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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
サトシの譚
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冒険者登録

「なんでだよ!!」

 思わずサトシは叫んでいた。そして、掌をかざし魔術錬成を始める。


「ああ、まてまて!おちつけ!まずは話を聞けよ。」

「その手には乗らないぞ!こっちを安心させて……え?」

「まぁまぁ、どう。どう!」

「いや、ちょっとまって。話が通じるのか?」

「通じるに決まってんだろ!ちゃんと話してるだろうが!人の話を聞けよ!」


 周囲は騒然となっていた。ルークスと名乗る男は商談スペースのほかの人たちに詫びを入れると、サトシに椅子に座るよう促した。

「まあ、落ち着けって。」

「落ちつけも何も、あんたが……えっと、……何もされてないか。」

 そう、サトシはこのルークスと名乗る男から、何もされていない。むしろ何かをしたのはサトシである。

「ようやく理解してくれたかい?落ち着いて話そうぜ。な。

 で、こないだのことはとりあえず水に流そう。お互いすれ違いの結果だ。で、サトシ。お前に話がある。」

 サトシはこの胡散臭い男を信じることができないでいた。ニヤニヤしながらこちらを見てくるし、何より魔術の類が全く聞かないのが納得いかなかった。

「じゃあ、俺の質問に答えてくれよ。そしたら話を聞くよ。」

「わかった。何なりと。まあ、答えられる内容に限るけどな。」

「あんた、何者だ?」

「おっと。単刀直入だね。そうだな。見ての通り、通りすがりのただの魔導士だ。魔法の腕前は保証するよ。」

「ただの魔導士ぃ?あの魔術「無効」ってのも、腕前ってか?」

「それは、そういうステータスなんだよ。良いだろ?」

「なんだよ。ふざけてやがんな。」

「サトシ、お前口が悪いな。聞いてた話と違うぞ。」

「人を見るんだよ。」

「おうおう、腹黒いね。まあ、嫌いじゃないけどな。」

「で、その魔導士が俺に何の用だ!」

「お前、冒険者としてやっていくんだろ?」

「なんでそれを?」

「俺はお前のファンなんでね。何でも知ってるよ。」

「ファン?」

「ああ、少なくとも冒険者としてやっていくんなら、仲間は多いに越したことないだろ?」

「信頼できるならな。」

「おっと、痛いところを突くね。」

「当然だろ。」

「大丈夫だ。俺はお前の手助けをするためにここにいる。信頼してくれて構わんよ。」

「信頼するかどうかはこっちが決めるもんだろ?」

「まあ。そうだけどな。」

「……」

「あ、農業は苦手だ」

「なんだよ。使えねぇな。」

「だから冒険向きなんだって。役に立つと思うぜ!」

「いや、あんた魔導士だろ?うちのパーティー魔導士は間に合ってるんだよ。」

 サトシはステータスを確認しようと念じる。

『無効』

「ステータスののぞき見は関心せんな。」

「!?」

 気づかれてる。それが余計に警戒心を刺激する。

「わかった。ステータスが見たいなら開示しようじゃないか。ほら。」

 『ルークス 職業:魔導士 LV:50 HP:255/255 MP:255/255 MPPS:255 STR:255 ATK:255 VIT:255 INT:255 DEF:255 RES:255 AGI:255 LUK:255

 スキル:絶対防御アブソリュートディフェンス「極」』

 

「偽装か」

 そのステータスを見てサトシは思った。不自然に弱すぎる。おそらく偽装だろう。

「ひどいな。本当なんだけどな。」

 そういうと、ステータスは再度無効化される。

「一応、こちらの手の内は明かしたんだけどな。俺はお前たちの手伝いこそすれ邪魔はせんよ。」

「信じられんね。」

「どうすれば信じてもらえる?」

「俺にかかわらないでいてくれたら」

「そういうなよ。冷てえな。頼むよ。じゃあ、アイに聞いてみろよ。俺は信頼できるって言ってくれるぜ。」

「は?あんたアイの知り合いか?」

「ああ、昔ちょっとな。」

「あんた、アイに何かしたのか?」

「ひでえ言いようだな。違げえよ。本当に知り合いなだけだ。」


 サトシは、商談スペースから出て階段を駆け下り、ギルドの前に止めてある馬車に飛び乗る。

「アイ!あの魔術師風のおっさん知ってるのか?」

 アイは、馬車の外に顔を出し、ルークスを確認すると。

「うん。知ってるよ。」

「なんだよ。じゃあ、酒場の時に言ってくれよ。」

 サトシは天を仰ぐ。あの恐怖におびえた数か月は杞憂だったのかと

「知り合いってだけだから、まあいいかなと思って。」

「信頼できるのか?」

「まあ、大丈夫じゃない?」

「本当かぁ?軽いな。」

「悪いやつじゃないよ。」

 するとルークスが寄ってくる。

「アイ。お前口悪くなってないか?」

「……」

「無視すんなよ!ったく。……さて、そう言う事だ。信じてくれたかい?」

「まだ信用はできないけど。まあ、アイが言うなら。でも、役に立たなかったら追い出すからな!」

 サトシは馬車から降りると、再度商用ギルドに入ってゆき、ギルドの受付嬢に声をかける。

 

「あ、すいません。一応、従業員募集の件、商談成立しましたんで手数料払いに来ました。」

「ありがとうございます。こちらにサインと、手数料の1リルいただきます。」

 サトシは1リルを支払うと、再度従業員募集の依頼を出した。

「あと二人ほど募集をお願いします。農業経験は「必須」で。」

「承知しました。またお立ち寄りください。」

 サトシは手続きを済ませると、商業ギルドを出て馬車に乗る。

「よし。じゃあ、帰るか。」

 サトシは疲れ果てていて、今すぐにでも眠りたい気分だった。

 

「サトシ、お前冒険者ギルドに登録しないのか?」

「そりゃいずれするけどさ。まだ農業から手が離せないんだ。農業の役に立たない誰かさんが応募してくるからさ!」

「いや、登録だけならできるだろ?」

「エンドゥまでどれだけかかると思ってんの。馬車でも二日以上かかるよ!」

「大丈夫だよ。おれ転移できるし。」

「は?」

「だから、転移できるって。」

「マジで?」

「だから「して見せた」じゃねぇか。この間。さんざん攻撃されたけどさ。」

「いや、まあ、あれだ。その、あれは悪かったと思う。ごめん。なに、転移できるの。一瞬で行けるってこと?」

「いいね。素直が一番だ。そ、一瞬。まあ、一度集落に帰ってからでもいいけどさ。」

 

 サトシはこの男を信じていいものか、まだ測りかねていたが、ルークスの言う通り一旦ヨウトに帰ってから、エンドゥへ転移してみることにする。


 ヨウトに戻ると、ティックとアンが出迎えてくれた。最近は二人が食事も作ってくれている。アイの手ほどきを受け、料理の腕も上達している。

 なぜかルークスも一緒に食事を食べていた。


「なに自然に食事してるわけ?」

「まあ、いいじゃないか。これから俺も働くんだしさ。で、なかなかうまいじゃないの。こんな感じなんだね。食事って」

 サトシは我が物顔のルークスに納得がいかなかったが、転移ができるならと大目に見ることにした。


「で、そろそろ連れてってくれてもいいんじゃないの?」

「ああ、ごちそうさん。じゃあ、行こうか。」

 食事を終えたルークスとアイが、リビングから出て外に向かう。

「外に出るのか?」

「ああ、広い場所の方がやりやすいからな。」

 サトシは言われるがまま家の前に出てきた。

「じゃ、サトシ、俺の肩をつかめ。」

 サトシはルークスの横に並んで肩をつかむ。アイもルークスの横に立ち肩をつかむ。


「じゃあ、行こうか。」

 ルークスを中心として、地面に魔法陣が現れる。今まで見たことの無い魔法陣だった。その魔法陣はサトシとアイの足元まで広がり、強く輝き始める。

 すると、視界がゆがみ視界が光に包まれる。

 あまりの眩しさに目をつぶると、軽い浮遊感があった。が、次の瞬間強い重力を受ける。ちょうど、下降していたエレベータが止まった時の様な感覚だった。


「さあ、着いたぞ。」

 サトシが目を開くと、そこは町の大通りだった。

「じゃあ、こっちだ。」

 ルークスは目の前の建物に入って行く。入り口横には「冒険者ギルド」と看板がかかっていた。


「どうも。」

 ルークスは気さくに受付嬢に声をかける。

「こんにちはルークスさん。今日はどういったご用件ですか?」

「冒険者登録したいんだけどいいかな?」

「はい。後ろのお二人もですか?」

「そう。3人でパーティー組む予定。」

「承知しました。ではこちらにサインをお願いします。」

「おい、二人ともこっちに来て、これに記入してくれ。」

 受付嬢はカウンターに羊皮紙の記入用紙を出してきた。ルークスとアイは慣れた手つきでその用紙にサインする。サトシはその様子をまねて同じようにサインする。


「3人ともルーキー冒険者となります。内容についてご説明しましょうか?」

「ああ、この二人に教えてやってくれ。」

 受付嬢は軽くうなずくと、カウンターから出て掲示板の方にやってきた。

「それでは、サトシさん。アイさん。これから冒険者として活動される場合の注意点についてご説明します。」

「はい。よろしくお願いします。」

「ホントに人によって態度変えるんだな。」

 ルークスが小声で独り言を言っていたが、サトシは無視する。

「こちらがギルドに届いた依頼内容の掲示板になります。」

 掲示板は高さ2m、幅4mほどの大きなものだった。依頼内容が掛かれた羊皮紙がそこかしこに張られている。

「例えば、こちらは『魔法石収集依頼』です。依頼主は、バフェット通の道具屋主人「モンティ」さんです。報酬は1リルですね。制限はDとルーキーになっていますので、冒険者ランクC以上の方は受けることができません。」

「へぇ。低いランクしか受けられないんですね。」

「そうですね。逆の場合……つまり高ランクしか受けられない依頼もありますが、それは主にダンジョンですね。で、これらの依頼を受ける場合は、この依頼書を持って受付にお越しください。」

「持って行かずに、いつの間にか達成しちゃった場合なんかは無効になるんですか?」

「いえ、あくまで手続きの話ですので、この依頼の場合、魔法石を受付に持ってきていただいても問題はありません。それと、こちらの『ハーピー討伐』の様な依頼の場合、討伐後ハーピーの体の一部をお持ちいただくことで依頼遂行ということになります。」

「体の一部って、指とか耳でもいいんですか?」

「基本的に、ギルドでは鑑定が可能ですので、その個体を討伐したか否かは体の一部をお持ちいただければ判定できます。ただ、首や心臓。あるいは全身などの討伐を容易に判断できる物をお持ちいただければなお確実です。

 あと、皆さんはルーキー冒険者となりますが上のランクに上がるためには昇級依頼を受けていただくことになります。」

「昇級依頼?」

「こちらの依頼がそれです。」

 受付嬢は『アンデッド討伐』の依頼を指さす。

『アンデッド討伐  討伐対象:スケルトン

 5体以上確認済み  依頼主:エンドゥ商工会

 場所:クラモンド城跡  報酬:1リル

 受託制限:C,D,ルーキー  昇級D(5体以上討伐時)』


 と記載してあった。


「この『昇級D』と書いてあるのが昇級依頼であることを表してます。これは、ルーキーの方が達成した場合、Dランクに昇級すると言う事です。」


 サトシは呆気にとられていた。

『スケルトン5体でDランク昇級って、しょぼくない?ルーキー冒険者ってどんだけヘボいんだ?それに、報酬低すぎない?』

 サトシのステータスから考えれば極めて妥当な感想だった。


「昇級すれば、ランク縛りがあるダンジョンにも入ることができますが、逆に軽微な依頼は受けられなくなります。このあたりは皆さんの考え方で選択していただければと思います。昇級自体は希望制ですので、この依頼を受けたからと言って、強制的に昇級することはありません。」

「ちなみに、ルーキーのままで居てなにか不都合ってあります?」

「そうですね。」

 受付嬢は少し考えてから答える。

「依頼遂行で不利益や不都合はほとんどないと思います。ただ、周囲の冒険者から軽く見られたり、ダンジョンに入れないくらいでしょうか。」

『カールさんはそういう理由でルーキーだったのか。』

 サトシは勝手に納得していた。

「どうでしょう?ご理解いただけましたか、他に何か質問があればお答えしますが。」

 サトシは少し考えたが、特に疑問もなかったので、これ以上の説明が不要であることを受付嬢に告げた。


「では、こちらで認識票をお渡しいたします。」

 受付嬢はそう告げるとカウンターに戻り、三人の認識票を渡してくれた。

「七宝なんですね。」

「ルーキー冒険者の認識票は七宝です。壊れやすいので気を付けてください。再発行できますが七宝は500ミリルいただきます。

 Dランクが鉄、Cランクが銅、Bランクが真鍮、Aランクがプラチナです。今は4名しかいらっしゃいませんが、Sランクはミスリルとなっています。

 できれば認識票はいつも見える位置につけておいていただけると助かります。そうはいっても、落とさないように荷物にしまっている方がほとんどですけど。そうですね。Bランク以上の方は首に着けていることが多いイメージですね。」


 一通りの説明を受け、サトシたちは掲示板を再度確認する。サトシとしては武器・防具や素材を集めたかった。素材を集めつつ金も稼げる依頼を探す。


「あんまりいいの無いなぁ。あ、これくらいかな」

 目に留まったのは、

『オーク討伐  討伐対象:オーク・ゴブリン

 20体以上確認済み  依頼主:エンドゥ商工会

 場所:北部平原  報酬:3リル

 受託制限:B,C,D,ルーキー  昇級C(20体以上討伐時)』


 だった。

 サトシが欲しいのは、素材よりは装備品のため、オークやゴブリンなどの亜人系は好都合だった。


「これって、大丈夫か?お前ら。」

 ルークスが不安顔でサトシを見る。

「いや、大丈夫でしょ?たぶん。」

「え?えらい自信だな。」

 そう言うと、ルークスはサトシに向き直り頭の上あたりを眺める。

「あ、あんたもステータス確認できるのか!?」

 ルークスはにやりと笑うと、サトシの額辺りを凝視する。そして絶句した。

「あ、お。おい!ちょっと待て!」

 ルークスが慌て始める。そしてアイの方を睨みつける。

「アイ!おまえどういうことだ?って、アイ!お前もなんだこれ!?」

 そう言うとルークスはその場にしゃがみ込み頭を抱える。

「なんだよ。ちょっと目を離すとこれだ。勝手なことしやがって。……それになんだよ、上限8ビットじゃねぇのかよ……」

 ルークスはぶつぶつと独り言を呪詛のようにしゃべり続ける。サトシはその言葉に引っ掛かりを覚えるが面倒事はごめんだと触れないようにする。


「おい、ルークスさんだっけ?とりあえずこの依頼受けようぜ。」

 サトシがルークスの肩を叩きながら告げると、ルークスは恨めしそうにサトシを見上げる。


「……まあ、仕方ないか。取り敢えず、サトシたちのお手並み拝見と行くか。」

 ルークスはあきらめたようにつぶやくと、立ち上がり受付嬢にこの依頼を受けることを申請した。


「じゃ、いこうか」

 三人は冒険者ギルドを後にする。

この作品をお読みいただきありがとうございます。

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