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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
サトシの譚
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反転攻勢

 モースの言葉に不安を覚えつつも、サトシは装備を整えゴブリンの巣窟に向かう。

 アンヌとジル、そしてアイを助けるために。

 日は昇ったばかりで昨晩は一睡もしていない、が、疲れは無い。しっかりとした足取りでゴブリンの巣窟に進んで行く。

 集落を過ぎ、森を抜け、緩やかな傾斜を上りゴブリンの巣穴まで来た。


 山肌にぽっかり開いたこの洞窟の中は全く日が差さず、外の明るさも相まって中の様子を窺うことはできなかった。

 

 サトシは自分の落ち着き様に少し驚いていた。そこには恐怖も怒りも焦りもなく、ただただ平常心の自分がいた。

 一歩、また一歩と洞窟の中に入って行く。自分の手先が見えない暗さになってきたところで、サトシは魔術錬成により小さなライトボールを左手の上に作り出す。

 そのライトボールは宙に浮いたまま強い光を放ち洞窟の中を照らし出した。


 その光はサトシの周囲を照らし、ゴブリンの痕跡を映し出す。サトシは歩みを止めずに奥へ奥へと進んで行く。


 しばらくすると、分かれ道に差し掛かる。片方の道の先にはわずかながら明かりが見える。もう片方は行き止まりなのか全く先が見えなかった。

「さて。」

 サトシはそう言うと、真っ暗な道の方にライトボールを飛ばす。光が一段と明るくなり暗かった周囲が一気に照らし出される。

 そこには10匹にも及ぶゴブリンが武器を持ちこちらを睨みつけていた。

行動加速ヘイスト!」

 サトシはゴブリン達の中に飛び込むと、ゴブリンの首めがけて剣を振り抜く。振り切った剣は止まることなく次の首へと飛んで行く。声を出す間も与えずに全てのゴブリンを切り伏せる。サトシは暗がりに潜むゴブリンが他にもいないか注意深く探りながら、元の分かれ道へと戻る。


 分かれ道の先には明かりがある。歩みを進めると、途中、洞窟壁面のそこかしこに怪しげな窪みが見える。サトシはその窪みに近づくと小さなファイアボールを放り込む。


 ギキャァ!!


 ファイアボールが放り込まれると、そこから悲鳴を上げながらゴブリンが転がり出てくる。サトシが通り過ぎるのを待ち構えていたのだろう。

 サトシは転がり出てきたゴブリンの頭に剣を突き立てる。ゴブリンの動きが止まるのを確認すると先に進み、次の窪みが見つかるとまたファイアボールを放り込む。そして転がり出てきたゴブリンの頭を剣で突き刺す。見事なまでのルーチンワークである。

 通路は徐々に明るくなり、曲がり角を過ぎると、広い部屋に出た。そこには剣や棍棒を構えたゴブリンが10匹ほど待ち構えていた。

 奥にはホブゴブリンの姿も見える。サトシの姿を見るなりあざ笑うような表情を浮かべて、徐々に距離を詰めてくる。


 サトシは魔力を絞ったうえで、掌をゴブリン達に向ける。


「ライトボール」

 囁くような声で唱えると、小さな光の弾をゴブリン達の目に向けて放つ。勢いよく顔面にライトボールを受けたゴブリン達は眩しさと痛みに膝をついて顔を抑えている。サトシは自分に行動加速ヘイストをかけながらゴブリン達の前に飛び込み、順番に首をはねてゆく。魔力を流した剣は甲冑すら紙細工のように切り刻んで行く。最後のホブゴブリンの丸太の様な首をこともなげに切り落とすと、サトシは部屋の中を見渡す。奥には真っ暗な通路が見える。サトシはまた小さいライトボールを手の上に作り出し先へと進む。


 通路は一本道で、しばらく進むと上り坂になった。右へ左へと曲がりながら進んで行くうちに、先の方に明かりが見えた。


 進むにつれて明かりが大きくなり、それが出口だと気づく。洞窟を抜けると、そこは鬱蒼とした森だった。


 頭上ではけたたましく鳥が喚き散らしている。しばらく歩くと、そこにはゴブリンの集落があった。


 掘立小屋がいくつも並んでおり、そこには大小のゴブリンがたむろしていた。サトシの事にはまだ気づいていないようだった。サトシはそちらへ向かおうとして、ふと不穏なにおいに気づく。

「なんだ?この臭い。」

 かすかに漂っているだけでかなり不快な臭いだった。生ごみが腐ったような……。サトシは自然と臭いの方に向かっていた。

 歩みを進めるたびに臭いは強烈になって行く。それでも鼻を抑えながら先へ進む。サトシはなぜかそこに行かなければならないような気がしていた。

 我慢が限界を迎えようとしたとき、においの原因が視界に入る。


 人の死体。


 大量の蠅がたかり、わずかに動いているように見えるのはおそらく蛆だろう。目をそむけたくなるような光景だったが、サトシはそこから目を離すことができなかった。


 見慣れた服を着た死体がそこにはあった。


 臭いの事も忘れて、死体に駆け寄り、膝から崩れ落ちる。


 ジルとアンヌだった。


 まだ死んで間もないのだろう、他の遺体に比べれば損傷は軽微だが、首筋や背中に大きな傷があり、そこから内臓が飛び出していた。大量出血したためだろう、肌は驚くほど白かった。


 サトシはその場に嘔吐する。臭いのせいだけでなく感情が抑えきれなかった。


 そんなサトシの頭の中にメッセージが映し出され、アナウンスが流れる。

「脆弱接続の修正を行います。13723/15166」


「脆弱接続の修正に失敗しました。再試行リトライします。失敗しました。再試行リトライします。失敗しました。」


 何度も繰り返されるアナウンスにサトシは切れた。


「うるさい!!」


 サトシは剣を強く握りしめると、左手で口の周りの吐しゃ物を拭い、ゴブリンの集落へと向かってゆく。

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