鉱山の救出劇
二人は店から出て大通りを南に下る。視力強化したサトシには、鉱山の方へ飛び去るハーピーが見えた。
サトシは行動加速で酔っぱらいを追いかける。周りの景色が後ろに吹き飛びあっという間に追いついた。
「おい、お前、そんなんじゃハーピーには追いつけない。俺たちについてこい。」
「なんだお前。一体な……」
面倒だと言わんばかりに、ルークスは男の襟首をつかむと反重力で上空へと浮かび上がる。サトシもそれに続く。
「んあ!!何すんだ!」
「黙ってろ。下噛むぞ。」
ルークスは風魔法を重ね掛けして、遠くに見えるハーピーを追いかける。
ハーピーたちはサトシたちに気づいていないようで、一気に距離が詰まる。ハーピーの足には子供が二人掴まっていた。
「よし、俺が下で子供たちを受け止めるからサトシはハーピーを切り落とせ!」
「わかりました。行きます。」
サトシはそこから一気に加速し、剣を鞘から抜く。ルークスは高度を落とし、地面すれすれを加速しながらハーピーたちの下に回り込んだ。
ザシュ!!
サトシの剣がハーピー二匹を両断する。子供たちをつかんだままハーピーの下半身が下へと落ちてゆく。それをルークスが風魔法で受け止める。
「ワールウィンド」
小さなつむじ風が起こり、二人をやさしく地面へと降下させる。
地面に降りてきた子供たちは茫然自失といった様子だった。
「大丈夫か!」
父親が二人の子供を抱きしめる。途端に我に返った子供たちは大きな声で鳴き始めた。
「怖かったんだろうな。」
「でしょうね。」
「おい、おっさん。早く子供を連れて帰んな。ここにいたらまた襲われるぞ。」
鉱山の方から感じる気配に、ルークスは親子を早くこの場から立ち去るように促す。
「わかりました。ありがとうございました。」
父親は二人の子供を抱きかかえると、一目散に町の方へと走っていった。
「さて、なんだか団体さんの気配がするな。」
「ですね。坑道に何かいますね。」
二人が降り立ったところは鉱山入り口の広場だった。山肌にぽっかり空いた坑道の中は暗く、冷たい風が流れ出てきていた。
中の様子を窺っていると、ぼんやりとした光が20、30とどんどん増えてゆく。そして、それが坑道から姿を現した。
骸骨騎士だ。
「結構厄介そうなやつですね。」
「そうだな。強そうだ。」
サトシはステータスを確認する。
「骸骨騎士 Lv78」
「強いことだけは判りました。でも、ステータスが確認できないですね。俺よりレベル高いんで。」
「ああ、サトシ見れないのか。あのステータス。」
「見れるんですか?」
「ちょっと待ってな。『可視化』」
「骸骨騎士 Lv78 HP:38270/38270 ATK:4482 DEF:1379 弱点:火 光」
「うほぉ。見ない方がよかったかもしれません。結構厳しいっすね。」
「とりあえず、バフ掛けとこうか?」
「お願いします。」
行動加速の多重掛けで骸骨騎士の動きが緩慢になる。サトシは一気に距離を詰め、鎧の隙間を狙って斬撃を放つ。
ガチッ!
重い音と共に、しびれるほどの手ごたえがあった。魔力を通していても切り裂けない。ステータスを確認するが、わずかのダメージしか入っていないようだった。
「厳しいですね。」
「光属性追加しよう。『効果付与』『ライトセイバー』」
サトシの剣が激しく輝き始める。その様子を確認して、もう一度斬撃を加える。
ザシュ!
今度はダメージが入ったようだ。骸骨騎士がよろめく。そこへ魔法を畳みかける。
「ライトボール!」
サトシの手からライトボールが放たれ、そのすべてが骸骨騎士に命中する。が、鎧に当たったライトボールは弾き飛ばされる。
「な!この鎧。特殊効果付きですか?」
「かもしれんな。鎧の隙間を狙えるか?」
「やってみます。」
「ライトボール!!」
今度はすべてが鎧の隙間、直接骨に当たるようイメージして放つ。骸骨騎士はたたらを踏んでその場にしゃがみ込む。サトシは畳みかけるように鎧の隙間を切りつける。
何度も何度も切り付けると、骸骨騎士はさらさらと砂像のように崩れ落ちた。
「倒せはしますね。ギリギリですが。」
目の前には、坑道から現れた骸骨騎士が20体以上ひしめいている。そして、坑道の中にはまだ多くの骸骨騎士の気配がある。
「俺も魔法で削ってみるよ!」
そう言うと、ルークスは両手を空に掲げ魔法を放つ。
「ソーラレイ!」
ルークスの言葉と共に、空から眩い光線が降り注ぐ。その光線は20匹の骸骨騎士に降り注ぐ。骸骨騎士は悲鳴のような声を上げながら悶えている。
「効いてますね。」
サトシがステータスを確認すると、一様にダメージを与えられているようだ。だが、一掃するほどの威力ではなかった。
「ダメージとしては1/3くらいですか。連射できます?」
「連射は厳しいな。結構魔力をごっそり持ってかれるからな。」
「俺もやってみます。『ソーラレイ!』」
サトシも見よう見まねでやってみる。ドレインを重ね掛けするが、魔力の消耗が激しい。ルークスほどの威力は無かったが、それでもサトシの魔力が枯渇するほどだった。
「やっぱ連射無理ですね。」
「だろ。取り敢えずちまちま行くか。」
そう言いながら、サトシとルークスは骸骨騎士を各個撃破してゆく。
二時間ほどかけて、100匹ほどの骸骨騎士を殲滅できた。サトシもルークスもへとへとだった。二人とも地面に腰を下ろし肩で息をしている。
周囲には骸骨騎士の装備品が転がっている。どれを見てもかなりの業物だった。
「はぁ、なんだか思ったより収穫がありましたね。」
「これ、結構いい品なんじゃないか。」
「たぶん、このままでもルイスさんの店に持って行けそうですね。今回の依頼品ではないですけど。」
「とりあえず、これだけでも運ぶか。ヨウトに。」
「ですね。」
二人は体力回復も兼ねて、いったんヨウトにこのドロップアイテムを運ぶことにした。
「じゃあ、『転移』」
サトシとルークスを中心として周囲に落ちている装備品すべてを囲むように魔法陣が広がる。周囲が一瞬光に包まれ、二人と装備品はすべてヨウトへと転移した。
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