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傍観者

 発言を禁止されました。

 おかしなこと言ったかなぁ。まあ、ちょっと過激だったかもなぁという認識は多少ある。

 が、そこまでかねぇ。


 と、考えている間に話は進む。


「でだ、とりあえずタオパ伯爵達の目的を探る必要がある」

 ん?ウルサン乗っ取り計画進行中ってわけじゃないの?まだそこまでしっぽがつかめてないのか。そうか。そういうことか。そりゃ確かに拙速だったかもしれない。


「ブギーマンの実質的な支配者はカルロスだ。それはタオパ伯爵も嫌というほど身に染みているだろう。そのカルロスが居なくなったんだ。隠遁生活から抜け出せる絶好のチャンスと見て、活動を開始したと思うんだが」

「だが?といいますと。オットーにしてはずいぶん歯切れが悪いですね」

 オットーさんの情報収集能力を熟知するエリザさんからすれば、煮え切らない言葉に聞こえるんだろうな。確かに、明確な裏付けが取れていない様子が見て取れる。


「まあ、正直なところ情報不足だな。どうやら現タオパ伯爵の息子が何やら動き出したらしいと言うことまでは情報をつかんだんだが、その意図もよくわからんのだ」

「明確にウルサンを乗っ取りに来るわけではないってことですか?状況証拠から考えるとそれしかなさそうですが……」

「いや、今のタオパ伯爵にはそれほどの力がない。王国でつながりを持ってた貴族連中は、ブギーマンに追い出された様子を見て、いともあっさり見限ったみてぇだからな。

 今のやつらに、人脈も金脈もありゃしねぇ。ただの田舎貴族に成り下がったってことだ」

「じゃあ、今ウルサンに帰ってきても街を乗っ取ることは難しいってことですか?」

「乗っ取るどころか、自由連合に追い返されるのが関の山だろう」

「じゃあ、なんで警戒する必要があるんです?」

 エリザさんの疑問は至極当然だ。


「まあ、カルロスが居なくなったんで、考えなしに帰ってきたか……」

「何か背後にいるってことですか?」

 つい口をついた俺の言葉に、フリードリヒさんがにやりと笑いながらつぶやく。

「だから、短絡的な行動は控えてもらわねぇとな」

 はい。わかりました。すんません。

 肩をすくめた俺を見て、フリードリヒさんは満足そうだ。

「わかってくれればそれでいい」


「サトシも理解してくれたところで、俺からの提案だ。現状タオパ伯爵にそれほどの脅威は無ぇ。だから、当面は傍観を決め込むのが得策だと思う。が、魔王の旦那んところの手下を何人か貸してくれねぇか?色々調べてぇこともあるんでな」

「それは構わんさ。で、どの程度待てばいい?」

 オットーさんは腕を組みながら天井を見上げて考え込む。

「半年は動かねぇと踏んでるんだが、そのあとはわからんな。動き出すと意外に早いかもしれん」

「なんで、半年なんですか?」

 確信を持つようなオットーさんの言葉に、エリザさんが尋ねる。

「現当主が先月倒れてな。かん口令を敷いてはいるが、その具合がどうもよくないらしい。で、もって半年。ってのが俺の見立てだ。まあ、俺は医者じゃねぇから、もっと早まる可能性もあるけどよ」

「というわけだ。とりあえず状況把握と監視を続ける。ウルサンへの侵攻があった場合は一戦交える可能性もあるが、背後の組織についても考慮する必要があるから、これから数か月が肝だな。

 これが、一つ目だ」

 あ、そういやもう一個あった。

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