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side 理奈子《りなこ》
結婚という儀式は、私が女として終わっている事をわざわざ告げるものだ。
「理奈子、食べないの?」
「今日は、いい」
「そう。じゃあ、行くよ」
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
「行ってきます」
結婚して、1年目に郊外の戸建てを買った。
田舎独特の風習が残っているこの街は、子なしの私達にとっては地獄でしかない。
そんな事をわかっていながらも、すぐに引っ越す事が出来ないのは夫である優之介がこの場所を気に入っているからだ。
ここに、引っ越してきて13年。
挨拶以外で、近所に関わる事は絶対ないと思っていたのに……。
道路の修理ってやつで、関わる事になってしまったのだ。