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報告その一

 俺はフリードリヒさんと一緒に王都の大通りを歩いていた。

 会議室の重苦しい空気とは違い、王都の雑踏は活気に満ちている。


「カールさんは、仕事に戻れて生き生きしてますよ。やっぱ、ああいうのが性に合っているんでしょうね」


 俺がそう言うと、隣を歩くフリードリヒさんが「ふん」と鼻を鳴らした。


「ああ。あれが奴の本質だからな。最近作った防具の出来はどんな具合だ?」

 目ざといな。なんであのフルプレートのこと知ってるんだろう……

 2週間工房にこもりっぱなしで、二人で武器・防具を作り続けてた。


 カールさんにはまだ「創造主クリエイター」スキルは発言していないものの、彼の作り上げる武器・防具は常軌を逸した品質だ。本人が失敗だといっても伝説級レジェンダリー以上の出来である。

 俺の場合は、武器や防具に「スキル付与」をしないと特殊効果は発動しないが、カールさんの手にかかれば、普通に作成するだけで「極」級のスキルが付与される。もはやチートである。


 俺は心の中でカールのすごさを再確認した。しかし、彼の作品は世に出ることはなく、工房の隅でほこりをかぶっているものがほとんどだ。彼の父親の作品に遠く及ばないという理由で、すべて駄作扱いというのだから、ほとほと理解に苦しむ。確かに、王都では「腕はあるが表向きはただの変わり者の鍛冶屋」という評価もうなづける。


「あのフルプレートは、カールさん的には失敗作らしいですよ」

「あれでか?」

 いつ見たんだ?どれだけ周囲を監視してるんだよ……

「ええ。そうらしいです。まあ、俺には理解できませんけどね。あのフルプレートを装着するだけで、「HP(体力)とDEF(防御力)が2倍、受けた攻撃の95%を相手へ跳ね返す」って」

「何が不満なんだ?」

「100%跳ね返さないのが許せないみたいです。最低でも100%、できれば200%は欲しいらしいですよ。何考えてるんだか。今のフルプレートでも、十二分に普通ゲームバランス崩れますよ」

ちげぇ」

 フリードリヒさんはそういうとカラカラ笑った。

 なんやかんや言いながら、カールさんのことが好きらしい。


 

 俺たちが他愛もない話をしながら、冒険者ギルドの方へと差しかかったとき、後ろから落ち着いた声に呼び止められた。


「フリードリヒ、サトシ」


 振り向くと、そこに立っていたのはSランク冒険者の一人、ヨハンさんだった。口数が少ない彼に声を掛けられるとは思ってなかった。正直なところかなり驚きました。はい。


 で、装備が土埃で少し汚れているところをみると、依頼帰りってところかな。


「ヨハンか。どうした、依頼帰りか?」  フリードリヒさんが尋ねる。


「……ああ。たった今、北東山脈でのハーピーの群れ討伐を終えてきた」

 ヨハンさんは短く答えた。


「ハーピー討伐って、Sランクの仕事じゃないですよね?ってか、なんか見慣れないボウガン担いでますね?」


 俺がそう尋ねると、ヨハンさんは感情の薄い目でボウガンを軽く指差した。投擲武器の名手であるヨハンさんが普段使っているボウガンとは形状が違い、随分と小さい。


「……リハビリってところだな。ルーキーとCランク冒険者の駆け出しパーティーの助っ人に入ってたんだ。良い練習になったよ」


「その駆け出しパーティーはどこ行った?」

 フリードリヒさんが問いかける。


「……彼らとはあそこで別れた。報酬は不要だと告げたからな」

 そういうと、ヨハンさんは背後の十字路を指さす。ちょうどその交差点を横断する一行が見えた。あれが駆け出しパーティーだろう。


 あっちの方向は、飲み屋街か。ギルドに依頼達成を伝えてから言った方が良いんじゃないかなぁ。

 なんて思ったが、まあ、好きにすればいいや。俺関係ないし。


 ヨハンさんは、駆け出しの仲間たちへの配慮からか、ギルドの随分手前で別れてきたらしい。寡黙だが、人柄は良い。カールさんを尊敬していることも知っているが、本人がそのことを口にすることは決してない。


「そうなんですね。お疲れ様です」  俺が労うと、ヨハンさんは軽く会釈した。


「そういえば、オットーさんはどうしているんですか?」

 俺はオットーさんの安否が気になり、尋ねた。


「……オットーとはここ数日会ってないな。奴も俺と同じ様に、冒険者ギルドで依頼を探しているパーティーに声をかけて、助っ人として参加しているはずだ。情報収集のため、私たち三人で手分けしている形だな」


「なるほどな」

 フリードリヒさんは頷き、すぐに本題に入った。

「それで、何かめぼしい情報は得られたか?ハーピー討伐のパーティーから、カルロスやブギーマンに繋がる噂話でもいい」


 ヨハンさんは顎に手を当てて、わずかに考える素振りを見せた。


「いいえ。特にめぼしい話はなかったな。ただ……」


 ヨハンさんは、滅多に多くを語らない人だ。が、その「ただ」の後に続くのは、間違いなく取るに足らない話なのだろう。ヨハンさんの表情が雄弁に物語っていた。


「パーティーのリーダーが、最近開いた新しい酒場は魚料理が美味いと言ってたな。あと、俺達が討伐したハーピーの群れは、普通より大きな個体が随分いた。それくらいかな」


 新しい酒場と、ちょっと大きなハーピー。


 うん、これはマジで、どうでもいい話だろうな……


 俺は内心でそう思いながらも、ヨハンさんが寡黙な彼なりに、フリードリヒさんに報告しようと、頑張って伝えてくれたことに、少しだけ感心した。

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