パーティーとレベル上げ
食事中、アイは終始不思議な生物を見る目でサトシを観察していた。サトシもバツが悪いらしく、俯いて肉を頬張る。
「おいしいね。」
「うん。」
「エリザベートさんに教わった料理?」
「うん。」
会話が続かない。サトシは諦めて黙って食べることに専念する。
食事も終わり二人は床に就く。サトシは今日の魔術錬成について思い出していた。
『今日みたいな戦い方でレベルを上げるのも手だけど、魔法陣がこれだけじゃぁな。やっぱり作りたいなぁ。』
まだ最強の魔法陣を諦めていないようだったが、それよりも悩みがあった。
『アイのステータスを何とか上げられないかなぁ』
大勢のゴブリン相手に、アイを守りながら戦う事には不安があった。だが、安全な場所は何処にもない。サトシはアイのステータスを確認する。
『アイ 職業:子供 LV:1 HP:2/2 MP:1/1 STR:1 ATK:1 VIT:1 INT:1 DEF:1 RES:0 AGI:1 LUK:0 属性適合 魔術 光:Lv0 損傷個所:無し』
「?!?」
サトシはばね仕掛けのおもちゃのように飛び起きる。
『MP 1?属性適合 魔術 光?』
前に確認した時にはそんなものは無かった。何度もサトシは確認する。やはり適合がある。
『まじか。光の魔法使えるのかぁ。ああ、でもなぁ』
そう、レベル上げをするには、各種パラメータが低すぎた。これではリスすら倒すのは難しそうだ。
『パーティーでも組めればいいのになぁ』
すると。
「パーティーを選択しますか? Yes or No」
『はい?』
目の前にまたもメッセージが現れる。あっけにとられたままサトシは答える。
『Yes』
「パーティーを誰と組みますか? アイ」
『な、な、なんだってぇ!!!』
地球が滅亡するくらいの驚きだった。
『あ~。アイと組みます。』
「アイがパーティーに加わりました。」
あまりにもあっさりと問題が解決する。
『なんだよ!パーティー組めるんなら早くいってくれよ!この10日ほど完全に無駄にしたじゃないか!』
この10日間。特に、カールとの稽古や、今日の魔法練習などは、かなりの経験値と熟練度を得ている。もっと早くに気づいていれば、アイはかなりの猛者になっていたかもしれない。
試しに……とばかりに、サトシはゆっくりと立ち上がりアイから離れて、小屋の入り口へと向かう。小屋の入り口から、外を眺め畑の外のあたりに狙いを定める。そして、そこに哀れなゴブリンを呼びだし、炎と竜巻で焼き尽くす。すると。
テテレテーレーテッテレー!!
勝利のメロディーが流れる。
「経験値1630獲得 アイのレベルが2に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。
アイのレベルが3に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。
アイのレベルが4に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。
アイのレベルが5に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。
アイのレベルが6に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。
アイのレベルが7に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。
アイのレベルが8に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。」
『うわぁ。なんだよ。めちゃくちゃ上がるじゃん』
サトシはアイのステータスが向上したことの喜びよりも、今までの時間を無駄にしたことに衝撃を受けていた。アイに罪は無いが、なんとなく恨めしい目で見てしまう。そしてステータスを確認する。
『アイ 職業:子供 LV:8 HP:92/92 MP:8/8 STR:12 ATK:12 VIT:9 INT:9 DEF:9 RES:9 AGI:44 LUK:59 属性適合 魔術 光:Lv0 損傷個所:無し』
「チッキショー。やっぱり俺何も学んでないなぁ。」
何か仕事を終えた後に、もっと簡単なやり方があることに気づくことが多いサトシだった。
サトシは悲し気な足取りで倒したゴブリンの装備を確認しに畑の方へ向かう。
「ん~。そんなにいい装備でもないなぁ。まあ、この剣は小さいからアイにも使えるか……」
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ
何度目かのこの感覚、サトシは小屋へと駆け戻りながら叫ぶ。
「アイ!隠れろ!ゴブリンだ!!」




