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神隠し

「神隠しですか」

「あくまで噂だがな。それに、もともとこの世界は治安が悪い。そんな話もごろごろ転がってるんだから、誰も気に留めない。多い気がするってのも、気のせいってこともある」


 ……

 

『本当にそう思ってます?』

 フリードリヒさんの言葉に、つい念話チャットを飛ばす。

『なかなか勘がいいな。思ってねぇよ』

『思ってないのに、なんでそんな言い方するんです?』

『NPCの思考パターンはメタAIが決定してる。これがどういうことかわかるか?』

『ストーリー的に何か決まりごとがあれば、それに従うでしょうけど……それがなければ、事実を正確に把握してるでしょうね』

『そういうことだ。NPCに聞き込みをして「増えた気がする」ってことは、確実に増えてるんだよ』

『なら、そういえばいいじゃないっすか』

『それこそ、Sランクの3人にメタAIのことをなんて説明するよ?神の意志だってか?それを魔王が言うってんだから冗談にもなりゃしねぇ』

『たしかに』

 フリードリヒさんのあの表情はそういうことか。にしても、神隠しときたか。確かにこれは問題だな。


 ……


「神隠しで、魔力持ち……いや、「転生者」でしたっけ、その人たちが連れ去られてるってことですか?」

 今までの話を静かに聞いて、顎に手を当てながら考えを巡らせていたエリザさんがフリードリヒさんに尋ねる。

 フリードリヒさんは一呼吸置くと

「可能性はある。が、それが本当にできんのか?ってことだな」

「といいますと?」

「俺たちは、ウルサンや、周辺の集落を回って、妊婦が居ないか調査して回ってた。俺や俺の部下たちは、あとどのくらいで出産するかってことまで把握できてたから、出産直後のタイミングで訪問することができた」

「で、さらってたんですか?」

「人聞きがわりぃな!?さらってねぇよ!!基本的に、裕福な家庭には行かない。貧しく生活に困窮してるところへ行って、口減らしとして売られる子を保護してるんだよ。ちゃんと金も払ってる」

「まあ、人さらいに違いないとは思いますけどね」

 俺がそう言うと、フリードリヒさんは明らかに不機嫌になった。

「考えてもみろ、貧しい家に魔力持ちが生まれるんだ。能力が高ければ高いほど、遅かれ早かれ貴族や野党に攫われるのがおちだ。そんな奴らに連れてかれてみろ、そのあとの人生は悲惨なもんだ」

「まあ、そういうことにしときましょう。でも、出産のタイミングまでわかるって、チートですね」

「たしかにな」

「チート?」

 オットーさんがその言葉に引っかかった。

「ズルってことだ」

「なるほど。そういう方言か。まあ、たしかに「チート」だな。で、それとおんなじことが出来る奴がいるってことか。このあたりに」

「問題はそこだ」

 フリードリヒさんは、言葉をいったん止めて、一息ついてから話をつづけた。

「俺やサトシ、ルークスも含めてってことになるが、俺たちと同等、いや、それ以上の手練れでないと厳しいだろうな。もし本当にそんな奴がいるとするなら……俺たち以上の能力者で、組織的にも相当な大きさってことになるだろうな」

「それは常識的に考えてないでしょうね」

 俺の言葉に、フリードリヒさんは右眉を上げながら質問する。

「なんでそう思う」

「少なくとも、フリードリヒさんと同等の能力と組織力を持ってるって、カルロスくらいしかいないじゃないですか?」

「今のところ思いつくのはそのくらいだな」

「だとしたら、カルロスと同等のやつが他にもいるってことになりますよね。」

「そりゃそうだろうな」

「フリードリヒさん、ブギーマンとかカルロスの存在にはいつごろから気づいてたんですか?」

「ん~」

 フリードリヒさんは腕を組み考え込んだ。答えに窮したわけじゃなさそうだった。


「そういうことか」

「ん?どういうことだ?」

 オットーさんは話についてこれなかったようで、俺とフリードリヒさんを交互に見ている。

「正直なところサトシがいなけりゃカルロスの正体を暴くことはできなかった。が、そんな奴が居そうだってことは、随分前から探り当ててはいた。当然ブギーマンは言わずもがなってところだな」

「ですよね。となると、フリードリヒさんたちに気づかれることなく神隠しを実行できるような組織が存在する確率は非常に低いってことになりますよね」

「なるほど。そういうことか。じゃあ、実際に転生者は生まれてないってことか?」

 オットーさんの言葉に、フリードリヒさんは納得していないようだ。

「どうだかな。カルロスもその気になれば、完全に気配を消すことは可能じゃねぇか?」

「カルロスは可能かもしれませんね。でも、ブギーマンのような大掛かりな組織は見つけることができるでしょ?」

「それもわからんな」

「なぜ?」

「カルロスは俺のことを探ってたからな。わざと見つかるようにブギーマンを動かしてた節もある。あえて目立たせて俺をおびき出すつもりだったってことだ」

「そうなると、結構厄介ですね。本気で隠れられると見つけるのは困難です。それに……」

「それに?」

「転生者を多く抱えてるってことは、それだけで脅威じゃないですか?」

「まあ、そうなるよな」

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