覚悟
目の前にいるダンは変わり果てた姿だった。
目はうつろで白濁している。
顔は晴れ上がり、鼻も骨折しているようで血だらけだ。
服装でかろうじてダンだと判別できるが、先ほどの暴行されている様子を見ていなければ気付けなかったかもしれない。
サトシはダンのあまりに痛々しい姿に一瞬視線を逸らす。
ほんの数日。サトシにとっては数日しか親子として生活していない間柄だ。本来なら何の感慨もない、タダのアンデッドとして首を落として終わり。
数日前ならそうだっただろう。
しかし、この数日間。ダンはサトシの事を我が子として接し、信頼を寄せてくれていた。そのことがサトシにとっても有り難かったし、出来ればこのまま安寧な生活を一緒に送りたいと考えていた。
ゴブリンに対する怒りよりも、そのささやかな願いすら叶えることができなかったわが身の未熟さが悔しかった。その気持ちがサトシの目からあふれて零れ落ちた。
サトシは大きく踏み込むと、ダンの右手にある斧を奪い取る。そして後ろに回り、そのまま一息に首に一太刀をあびせる。できるだけ痛みが無いように、魔力を流し一思いに振り抜いた。
ダンの首が徐々に横にずれて落ちようとしている。それをサトシは落ちないように支えると、後ろからダンの体を抱きしめる。
「父さん。守れなくてごめん。」
サトシはゆっくりとダンの体を横たえると、その斧を持ったままモースの元へ向かう。
「協力してもらえますか?」
モースはその様子を見て。しばらく考え込んだ後、サトシの目をじっと見据える。
「良かろう。我が子たちを其方の贄としよう。さあ、心して参れ」
この作品をお読みいただきありがとうございます。
連投の上、短くてすいません。今日はこの辺で終わりにします。
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