい言い方になるけど。調べるのは、勝手だけど。みんな望んでるのかしら?みんな、子供がいたり、年金暮らしなのよ。そんなの今すぐ必要かしら?」


 ああ。

 沢田さんは、余計な事を調べるなって感じなのがよくわかった。

 ()()()()()って、単語使われたら私には何も言えないのがわかってるんだ。

 私には、子供がいない。

 まるで、あんたは暇だからそんな事を調べたんだろと言われているようだった。

 こんなの山内さんにも言えない。


「あら、回ってくれてるの?私も一緒に回るわ」


 託してきたと思った山内さんに会ってしまう。

 山内さんは、三人の子供がいるママだ。

 私達のところで、小さな子供がいるのは今のところ山内さんだけ。

 山内さんが、付いてきてくれたのはいいけれど……。


「可愛いわよね。何歳になったの?」

「ちょうど5歳になって。もう、大変」

「懐かしいわ」

「ちょっと待ってね」


 山内さんは、何故か子供を連れて来ていた。

 保育園が休みだったのだろうか?

 まあ、仕方ない事だ。


「子供って可愛いですよね。いとこに子供がいるから」

「そうなんですね。いとこさんには、会ってるの?」

「最近、会いましたけど。子供の成長は早いですね。特に、男の子は久しぶりにあったら身長も抜かされてました。アハハ」

「確かに、そうですよね」


 あんたの親戚の話しなど、どうでもいいと言われている視線と温度を感じる。

 私、何でこんな事べらべら話してるんだろう。

 惨めだ。

 人生で一番惨めな行為。


「ごめんなさい。じゃあ、そんな感じです」

「わかりました」


 山内さんに悪気はないのはわかっている。

 けれど、最後まで山内さんが子供に振り回されて私は近所とよくわからない話をして終わった。


「ありがとう」

「じゃあ、申請出しておきます」

「よろしくお願いします」


 山内さんが、悪い人じゃないのはわかっている。

 だけど……。

 イライラする自分がいるのも、事実だった。

 だから、今まで近所に関わりたくなかったのに……。

 とりあえず、これが終われば関わらずにすむ。

 山内さんに、頭を下げて家に入る。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ