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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
サトシの譚
50/343

誤算

 作戦通りにはいかなかったがサトシは落ち着いていた。鉈を手に持ち、魔力を動かし始める。

「父さん、母さんとジルの……」

「おい!お前誰だ!サトシじゃないだろ!!」

 父親が叫ぶ!

 サトシはあまりの驚きに言葉を失う。

『何を言ってるんだ?』

「この村に魔物を呼ぶためにサトシに乗り移ったのか?サトシを返してくれ!頼む!この通りだ」

 父親はサトシの膝に縋りつきながら懇願する。その光景にサトシは次の言葉をうまく繋げられない。

『どうすればいい?このままじゃゴブリンに襲われてしまう。』

 窮したサトシは強硬手段に出る。ゴブリンの群れに手をかざし、畑に泥沼を発生させ足止めをする。

 先頭のゴブリンが泥沼に足を取られると、後続がそれにぶつかりゴブリンの集団は大混乱となった。が、それが裏目に出る。父親はその様子に一段と怯え、サトシの足物に崩れ落ちる。

「頼む。息子を返してくれぇ」

「おじさん!」

「ダン!!」

 ジルと母も小屋から飛び出してきた。

『まずい!』

 サトシは咄嗟にゴブリンに向かって魔法を放つ

「ファイアストーム!」

 吹き荒れる暴風と小屋にまで届く熱気。ゴブリン達は断末魔の叫びをあげる。

「おじさんどうしたの!逃げないと!」

「ダン!起きて!」

「サトシがぁ!サトシがぁ!」

 ジルと母もサトシを凝視する。鉈を持ち、ゴブリンを前にしても彼らに手をかざし、まるでゴブリンに何かを指示しているように映っただろう。

「どうしたの、サトシ?何があったの!?」


「早く逃げるんだ!父さん!母さん!ジル!早く!」

 両親とジルはパニック状態だった。サトシの声は耳に届かず、ただただ怯えている。終いには三人ともサトシの足元にひれ伏すような形で懇願する始末であった。


『このままじゃまずい!』

 サトシは縋りつく父親を振りほどくと、ゴブリンの群れの方に向かう。そしてファイアストームを乱れ打つ。しかし、ゴブリンの群れすべてを覆いつくすことはできず、一部が小屋にまでたどり着く。棍棒を振り上げてサトシめがけて突進してくる。それらのゴブリンをサトシはひらりと躱すと、すれ違いざまに首を落としてゆく。鉈の短いリーチでは思うように立ち回れないが、攻撃を避けながら、二匹、三匹と倒してゆく。しかし、ゴブリンの勢いを止めることはできず、父親が棍棒で滅多打ちにされていた。ジルと母親も髪の毛をつかまれ引きずりまわされている。

「貴様らぁ!」

 サトシは怒りに任せて鉈を振るい助けに行こうとするが、魔法が使えない。今使えば3人まで焼き殺してしまう。

 あと少しで父親に襲い掛かるゴブリンの首が切り落とせる、その距離まで来た時。視界がゆがむ。そして猛烈な勢いで風景が流れる。

 サトシは自分が吹き飛ばされたことに数秒気付くことができなかった。棍棒か何かで殴り飛ばされ、数十メートル先の井戸に衝突する。意識が朦朧として魔力を流すことも、治癒することもできない。

 そんなサトシの目の前に、数匹のゴブリンが近づいて、緑色の顔を近づけてくる。黒目勝ちの目がぎょろりとサトシをにらみつけると、よだれを垂らし左右に大きく裂けた口が薄ら笑いを浮かべるように開いてゆく。中には黄ばんだ細かい牙がびっしりと並んでいた。


 キャキャキャキャキャ!!


 何度も聞いた不愉快な笑い声をあげたかと思うと、サトシの顔めがけて棍棒を振り下ろす。

 強烈な衝撃と共にサトシの視界はそこで途切れる。


  ……


 無機質なアナウンスが頭の中に流れる。


「脆弱接続の修正に失敗しました。第1段階フェーズより再演算を行います。」



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