情報収集
ヨウトに変えるとハンバーグのいい匂いがしていた。
装備品の片付けもそこそこに、疲れ果てた二人は家の中へ入って行く。
「あれ、まだできてないよ。」
「マジか。」
「良い匂いしてるなぁ。」
「あと少しでできるから、ちょっと待ってて。」
アイは仕上げのソースに取り掛かったところだった。
「はあ、腹減ったぁ」
「だな。すげー疲れたよ。あの骸骨騎士は強かったなぁ。」
「モースさんの仲間たちよりずいぶん堅かったですね。」
「あれは強かったな。サトシだいぶレベル上がったんじゃね?」
「上がった気がしますね。何回かアナウンス流れてた気がしますよ。それどころじゃなかったけど。」
「ちげーねぇ。」
「で、この後どうします。」
「どうしたもんかなぁ。入り口であれが出てくるんだろ?この先が思いやられるな。」
「確かに。中に入っていったらどうなる事やら。」
「まずは情報収集かな。あの酒場の女将が結構知ってそうだったな。」
「そうですね。もう一回酒場行きますか。あの酔っ払いの家族も気になりますし。」
「よし。取り敢えず飯食って。晩酌ついでに行くか?」
アイが後ろから近づき、ルークスの頭に手刀を落とす。
「なに飲みに行く話してんのよ。さ、食事ができたよ。」
「依頼を受けたんだよ。鉱山の。ウサカで聞いたろ?」
ルークスは頭に乗っかった手刀を払いのけ、けだるげに答える。
「で、それが何で飲みに行く話になるわけ?」
「情報収集だよ。」
「どうだか。」
やはりアイはルークスに冷たい。
「アイも来てくれないか?骸骨騎士の数が半端じゃなくってさ。アイの魔法があるとだいぶ楽だと思うんだよね。」
「そんなに難しい依頼なの?」
「厳しそうだな。ま、もうちょっと調べてみないと何とも言えないけどな。」
そんなことを話していると、畑仕事から従業員たちが帰ってくる。ここ数か月は従業員全員で食事を共にしている。
「おかえりなさい。」
アイはルークスの時と打って変わって満面の笑みで皆を迎える。
「なんだあれ?」
「やっぱり何かしたんじゃないですか?」
「釈然とせんな。」
従業員達と取る食事は、収穫やウサカへの納品の話で盛り上がっていた。楽しそうに歓談するサトシにルークスが口を開く
「今回の依頼、時間かかるかもしれんぞ。」
「時間ですか?どのくらいです?」
「そうだな。場合に寄っちゃ一月くらいは見たほうがいいかもな。」
「そんなにもですか?鉱山の中で野宿するってことですか?」
「もしかしたら……な。」
「転移で途中帰ってくるわけにいかないんですか?」
「転移も使える場所と使えない場所があるからな。」
「どういうことです?」
「強力な魔獣なんかが居ると、結界を張ってることがあるんだよ。これを張られちまうと転移できなくなることがある。」
「できなくなることがある?」
サトシはその物言いに引っ掛かった。
「まあ、こっちの魔力が強ければ、結界をぶち抜いて転移することもできるけどさ。さっきの奴らだぞ?どう思う?」
「確かに、その結界とやらを張られてれば厳しいでしょうね。」
サトシ難しい顔でしばらく考え込む。そして横で歓談しているティックに話しかける。
「あ、ティック。ちょっと話があるんだけど。」
現在従業員をまとめているのはティックだ。今回受けた依頼についてティックにも伝えておくことにした。
「いまエンドゥで依頼を受けたんだけど、ちょっと厄介な依頼になりそうなんだ。だから、もしかすると少しの間帰ってこれないかもしれない。その間の留守を頼めるかい?」
ティックはしばらく考え込み、懸念事項を告げる。
「そうですね。農作業と納品は大丈夫だと思うんですが、ルイスさんに届ける商品についてはどうしましょうか?」
それを聞いてサトシもしばらく考え込む。ルイスへ納品する装備品は聡以外に作れない。数日ならば次の納品に間に合うだろう。しかし、依頼達成が一週間、半月ともなれば事前に在庫を用意しておかないと納品が間に合わなくなる。
「表にある装備品を手入れしとくよ。あれを小出しに持って行ってくれる?」
「確かに表に何やら散乱してましたね。そうですね。あれを持っていけばルイスさんも満足するでしょう。わかりました。」
「よろしく。」
食事が終わり従業員たちが各々食器を片付ける。サトシはそそくさと食器を下げると一人玄関に向かい、拾った装備品を工房に運び入れ手入を始めた。今回拾った装備品はどれも状態が良く、整備に時間も魔力もそれほど必要ないようだった。
従業員たちが自分たちの家に戻るころにはサトシは予定よりも多い数を整備し終えていた。
満足そうに整備し終えた製品を眺めながら、自分の装備も手入れする。
しばらくすると工房の外からアイとルークスの声が聞こえてきた。
「だから飲むために行くんじゃねぇって言ってるだろ?」
「でも飲むんでしょ?」
「情報収集だ!」
サトシはやれやれと思いながら、工具類を片付け、身支度を整えた。
「準備できたか?」
「はい。大丈夫です。」
そうして、サトシたち三人は再びエンドゥへと向かった。
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