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中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?  作者: ミクリヤミナミ
サトシの譚
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これから

 カールたちを見送りながら、サトシはこれからの事を考えていた。

『レベルを上げながら、アイをどうやって守るか。』

 カールには「さらわれた家族を助けたい」と大きいことを言ったが、それ以前にアイを守る事すら儘ならない。そのことはサトシも十分理解していた。以前とは比較にならないほど剣術も上達したし、スキルの効果も相まって数匹のゴブリンなら一度に相手できる程度にはなったと思う。しかし、それは「サトシ一人」ならという条件でだった。

 アイを守りつつ、ゴブリンなどの襲撃に対処することは到底できない。もっと圧倒的な実力をつけなければ無理だった。


『とはいってもなぁ。

 ……まずはコツコツやっていきますか。』

 こればかりはどうしようもないと諦めざるを得なかった。サトシは地道にレベルを上げてゆこうと心に決める。


「アイ。これから俺は狩りに行ってくるけど、留守番できるかい?」

「あ…」

 ここのところ、アイはずっとエリザベートと一緒に居たので楽しそうにしていた。しかし、一人になると襲われた時のフラッシュバックがあるようだった。アイは口ごもりうつむいた。

「じゃあ、俺についてくるかい?ちょっと離れた安全な場所に居てね。何かあったら大声で呼んでくれればいいから。」

 アイは無言で頷く。


「じゃあ、行こうか。」

 サトシはカールと鍛えた武器・防具を持って、いつもレベル上げをしていた丘の向こう側へ向かう。できればアイにも防具をつけさせたいが、カールと鍛えた武器や防具の類は、もともと冒険者用の装備だったようで、大柄な男性向けのものがほとんどだった。これをアイに着せると余計に逃げにくくなりそうなので、今回はやめておくことにした。

 小高い丘の上にアイを座らせる。ここなら周囲が見渡せる。魔獣が襲ってきても囲まれない限り大丈夫だろう。サトシは丘のふもとでレベル上げに勤しむつもりなので、いざとなればそこまで下ってくればいい。そう考えた。

「いいかい、俺はこの下で獲物を狩ってるから、ここで待ってね。周りに何か現れたら俺を呼んでくれればいいから。もし危ないと思ったら、俺のところまで走って来れるかい?」

「うん。」

 アイはそう言って頷くと、木陰で体育座りをした。その様子を見て、サトシは丘を下る。サトシの周囲はところどころ背の低い草木が生い茂っており、魔獣が身を隠すにはもってこいだ。実際日中魔獣がこのあたりにいるとは思えないが、以前のように念じて呼び出せばいいとサトシは考えていた。

「さあて、やりますか。まずは、腕試しとしてスライムかな。」

 本当はいきなりゴブリンから試してみたい所ではあったが、自分が苦戦した時にアイがどのような行動に出るかわからない。なので、まずは小手調べとしてスライムあたりから徐々に敵のレベルを上げて行こうと考えた。

『スライム出てこい!』

 途端に近くの草むらからガサゴソと音がする。サトシが距離を取ると、遅れてスライムがすり出てくる。サトシはステータスを確認する。


『グリーンスライム LV:5 HP:13/13 ATK:7 DEF:5 耐性:打撃・斬撃 弱点:火』

 

『弱点か……、やってみるか。』

 サトシは練習していた魔術を使う。魔力を全身に流し、周囲から魔力を借りながらグリーンスライムが燃え上がるイメージを浮かべる。

『燃えろ!』


 ボワッ!


 スライムが炎に包まれる。一瞬スライムが悶えるが、すぐさま鎮火する。その様子をステータスで確認すると

『グリーンスライム LV:5 HP:10/13 ATK:7 DEF:5 耐性:打撃・斬撃 弱点:火』

『弱点の割には効かないなぁ。下級だからかな。』

 周囲の魔力を使っているので、エリザベートの説明通りであれば下級魔術となる。ならばと、魔法陣を使ってみることにした。

『イメージに魔法陣を組み合わせてっと』

 グリーンスライムが燃え上がるイメージにエリザベートから教わった魔法陣を重ね合わせる。

 すると、サトシの目の前に魔法陣が現れ、くるくると回りながらグリーンスライムへと向かってゆく。魔法陣がグリーンスライムを捕らえたと同時に先ほどの4倍ほどの火柱が上がり、サトシのところまで熱気が届く。


 グリーンスライムは一気に消し炭となり消え去った。

「おぉぉ。魔法陣すげーっ!」

 つい声が出た。

 

 テテレテーレーテッテレー!!

 勝利のメロディーが流れる。

「経験値30獲得」


 これはイケるな。とサトシは思った。少々調子に乗ったサトシは、賭けに出る。

「ゴブリン行ってみますか。」

 皆を助けに行くなら、倒さねばならない相手だ。慣れておく必要もある。それに、今の感じからすれば1匹なら何とかなるだろうという手ごたえも感じていた。しかし、アイに見える位置で呼び出しては、アイのトラウマに触れるかもしれない。そこで、木の下に座り込んでいるアイの様子を確認する。

 アイは、大木にもたれかかりながらまだ体育座りの姿勢でいた。目を瞑っているのだろうか、こちらを窺っている様子はない。

「今のウチかな。」

 そう考えたサトシは、アイの死角になる位置へ移動し、ゴブリンを呼び出す。


 比較的背の高い草むらに気配があり、鎧を着こんで棍棒を持ったゴブリンが、周囲を気にしながら現れる。サトシはステータスで確認する。


『ゴブリン LV:14 HP:295/295 ATK:92 DEF:65 弱点:火』

 ゴブリンがこちらに気が付き、とっさに攻撃態勢に入る。サトシは様子を窺いながら自分の間合いになるまで近づく。

 サトシが距離を詰めると、ゴブリンが跳びかかってきた。その動きをサトシは目で追いながら攻撃をかわす。ゴブリンの棍棒は空を切り地面に衝突する。その棍棒をサトシは足で踏みつけゴブリンの攻撃手段を制する。そのまま横一文字にグラディウスを振り切ると、ゴブリンの首が宙を舞う。


 テテレテーレーテッテレー!!

 勝利のメロディーが流れる。

「経験値1630獲得」


 恐ろしいほどの切れ味だった。ここ数日のカールとの稽古では、ほとんどの斬撃は棒切れで撃ち落とされていた。だから威力について意識したことは無かった。以前、低レベルゴブリンの腕を切り落とした時、かなりの硬さだったし、強めのゴブリンを狙った時は首を切り落とすことなど全くできなかった。しかし、今回ゴブリンの首を落とした際は手ごたえをほとんど感じなかった。

 これが「グラディウス」の切れ味なのか、魔力を流した結果なのかはよくわからなかったが、この調子でいけば、ゴブリンの集団もイケるかもしれないとサトシは感じていた。


「まとめていくか。」

 ちょっと欲が出てきた。今度は複数のゴブリンを呼んでみることにする。


 また、草むらからゴブリンが現れる。今度は2匹、1匹は棍棒、もう一匹は剣と盾を持っていた。

『ゴブリン LV:13 HP:280/280 ATK:85 DEF:60 弱点:火』

『ゴブリン LV:15 HP:410/410 ATK:139 DEF:99 弱点:火』


 サトシは先ほどと同様に、ゴブリンの様子を見ながら徐々に距離を詰めてゆく。すると、棍棒を持ったゴブリンが跳び込んでくる。今度は振り下ろされる棍棒を剣で受け流してから切りかかろうとする。すると、剣を持ったゴブリンが横から突っ込んでくる。サトシは慌てて剣を引き身をかがめる、ゴブリンの剣がサトシの頭上をかすめる。サトシは咄嗟に右手を剣からはなし、剣のゴブリンに向ける。そして炎の魔術をイメージする。が、剣のゴブリンは止まらない。そのままの勢いで膝蹴りを出してきた。

 サトシはこちらも躱すが、大きく体勢を崩す。地面に転がりながら、今度は念じる

行動不能スタン

 剣のゴブリンがその場で硬直する。一旦サトシは距離を取り、そこから二匹のゴブリンめがけて炎の魔術を繰り出す。

「燃え尽きろ!」

 魔法陣がゴブリンを包み込み、大きな火柱が上がる。ゴブリン達は大声で喚き散らすが、死ぬほどでは無いようだ。サトシは距離を取りながら確認する。


『ゴブリン LV:13 HP:120/280 ATK:85 DEF:60 弱点:火』

『ゴブリン LV:15 HP:260/410 ATK:139 DEF:99 弱点:火』


 怯んでいる二匹のゴブリンに対して、サトシは一気に畳みかける。剣を両手で持ち直し、そのまま勢いよく二匹の間に飛び込む。剣のゴブリンの首をはね、そのままの勢いで棍棒のゴブリンの顔を真っ二つにする。やはり手ごたえはほとんどない。


 テテレテーレーテッテレー!!

 また勝利のメロディーが流れる。

「経験値3300獲得 サトシのレベルは16に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。素早さが向上しました。防御力が向上しました。運が向上しました。剣の熟練度が向上しました。魔術:火のレベルが上昇しました。無のレベルが上昇しました。」


 『ユーザー:サトシ 職業:剣士見習い LV:16 HP:582/582 MP:32/32 MPPS:8 STR:48 ATK:178 VIT:38 INT:19 DEF:138 RES:20 AGI:181 LUK:118 EXP:1434888

 スキル:観念動力テレキネシス 剣:Lv26 棍棒:Lv3 属性適合 魔術 火:Lv2 無:Lv2 損傷個所 無し』


「危なかった。」

 サトシはその場にへたり込むと、大きくため息をつく。

「まだ早かったかな。取り敢えず、まだ一匹ずつが妥当だなぁ」

 なんとか勝つことはできたが、危うく命を落とすところだった。サトシは怪我がないか確認しながらゆっくりと起き上がる。そして周囲を確認していた時、丘の上のアイが視界に入った。

 アイの姿勢が変わっていたため二度見する。アイは蹲っていた。その様子を見てサトシはアイに向かって駆けだす。


「アイ!大丈夫か!」

 アイはガタガタと震えながら蹲っている。サトシが来たと知って、サトシの足にしがみつく。

「ゴブリンが。ゴブリンが。」

『先程の大きな叫び声か、しまったな』

 とサトシは思った。アイの状況はゴブリンを見たことによるフラッシュバックのようだった。

「大丈夫、心配ないよ。もうゴブリンは倒したから。大丈夫だから安心して。俺もここに居るから。もう大丈夫だ。」


 サトシはやさしく語りかけ、アイの背中をさすりながら隣に座る。

『アイを守る方法が先か。さて、どうしたもんかなぁ』

 今のサトシに思いつく方法はなかった。

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