爆破
しばらくするとルークスが扉の前に戻ってきた。無事にダイナマイトだけ部屋の中において来れたようだ。
「じゃあ、点火します!」
「いや待て!」
「へ?」
「お前、この扉補強できるか?」
「補強ですか?」
「ああ、隙間を埋めろ。というか、扉が開かないように細工できないか?」
「え?今ですか?資材も無しに?」
「いや、あるだろ。お前の「創造」」
ああ、とサトシはほんの今迄忘れていた。確かにこれを使えば扉の目張りなど簡単な作業だった。
「あ、でも。そのあとどうします?目張りした後、入れなくなりますよ。」
「創造は作るだけなのか?消せないのか。」
「消す……確かに考えたことがなかったですね。やってみますか。」
サトシは掌の上にサイコロを作り出す。
「またサイコロかよ。ばくち打ちみたいだな。」
「簡単に思いつくのがこれなんですよ。ほっといてください。」
ふくれっ面になりながら、今作りだしたサイコロを消えるように念じてみる。すると、サイコロは手に触れている部分から徐々に消えていった。
「消せますね。」
「消せるな。万能だな、お前。」
「万能ですね。俺。」
二人はにやにやしながら、見つめ合っている。それを見るアイの目は若干引いているようだった。
「で、どうするの?」
「ああ、そうだった。」
サトシは「反重力」を使いながら、「創造」で、大扉の隙間という隙間をすべて埋めてゆく。隙間を完全になくし一体化させると言った方が正しいかもしれない。数分後にはきれいなレリーフの壁が出来上がっていた。
「じゃあ、点火しますか。」
「だな。やってみてくれ。」
サトシは壁に手を当て、部屋の中に炎の嵐を巻き起こす。と言っても壁越しなので、導火線を点火させるのが関の山だったが、それでも威力は十分だった。
ドガァァァァァン!!!
大音響とともに、建物自体が大きく揺れる。目の前の大扉だった壁はびくともしないが、壁全体が膨らんできているように見えた。
テテレテーレーテッテレー!!
久々に勝利のメロディーが流れた。目の前には経験値獲得とレベルアップのメッセージが流れている。3人ともレベルアップしたようだ。
「いけましたかね?いまレベルアップしましたから何匹か倒したと思います。」
「他の様子は?」
「ちょっと待ってください。
……
結構減ってますねHP。ただ、全体的に1/2ってとこですかね。ライトボールでダメージ受けてた個体が居なくなってる気がします。さっきのレベルアップはそれでしょうね。」
ルークスはサトシの言葉を聞きながら、壁を撫でまわしている。アイが痴漢でも見るような目で見ていた。
「何してるんですか?」
「いや、ちょっと思うところがあってな。」
「そういうフェチですか?」
「何の話だよ。こっちはまじめに奴らの倒し方考えてるのに……まあいい。ちょっとこれからの作戦会議だ。時間がないから手短に話すぞ。」
「はい。どうぞ。」
「ホントに大丈夫か?結構危ない橋わたるんだから頼むぜ。じゃあ、まず俺が、この扉だった壁を破壊する。」
「奴ら出てきませんか?」
「当然出てくるだろうし、奴らだけじゃないと思う。だから、お前らは鉱山の方に逃げてろ。ダイナマイト集めたあたりなら大丈夫だろう。」
「ルークスさんは大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないから、お前らに頼みがある。爆発の合図として、ライトボールを一度お前たちの方に打つから、それが見えたら「ワールウィンド」で俺の方に鉱山から風を送れ。たぶん俺酸欠になるから。頼むぞ。」
「バックドラフトですか?」
バックドラフトとは、密閉された室内で火災が起きた場合に、室内の酸素を使いつくし鎮火した状態でドアなどを開けると、室内の未燃焼ガスなどが流入した空気で一気に燃えだす現象の事である。
「おまえ、良くわかったな。一応、爆風の直撃は避けたいから横に避けてドアを破壊しようと思うんだけど、たぶん俺の酸素が足りなくなると思うからさ。できればつむじ風で鉱山の方から酸素送ってくれ。」
「そう言う事ですか。わかりました。じゃあ、それで全滅できそうですか?」
「いや、それだけでできるかはわからん。残党が残っても俺が死ぬことは無いだろうから、ちまちま戦い続けるけど、爆発が収まったら加勢に来てくれ。頼む。」
「わかりました。」
サトシはそう言うと、アイと二人で鉱山へと転移し合図に備えて魔力を流しておく。
しばらくすると、合図のライトボールが鉱山側に届いた。
「ワールウィンド」
サトシの起こしたつむじ風は、坑道の空気を巻き込みながら神殿側へ送って行く。
ドガァァァァァーーーーーーン!!!
風が送られると同時に鉱山全体を揺らすような大きな爆発音がする。先程よりはるかに大きい音と衝撃だった。鉱山の方にまで火の粉が跳んできた。
サトシはつむじ風の向きを切り替えながら、神殿の空気を入れ替える。
鉱山の方まで届く熱気が落ち着いたころ、サトシ達は神殿へと向かう。転移は使わずルークスの元へと走る。
神殿に入るとあたりは煙で充満していた。煙を避け、体勢を低く保ちながら廊下を進んで行く。鉱山からの入り口に近いところにまで骸骨騎士の鎧の一部が落ちていた。視界が届く範囲に無数の残骸が転がっている。どれもこれも鎧以外は原形をとどめておらず爆発のすさまじさを物語っていた。骸骨騎士の残骸を横目に見ながら廊下を進むと突き当たりにはルークスが仰向けになって倒れていた。
「ルークスさん!大丈夫ですか!?」
この作品をお読みいただきありがとうございます。
「ブックマーク登録」または「★★★★★」評価いただけると励みになります。
感想を頂けると参考になります。
よろしくお願いします。




